【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第13回「BPM200以上で使える腹式呼吸」

歌ううえで必ずテーマになるのが腹式呼吸。文字要素だけで触れるのは非常に難しいのでこれまでなるべく避けてしまっていましたが、今日は少し挑戦してみようと思います。
特に今回は、自身が歌うジャンルにおける部分(ポップス、ロック、ボカロなど)に絞ってお話します。

腹式呼吸は歌にいい?

歌をやっている方ならば腹式呼吸と胸式呼吸があるのはよくご存じのことでしょう。
では、なぜ腹式呼吸のほうが歌にいいのでしょうか?

胸式呼吸は浅く速い呼吸ですが、腹式呼吸は息をコントールしやすくヴォーカルの安定や表現の幅に繋がります。
ちなみに寝ているときは腹式呼吸となっていて、ゆっくりリラックスしていますね。

腹式呼吸のヴォーカルトレーニングを受けても実践で歌うときに落とし込むのは容易ではありません。

私自身がそうでした。
いちいちお腹に空気を、なんて考えていたら、テンポ感についていけず、抑揚も何も意識できず、歌うことがつまらなくなってしまいかねませんよね。

なので、そんなに考えなくても自然と腹式呼吸が使えるようになっていく近道を長年探っていました。

テンポの速い曲でも、自然な腹式呼吸を行なうコツ

自分の身体と向き合って見つけた一番シンプルで簡単な方法は、「腰の筋肉の脱力」ということ。

腹式呼吸を取り入れるときにお腹を膨らませようと意識する方が多いと思うのですが、正直、ポップスやロックなどのJ-POP曲におけるテンポの速い曲では、とてもじゃないけどそのコントロールがついていけない感覚になるのです。
ましてや、ボカロ曲においては特にそうですね。

実は、このようなジャンルを歌うとき、次回のブレスまでの間にワンフレーズで使用する息の量というのは、お腹がたくさん膨らむほど吸わなくても十分だったりするんですよね。
必要な分だけの空気をうまくコントロールして使って歌えればいいのです。

ではそのために一体何をしているかと言うと、
背中側の腰あたりの筋肉を緩めることで自然に必要な分の息がしっかり落ちてくるので、その量だけを使って歌っています。

息を吸いたきゃ脱力、吸いたきゃ脱力、この繰り返しで、必要な分だけの空気はお腹に十分なのです。

歌うときの「脱力」のポイント

ではどうしたら、脱力がうまくできるのか。
これもまた文章だけで伝えるのは至難の業なのですが、やってみます。

呼吸を司る筋肉が横隔膜。
横隔膜が下がると肺が広がり、上がると肺の空気が出ていきます。
ではその横隔膜の位置を改めて確認ですが、
みぞおちから肋骨、腰の辺りまで広がっています。

思ったより少し高い位置だったと思う方もいらっしゃるでしょうか。

しかし、横隔膜をどう動かしたらいいの?って難しく感じますよね。
ちょっと調べてみると、横隔膜は、大腰筋、腰方形筋と繋がっているんですよ!

そこで、私が言う「背中側の腰あたりの筋肉」が、どの部分なのかを見つけるために以下のことをやってみてください。

1.上半身を90度折りたたみ、息を吸い込みます。腰の背中側あたりに手を置くと、空気がたくさん入るときに動く筋肉がある感覚がわかるでしょうか?
この筋肉を意識します。

2.次に身体を起こして、同じように腰に手を当ててその筋肉にクッと少し力を入れ(外側にちょっと広がる)、抜く動作を確認。同じようにできるでしょうか?
これが重要ポイントとなります。

3.声を出すときは、そこにクッと少し力を入れて歌うと安定した歌声となり、息が足りなくなれば力を抜くだけで必要な空気が下まで降りてくる。

ん〜難しいかなぁ。やはり身体に触れて一緒にやってみないと文章だけで伝えるのは最初は大変ですね……。

とにかく意識してたくさん息を吸おうとせず、腰の力を抜いたら必要な空気が自然に降りてくる、この感覚を繰り返しながら捉えてみてください。
空気量は想像より少ないですが、次回のブレスまでに必要とする空気の分量としては十分な量となります。
※注:ロングトーンをするときはもちろんたくさん息を吸ってください!

コツを掴んで表現の幅を広げていきましょう

コツを掴んでうまくコントロールできるようになることが、結果として表現力の幅に繋がりますので、ぜひチャレンジしてみてください!

また、なんと横隔膜は頚椎(けいつい)から出た神経で支配されているそうです。
横隔膜は体幹の一部のようなものなので、歌うときの姿勢を正して、空気の通りも良くして歌うことがとても大切ですね!

いずれ実践を伴った講習や、映像で説明できるオンライン講座を行なうことが私のやりたいことのひとつなので、そんな日が来たときはぜひ一緒に歌を楽しみましょう!

余談ですが、横隔膜は肝臓や胃とも接しているらしいので、歌う前の飲み過ぎ食べ過ぎは、やっぱり避けたほうがいいみたいです(笑)。

本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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