【連載】『ENGAB♡AtoZ』
ENVii GABRIELLA
KamusがUndergroundなダンスシーンに生きていた頃「この業界で学んだことは今でも生きています」〜【ENGAB♡AtoZ】第21回
2024.09.17
※本連載は、音楽系エンタメサイト『耳マン』の更新終了に伴い、2024年3月より当サイト『Vocal Magazine Web』にお引っ越ししました。過去の連載記事はこちらをご覧ください!
唯一無二の3人組オネエユニット・ENVii GABRIELLA(通称エンガブ)のメンバーが愛してやまないヒト・モノ・コトについて、アルファベットのAからZを頭文字に始まるキーワードで紹介していく連載『ENGAB♡AtoZ』。第21回はKamusが“U”を担当し、 “Underground”(アンダーグラウンド)をテーマに、Kamusから見たアングラと呼ばれるダンスシーンについて綴ります。
【U】Kamusが経験したアングラなダンスシーン「Undergroundは生きている」
アングラと呼ばれる世界。
初めに、これから綴る想いはあくまで私Kamusの個人的な考えです。
たくさんの人がいるのでいろんな考えがあると思います。考えはそれぞれでいいと思う。
ただひとつ私が伝えたいのは、そこにいる人に尊敬の気持ちを持って、見てきたことを伝えたいということです。
アングラという言葉にはいろんな表現がありますが、今回はメジャーではないという意味で捉えてもらいたいです。
誰もが聞いたことがあるアングラという言葉。
改めて調べてみると、音楽の世界だとマニアックな曲を作る人や、ダンスだと自分のやりたいことを表現することを追求して大衆に受けることを目的としない人を、アングラな人だと言ったりするみたいです。
いろんな定義のなかでショーパブもまたアングラと言われることもありますが、私はショーパブという業界で生きてきたことがあります。
今回はその世界にいたときの話をしたいと思います。
1曲目から魅入ったショーパブのパフォーマンス
ショーパブとの出会いは、ゲイバーで勤務していた時代のお客様の紹介でした。
お客様のおかげで知ったお店に直接連絡し、そのショーパブのオーナーとやりとりをしてオーディションを受けました。
オーディションの日、踊りを見てもらったり業務内容の説明などを聞き、ひととおり面接を受けました。
そしてその日の営業を観させてもらえることになり、夜のお店でどんなダンスが観られるのかワクワクしながら営業を見学しました。だるそうに挨拶する人やキラキラとした笑顔で挨拶する人、個性が光る10人くらいのダンサーが出勤してきて、開店時間になるとお客様がどんどんやってきました。
お客様は、キャストとお酒を飲んでおしゃべりを楽しんでいました。
時折笑い声でお店のBGMが聴こえなくなるくらい盛り上がってました。
ショータイムの時間になると、キャストは短いMCのあとどんどん裏に捌けて行き、お客様を残したフロアは段々薄暗くなっていきます。
ショータイムが始まる。
1曲目で私は眩しいほどの照明を浴びて踊るダンサーに、すぐに魅入ったのを覚えています。
たまたまオーディションに用意した曲が1曲目だったこともあり、自分の踊りの下手さと表現力のなさに悔しさを感じました。同時にたくさんの人とひとつのショーを作る空間に憧れました。
そして目まぐるしく衣装が変わっていき、約40分のショーのなかでたくさんの映画を観たような感覚になり思考が追いつかなかったです。
さっきまでお客様と楽しそうに飲みながらお話をしていたキャストさんたちが衣装を着て踊り、あっという間に衣装と表情をも変え、ダンスナンバーからポールダンス、切ないストーリーが見えるナンバーなど約10曲ほど踊っていました。
紹介してもらわないと知らない世界だったので、アングラとと呼ばれていたのも納得です。
ショーのあと、汗だくで「こんな感じなんだけど、とりあえず合否はまた連絡します」と言って見送ってくれたオーナー。2日ほどして今回はご縁がなかったと連絡が来ました。 「素敵なあのお店で踊りたかったなぁ」と、とても悲しかったので、これを機にポールダンスに集中して忘れようとしたのを覚えています(笑)。
数ヶ月後、1通のメールが来ました。
「業務形態が変わったので、新たにダンサーを探すより一度見たことのあるダンサーのカミュに声を掛けさせてもらいました。一度落としてしまったけど、良ければ一緒に踊りませんか」
オーナーからの連絡でした。 迷わずすぐに返信をしてショーパブ業界に入りました。
煌びやかな世界で生きる人たち
最初は大変でした。レギュラーショーは約10曲。
それを1週間で完璧に踊れるようになって、ステージで初披露しなければならない。
フロアにあるソファやテーブルを壁に寄せて壁にある鏡を見ながら、1週間で何人かの先輩に振り付けを教えてもらいました。
オープニングの煌びやかなナンバー、和服に着替えて怪しいナンバー、白いシャツを着て切ない物語のナンバー、チップをもらうことができる少し過激な衣装のGOGOナンバー、ポールやリングを使ったナンバーなど、本当にいろんな表情のナンバーがありました。
振り入れが終わったあとの頭は混乱状態でした。
でも気持ちはまるで映画『バーレスク』の主人公になったような、華やかで楽しい時間でした。
そして初披露の日、和服のナンバーからGOGOナンバーの着替えのときに事件が起こりました。
衣装の白いブーツが片方見つからなかったのです。
でもステージには立たなければ、完全に間違えたと思われる。曲が始まったときには片方裸足でステージにいました。
めっちゃ恥ずかしかった。
ショーで踊るダンスのジャンルはジャズやヒップホップ、ポールダンスや所作が丁寧な和ナンバーなど、覚えなくてはいけないことがたくさんありました。
普段いろんなイベントに出ていた自分でも、初めて出会う振り付けにめちゃくちゃ苦労しましたね。
そんなショーパブを辞めるまでにたくさんの人と出会いました。 アングラと言われることもあるこの業界なので、普段の生活をしていたらきっと出会うことのなかったと思う人たちと出会いました。
この業界で出会ったダンサーのなかには、
楽しい!
