【連載】『ENGAB♡AtoZ』

ENVii GABRIELLA

Kamusが綴る自身のセクシャリティやLGBTQ「自分らしく生きたい」〜『ENGAB♡AtoZ』第12回〜

2024.05.7

※本連載は、音楽系エンタメサイト『耳マン』の更新終了に伴い、2024年3月より当サイト『Vocal Magazine Web』にお引っ越ししました。過去の連載記事はこちらをご覧ください!

唯一無二の3人組オネエユニット・ENVii GABRIELLA(通称エンガブ)のメンバーが愛してやまないヒト・モノ・コトについて、アルファベットのAからZを頭文字に始まるキーワードで紹介していく連載『ENGAB♡AtoZ』。第12回はKamusが“L”を担当し、“LGBTQ”をテーマに、自身のセクシャリティについて綴ります。

【L】Lと聞いて私が思いつくのはLGBTQ

私がLGBTQと呼ばれる生きものなんだと自覚したのは、学生時代。

付き合う子はまわりの男友達と同じ女の子。恋バナはもっぱらクラスのマドンナ的な存在の女子の話だった。改めて今、その頃の自分を振り返ってみると、まわりに合わせていたのかもしれない。でもそう思うなかで、付き合った人のことが好きじゃなかったかと言われるとそれも違うなぁとも思う。得意な科目が好きとは限らないのと似てるのかな?なんて思うこともありながら、学生時代を過ごしていたときに、とある人との出会いがあった。

兄の友人。

フィリピンと日本のハーフである私たち兄弟の肌は浅黒く、兄は特にサッカー部ということもあり年中私より焼けた肌をしていた。ある日、兄の友達が家に来た。見慣れた兄の肌の浅黒さとは違い、兄と同じサッカー部なのに肌は焼けてなくて色白、サラサラの髪にすらっとした体型。こんなに綺麗な男性がいるのかと私は部屋に閉じこもってその人が帰るまでドキドキしていたことを思い出す。彼が帰ったあとに、兄に「次はいつ来るの?」って聞いたっけな。

その後何度か見かけることはあったけど、話すことはなく淡い思い出になった。

その頃から同級生の男子にもイケメンだなぁとか、仲良くなりたいとか思うことが増えた気がする。まだゲイという言葉も知らなかったので、私は名前のわからないこの現象がまわりの男子と違うことに悩んだ。

私の学生時代にはLGBTQという言葉はなかった。

その頃の私は知識はないなか調べてゲイという言葉と出会った。そして同時に自分はゲイなんじゃないかとも思った。でもゲイは気持ち悪がられてしまうとか、ゲイは変なんだ、などといろいろなネガティブなことを考えてしまい、誰にも恋愛のことは相談できずにいた。そしてまわりの男子との話に合わせて、異性と付き合ったりしていた。

そんななか、シンガーソングライターの中村中さんの楽曲『友達の詩』と出会った。

高校生くらいだったかな。夏休みということもあり、夜更かしをしてテレビを観ていたときに、中村中さんの『友達の詩』が流れて衝撃が走った。同時に再現ドラマで中村さんの生い立ちも知った。

これだ。性同一性障害。心は女性、体は男性で感じた違和感。自分は女性になりたいのかもと思ったわけではなくて、必ずしも性別が違う人を好きなわけではない。という可能性に、これだと感じた。その当時のもやもやはきっと、自分とまったく同じではないけど似てる人もいる、という安心感が欲しかったのだと思う。

おばあちゃんが寝ている隣で、中村中さんが歌う『友達の詩』が心にスッと入ってきた。

「手を繋ぐくらいでいい 並んで歩くくらいでいい
それすら危ういから 大切な人は友達ぐらいでいい
友達くらいが丁度いい」

この気持ちを好きな人に打ち明けて、危うい関係になるのは嫌だ。ならひとりで抱えたほうがいい。誰も傷つかない、我慢すればいいだけ。

そう思うようになり、学生時代は誰にも打ち明けずに卒業、そして自衛隊に入ったがダンサーになる夢を諦めきれずに上京した。

上京し新宿2丁目で見つけた“自分らしさ”

東京で自分を見つける。

東京に出て来て右も左も分からない頃、巷ではスマートフォンが流行り始めていた。ネットであらゆる情報が簡単に調べられる便利さに感動した。そして、検索エンジンについ打ち込んだ。

「ゲイ 出会うには」

軽い気持ちで検索したところ、新宿2丁目という場所が出てきた。ゲイやレズビアンの人が集う街だと聞いたことがある。ドキドキしながら、スマホの画面に映し出されている地図を頼りに辿り着いて、驚いた。

