【連載】「唄いろは」
鈴華ゆう子
歌詞の大切さに気付いた、きっかけの言葉。「貴方の歌は、言葉が疎かになっていて刺さらない」
こういった経験をしたことはありませんか?
◆ライブを聴きに行ったとき、音響がワンワンしている中、いったい歌詞が何と言っているかよくわからない。
◆歌詞カードを見ずに音源を聴いても何を言っているかほとんどわからない。
これは、私が歌手になる前のことですが、
「貴方の歌は、一見うまいけれど、抑揚ばかりに気持ちが行き、言葉が疎かになっていて刺さらない。貴方の歌は器楽に聴こえる」
と指摘を受けたことがありました。
ハッとしました。
私は歌モノを聴くときも、元々旋律メインで聴く癖がありました。しかし、それでも歌詞ありきで自然と覚えてしまうような曲は、やはり歌詞がしっかり聴こえてくる歌手の歌であり、歌詞が頭に残り記憶と共に風景が広がっているのです。歌手になりたければ、これができなければいけないと気づくきっかけの言葉でした。
私は、音楽の聴き方にも人によって個性があると思っていて、特に初めて聴くときから数回の間は、その個性が強く出る傾向があると思っています。とにかく歌詞をよく聴こうとする人、ベースラインをよく聴く人、リズムをよく聴こうとする人、コード感を捉えるように全体で聴く人、旋律先行で聴く人、etc……。
どんな聴き癖の大衆にも初見で刺さる歌を歌うためには、まず旋律が楽器ではなく“歌”である強みを生かさなければと。では、歌の強みとは何か。
ピアニスト、ヴォーカリスト双方の観点から考える、“歌”で伝える意義
インストと歌モノを対比してみます。
まずピアニストとして思うことは、
“インストだけで伝える音楽は、聴き手が想像できる世界が広い!”
聴衆が思い描く世界はより自由であり様々であります。音楽が進むにつれ想像力を掻き立てられ、その音色がドラマチックに後押しします。タイトル以外の強制力がないので、聴衆それぞれが生み出す世界が重なることで曲ができあがっていく感覚。
それに対してヴォーカリストとして思うことは、
“歌詞が付くことで、世界が具体的となり、共有できることがより明確になる”。
歌は人々の共感を生み、誰しもが経験のある感情に訴えかけます。
双方のメリットとデメリットをステージ上で体験しているからこそ、それぞれの魅力と役割を理解し、大切に表現したいと思うようになりました。歌である意義として、いったい何を歌っているのか、歌詞が聴こえないのは致命的であると思います。せっかく詩吟で得た「言葉を詠む」ということを、なぜPOPSにおいてしなかったのかと気づいたのです。
※詩吟については第2回でお話していますので是非ご覧下さい。
本コラムの執筆者
鈴華ゆう子
6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。
「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。
現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。
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