【連載】「唄いろは」
鈴華ゆう子
歌手がイヤホンをしながらライブで歌っている姿をよく目にすると思います。
あれは、一体何なのか?と思われる方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな耳に装着するタイプも含め、「モニター」についてお話したいと思います。
イヤモニとは
まずは耳に装着するタイプのインイヤーモニターについて。
略してイヤモニと私たちは呼んでいますが、これは本当になくてはならない存在です。
バンドの大音量の真ん中に立って歌うときに、自身の声が聴こえず音程が取りにくかったり、会場の大きさによって、音の反響でリズムやテンポがズレて聴こえてしまったりします。
それを解消してくれるのがイヤモニ。
イヤモニをつけると、演奏に必要な音だけを直接聴くことができます。
演奏している音をミキサーという機械に集め、歌と楽器の音を自身の聴きたい音量や音質のバランスに整えて、より歌いやすくイヤモニから返すのです。
すると、爆音の中で必要以上に怒鳴ってしまうようなことも防いでくれますし、大音量から耳も守ってくれます。
イヤモニの機能として、他にもいろいろあります。
例えば、歌始まりの曲でも、ガイドキーを鳴らし、クリックでテンポを出すことで、ナチュラルに歌から曲をスタートすることができ、テンポが揺れずにバンドも入ってくることができます。
滅多にありませんが、コンサート中にスタッフから緊急の指示などを、イヤモニを通してすることも可能です。
箱状の置き型のモニターもある
コンサートのステージの前方に、箱状の置き型のモニターを見かけることもあると思います。
少し前の時代までは、このモニターしかありませんでした。
アコースティックな音楽であったり、編成が大音量ではないバンドであれば、この箱型のモニターのみでも聴き取りやすいため、イヤモニを使用しないこともあります。
空間の響きも感じながら演奏したいクラシカルな音楽のときは、私は箱型モニターを好みます。
お客様と同じ響きの中で一体感を感じながら演奏するのは、とても心地良いです。
大所帯のバンドになると箱型のモニターでは、空間の生音に自身の声が負けてしまい聴き取りにくく、難しいですが、
私の場合、華風月(ピアノ弾き語り、尺八、箏)のような編成のコンサートの際には、いつも箱型のモニターを使用しています。
余談ですが、イヤモニを付けている和楽器バンドのライブでも、バラードなど曲によっては、片耳のイヤモニを外し、空間の響きを感じながら歌うこともあります。
あとは、皆さんの歓声を聞きたいときも外しますね!
モニターは自分に合った形を選びましょう
さて、これらのモニターの調整をしてくれているのが、PAのモニターマンです。
和楽器バンドのライブの場合は、モニターマンはステージの袖に居てくれることが多いです。
時には、観客の歓声であったり、お客様が会場いっぱいに入ることで音が吸収され、リハーサルとは会場の反響が変わったりすることもあるので、決めたハンドサインを袖にいるモニターマンへ送り、リアルタイムで音量調整を指示したりもします。
モニターは、会場や編成によって自分に合った形を選びましょう。
しかし時には、箱型しか使えないといったイベントに出演することもあるかもしれません。
どちらにも慣れておくことが必要です。
歴史上イヤモニの登場は、ヴォーカリストにとって革新的であったわけですが、現在イヤモニも多種多様な機種が出ており、自身に合ったものを選んでおくと良いでしょう。
多くのプロミュージシャンは、自身の耳型を取り、しっかり密閉できる自分専用のイヤモニを使用しています。
私が出会った現在使用中のイヤモニは、
世界で初めてイヤホンの筐体に「第二の鼓膜」と呼ばれる「専用モジュール」を搭載。
音の分離が良く、これまでのような音圧による密閉感が減り、額の前後に音の色彩が広がるような感覚でした。
ヴォーカルのモニター音量をむやみに上げても耳が疲れてしまいます。
自身のベストのバランスをモニターマンと相談しながら見つけ、2時間強のライブを歌い続けても耳を壊さないために試行錯誤していくのも、ヴォーカリストとして大切なことのひとつです。
自分が歌いやすいステージ環境を作っていきましょう!
本コラムの執筆者
鈴華ゆう子
6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。
「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。
現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。
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