【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第2回「コブシは癖にしてはいけない、自由自在に取捨選択」

「和の歌唱法の取り入れ方」

詩吟とポップスは別物だと私自身が思っていました。
ではなぜ、今私はこんなスタイルで歌っているのでしょうか。

今回は、私の現在に至るまでの経緯に触れながら、「和の歌唱法の取り入れ方」についてお話していこうと思います。

◆ポイント◆
・癖にしてはいけない。
・節回しは自由自在であること。
・あくまで技法のひとつとしての個性。

下積み時代の私は集客が増えることもなく、どんなに歌い続けてもこのまま聴いてくれる人に届かなくては意味がないという葛藤を、日々繰り返していました。
今ほどSNSがまだ身近ではなく、動画投稿が走り出しの時代でした。
そんな私は、歌声に個性を出し、一歩抜きん出ることが必要だと思うようになりました。
そこで、幼い頃からやってきた詩吟や詩舞を、自身が歌っていきたいポップスと融合させてしまおうと考えました。

よく誤解されがちなのですが、私の場合は、
「詩吟の人がポップスを歌うようになった」のではなく、
「ポップスの人が、元々やっていた詩吟の技術も取り入れた」
という感じです。

まずは音程やリズムや抑揚を付けずに言葉を読む

少し詩吟についてお話しましょう。
詩吟の発声は、地声です。
高い声も、基本的には地声で歌います。
地声で力強く真っ直ぐ声を出すことから始めます。
それが私の歌声の特徴にもなっているのかと思います。
発声はお腹の底から押し上げるようにするのが基本スタイル。
お腹のポンプで押し上げた水を、喉の部分の蛇口の形状で操り、水に動きをつける感じですね。
その動きとなる節回しのことを節調(せっちょう)と言います。

そして大切なポイントですが、まずは音程やリズムや抑揚を付けずに言葉を読むことです。
詩吟とは、漢詩や和歌を中心に歌うものであり、詩の内容をとらえ、声で心情や情景を表現します。

まずはその詩を、正しいアクセントの日本語で、美しくブレない大きな声でただ読むことから始めるのです。
そのあとから、話し言葉のアクセントを重視した音程をつけて、母音の伸ばす部分に飾りをつけます。

初心者の時は、最初から節調をつけようつけようとするのではなく、段階を付けて練習していきます。
まずは真っ直ぐ地声で声がブレずに出せるようにして、そのあとから少しずつ節調や強弱を加えていきます。
このように段階をつけて詩吟を練習することで、なんとなくついてしまう癖のコブシやしゃくりではなく、コントロールが効くようになっていき、ジャンル・フリーで使える技法となります。

詩吟や民謡の歌声は、日本人の喉の形状に非常に向いている

節回しについては、まずは自分が気に入った方のモノマネをするのがいいですね!
詩吟の世界には五線譜のような譜面はなく、師の技を盗んでいくことで、
自然と聞く耳を養ったり、自身の身体の使い方に意識を向ける事となります。
それを繰り返すうちにソルフェージュとなり、少しずつ上達していくのではないでしょうか。

詩吟や民謡の歌声は、日本人の喉の形状に非常に向いていると思います。
器用に喉を転がして、自分らしさを見い出せると、とても楽しいです!

コブシやしゃくりは、癖ではなく、ビブラートやフェイクやフォールなどの技法のひとつとして捉え、自由自在に曲調に合わせて使ったり使わなかったりと選択してみてはいかがでしょうか!
ぜひ、まずは気持ちよくお風呂で大きな声を真っ直ぐ出すことから始めてみてくださいね!

次回は、「ピアニストからボーカリストへ転身した私が思う歌詞の強み」について掘り下げたいと思います!


ライブ情報

「和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~」

【公演日時】2022年1月 9日(日) 開場16:00 開演17:00
【会場】 東京・日本武道館
詳細:https://wagakkiband.com/contents/467037
チケット情報:https://wagakkiband.com/contents/478172

本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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