いつか自分のお店を持ちたい。
目指せ年収1,000万。
いろんなジャンルが踊れるから勉強になる。
スケジュールに都合がつけやすいから本業をしながら働けるし、大好きなお酒も飲める(笑)。
イベントだけしか出ないけど、この店が好き。
もっと目立ちたい。
など、いろんな理由で踊ってる人がいました。
いつかオーナーと一緒に営業後に飲んだとき、彼は「みんなが踊れる場所を守りたい」と話していました。
本当にいろんな人がいます。紹介できないけどちょっと悪い考えの人もいましたし、オーナーみたいな優しい人もいました。
振り付けやダンススキルだけでなく、人としても学ぶことが多かったです。
私は充実したショーパブライフを過ごさせていただきました。
というのも、エンガブがメジャーデビューするタイミングでショーパブを辞めました。
そもそも、メジャーデビューするときにはお仕事を一本化するという約束でエンガブを始めたからです。
でも、「そういうお店って、足場にして次のステージに上っていく人が多いよね」
というようなことを言われたことがあります。私は決してそうではないと思っています。
この業界で学んだことは今でも生きています。
そしてその業界で生き続けている人もいます。
アングラと呼ばれる世界でイベントを主催したり、お店を出している人がいる。
メジャーではないかもしれないけどしっかりとした形があるもので、私はそこでいろんなことを学んできました。
知らない世界をただマイナスのイメージで考えるのではなく、そこに存在する意味を考えたり感じたときに、アングラと呼ばれる場所もキラキラして見えるのではないかな?と思います。
今回は“Underground”という言葉から書き綴りましたが、ぜひみなさんも知らない世界に出会ったときや初めての経験をするタイミングで、完全にシャットアウトするのではなく向き合ってみてほしいです。
まだ知らないだけで素敵な出会いになるかもしれませんよ?
(Kamus)
Kamus(カミュ)
12月28日生まれ、青森県出身。音楽ユニット・ENVii GABRIELLAのメンバーで、YouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』の店子。同ユニットの振り付けを担当している。陸上自衛隊の元隊員で、衛生班・手術班に所属していた。ダンサーの夢を叶えるべく上京し、ショーダンサーやアーティストのバックダンサーをはじめ、バラエティ番組への出演など多岐にわたる活動を経験。TakassyとHIDEKiSMの共通の知り合いであったことから、ENVii GABRIELLAのメンバーとなった。
・Kamus X:https://x.com/NEOkamus1228
・Kamus Instagram:https://www.instagram.com/kamusyuji/
リリース情報
メジャーセカンドミニアルバム『DVORAKKIA』
2024年5月29日(水)リリース
収録曲
1. Mother Ship / Message in a Bottle
2. Portrait of Love / Petal Dance
3. Cherry Pie / Dvorakkia
4. Strangers / Fate
5. 哀恋
6. 僕の名を持つ君へ
7. Sail On
リリース&特典情報
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t14730
ダウンロード&サブスクリプション
https://engab.lnk.to/DVORAKKIA_CD
本コラムの執筆者
ENVii GABRIELLA
ENVii GABRIELLA
Takassy(タカシ)、HIDEKiSM(ヒデキズム)、Kamus(カミュ)からなる唯一無二の“最強オネエユニット”。それぞれ違うフィールドで活躍していた3人が、2017年3月よりユニットでの活動を開始し、2021年10月にメジャーデビュー。バラエティ豊かな楽曲、圧倒的な歌唱力、息の合ったダンス、ピンヒールを着用しての華麗なパフォーマンスが特徴的。“動画で楽しむ新宿二丁目”がコンセプトのYouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』も人気で、約20.6万人のチャンネル登録者数(2023年11月時点)を誇る。
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