【連載】「唄いろは」
鈴華ゆう子
※こちらのコラムは入院前に執筆したものです
生放送は、とてつもない集中力を保っている瞬間
私にとって、テレビなどの生放送で届けるときほど、五感が研ぎ澄まされることはないんじゃないかってくらい集中力が高まります。
その理由について少し詳しく説明すると、
音程、歌詞、いつもと違う曲の尺、表情、パフォーマンス、カメラワーク、トーク内容等々、パッと思いつく限りでもこれらすべてのことを同時にバランスよく意識を向けなければいけないからです。
現場の空気振動で伝わる音は視聴者に届かず、ラインに乗る音のみが鮮明に届く環境であり、視覚についても、より接近した映像となって届けられます。さらには視聴者側はよりリラックスした自宅などで観るので、自然と見る目も厳しくなるわけです。
私自身が視聴者であるときを自己分析してみるとそんな感じですね。
例えばライブなどでは、表情などはあまり気にせず、とにかく全身全霊を注ぎ、どんなブス顔を晒そうが気にせずパフォーマンス重視で思い切り歌っています。
撮影のときは、どれだけ良い表情で表現できるかを重要視します。
レコーディングのときは、ピッチや歌詞を丁寧に歌うなど、音楽的なことに一点集中します。
このように時と場合によって、ある程度どこかに自然と傾くのです。
しかし、テレビの生放送というのは、どこかに偏らず、すべてに対してバランスよく意識を向けるので、それはまるで、五感だけでは足りないような感覚です。
とてつもない集中力を保っている瞬間で、短時間の歌唱であっても、2時間のライブを終えたときと同等の疲労感を覚えることも多いです。
その時々で多少音響も違うので、現場慣れという経験も重要になってくるのではないかと個人的には思っています。
それは、本番に強いか否かのひと言では済ますことはできないと思います。
多大な影響力がある場で、バンドとして出演する際に、まずは歌がどうであったかというのが世間の評価の基準となるのは言うまでもなく、その責任にヴォーカリストは向き合うことになります。
プレッシャーに打ち勝つ精神力を鍛えるのもヴォーカリストにはとても大切なことですね!
少しでもこの話がプラスになっていただけたら嬉しいです。
本コラムの執筆者
鈴華ゆう子
6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。
「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。
現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。
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