【連載】「唄いろは」
鈴華ゆう子
歌手になるまでの道のり〜音大進学まで〜
幼い頃の私は、女性J-POP歌手に憧れていました。
MISIAさん、吉田美和さん、中島美嘉さん、宇多田ヒカルさん、広瀬香美さん、モーニング娘。さんなど、
いつも歌を覚えてはカラオケで歌っていました。
友達があれも歌ってこれも歌ってとリクエストしてくれるのが嬉しくてたまらなく、オリコンチャートにのる新譜はまんべんなく歌えるように常にCDを借りてきては覚えていたと思います。
親に内緒でこっそりオーディションに応募できないかと雑誌を買ってきたり模索したこともありました。
いったいどうやったら歌手になれるのだろうかと、答えが分からず悩んでいた青春時代の気持ちを今も強く覚えています。
「とにかくまずは夢に近い東京に出ることだ!」
そう思っていた私は、親が推奨していた音大にピアノ科で進学するということで夢に一歩近づくと思い、そこに一点集中しました。
もちろん、親に別の道をプレゼンしたこともあったのですが、それを聞いた親が言ったのは
「3歳からピアノをここまでやってきたのだから途中放棄せず、音大のピアノ科に進学してからでも遅くはない。まずはそこに行く努力をして、合格できたのなら、それからは何を目指してもいいと思ってるよ。」
との言葉でした。
今思えば、良き壁になってくれたのです。
クラシックピアノで音大に行くのは並大抵なことではなく、毎日何時間もピアノを弾き続けるわけですが、
「おいおい、クラシックピアニストになりたかったんじゃないのかい!」とツッコミが入りそうですね。
しかし、子供の夢の力というのはそういうものです。
とにかく東京へ出ないことには何も始まらないという底力も相まって、あの時期の私は人生で1番ピアノを弾きましたね。
課題曲は、ショパンのエチュード3曲、ドビュッシーのエチュード、バッハ平均律、自由曲はシューマンのソナタop.21!!!
これらを必死に練習しました。
実技以外の学科試験は、英語、楽典(音楽理論)、聴音(ピアノの演奏を数回聴いて譜面を書く)、新曲視唱(初めて譜面を見てすぐアカペラで歌う)です。
コンクールとかとは比べものにならないくらい、音大の実技の試験は1番緊張しました。
消しゴムでは消せない一発勝負で、一年浪人してまた地獄のような練習の日々になってしまうのかどうかが決まるプレッシャー。
試験前夜の記憶は鮮明です。
もちろん全部暗譜で演奏するのですが、それまで弾けていても間違えてしまわないかという悪いイメージがふわっと浮かんできそうになるけれど、そんな不安に負けない精神を定着させる為に、目を瞑りながら超絶集中!をしていました。
まさにそれが、精神力の形成でした。
このときの経験は、緊張したときにどう自分をコントロールするのか、今も大変役に立っています。
無事音大に合格して入学してからは、ピアノを学びながらも、別の科の子とアンサンブルをしたり人間関係の輪を広げるということを主にしていた気がします。
学生時代の活動として、オペラ合宿にピアニストとして参加したり、ヴァイオリンや声楽などの伴奏ピアノをしたり、バレエの伴奏ピアニストなんかもやりました。自主企画のコンサートをしてみたり、老人ホームにボランティア演奏に行ったり、中高音楽の教員免許を取得するための一環でオーケストラと吹奏楽にもクラリネットで入り、音楽を軸に経験を重ねました。
歌手に直結する活動はこの時点ではまだ何もできていませんでしたが、実はそれらが、その後とても重要なことであったと卒業してから実感するようになってゆくのです。
卒業後から歌手になるまではまた次回お話ししてみようと思います。
本コラムの執筆者
鈴華ゆう子
6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。
「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。
現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。
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