テレビでみたことがあるオネエの方々や、ドラァグクイーン。

男も女もどっちか分からない人もみんな楽しそうに見えた。私は初の2丁目で、盛り上がっているクラブにひとりで入って酒を飲んでみた。するととある男性に話しかけられ、その人づてに友達がどんどん増えていった。

綺麗な男の子と手を繋ぐマッチョな男性。

美人すぎる女子同士がキスしている。

私は、話しかけてきたふざけてオネエ口調になる男性と手を繋いでいる。

すべてが自由、というよりは、それぞれが自分らしい。

そしてやっと私は確信した。私はゲイだ。

ゲイで良いんだ。

当時2丁目で知り合った友達と、『東京レインボープライド』に行ったときの写真。自分を表現しすぎていた過去の自分と友人
当時2丁目で知り合った友達と、『東京レインボープライド』に行ったときの写真。自分を表現しすぎていた過去の自分と友人

その頃にはテレビでもLGBTQという言葉が扱われ始めていて、自分のまわりでもなんとなく理解しようとしたりする人が増えてきた。まぁ私が某テレビ番組に、オネエとして出演したのを観た友人たちから連絡が来たんだけどね。

「オネエだったの? 別に変わらないけど!」

「そんな気はしてたw てか東京いるんでしょ? 飲みに行こうよ!」

最高な友達しかいなかった。自分が想像してたように「気持ち悪い」とか批判されることはなかった。

でも、いいことだけじゃない。

いとこの叔母の夫はひどく苦手らしく、「実家ではオネエでしゃべらないでね」とメールが来た。でも、自分らしく生きてる人がまわりにたくさんいることで勇気が出た私は、「気をつけまーす!」って返信したっけな(笑)。

東京で働いていたカフェの仲間たちにも打ち明けたことがある。みんな気にしないと言ってくれたり、むしろ仲良くしてもらったりしたなぁ。もちろんいいことだけじゃなくて、カミングアウトしたらそういう人は雇えないとクビにされたところもあった。でも自分らしく働きたいし、自分らしく生きたい。

2丁目が関連するとあるパンフレットの表紙に載ったことがあった。そこで私は「LGBTQのゲイのあなたにとって、2丁目とは?」という質問に、「誰もが主人公になれる場所」と答えた。

エンガブの活動を通して、LGBTQという言葉に理解まではしなくてもいいから、少しでも気にしてくれる人が増えたら嬉しいなと思います。そして私が学生時代に悩んでいたように、今悩んでる子どもたちが苦しまないような世界になっていったら嬉しいです。

全国に笑顔が広がりますよーに
全国に笑顔が広がりますよーに

ENVii GABRIELLA リリース情報

2024年5月29日(水)
メジャーセカンドミニアルバム『DVORAKKIA』(ドヴォルザキア)をリリース!

ENVii GABRIELLA ツアー情報

『ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2024「DVORAKKIA」』
・6月21日(金)〜22日(土) @cube garden(北海道)
・6月29日(土) @Zepp Namba(大阪)
・6月30日(日) @Zepp Nagoya(愛知)
・7月6日(土) @DRUM LOGOS(福岡)
・7月14日(日) @Zepp DiverCity(東京)


Kamus(カミュ)

12月28日生まれ、青森県出身。音楽ユニット・ENVii GABRIELLAのメンバーで、YouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』の店子。同ユニットの振り付けを担当している。陸上自衛隊の元隊員で、衛生班・手術班に所属していた。ダンサーの夢を叶えるべく上京し、ショーダンサーやアーティストのバックダンサーをはじめ、バラエティ番組への出演など多岐にわたる活動を経験。TakassyとHIDEKiSMの共通の知り合いであったことから、ENVii GABRIELLAのメンバーとなった。
・Kamus X:https://x.com/NEOkamus1228
・Kamus Instagram:https://www.instagram.com/kamusyuji/

本コラムの執筆者

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA
Takassy(タカシ)、HIDEKiSM(ヒデキズム)、Kamus(カミュ)からなる唯一無二の“最強オネエユニット”。それぞれ違うフィールドで活躍していた3人が、2017年3月よりユニットでの活動を開始し、2021年10月にメジャーデビュー。バラエティ豊かな楽曲、圧倒的な歌唱力、息の合ったダンス、ピンヒールを着用しての華麗なパフォーマンスが特徴的。“動画で楽しむ新宿二丁目”がコンセプトのYouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』も人気で、約20.6万人のチャンネル登録者数(2023年11月時点)を誇る。

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