【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第6回【ヴォーカリストは名進行役であれ】

ライブを行なう際、ヴォーカリストにとってMCもとても重要なポイントです。
まったくMCはなしで演出する方もいらっしゃいます。それもクールでとてもカッコいいので、ご自身がやられている音楽のスタイルが合うようでしたらそれも良いと思います。
しかし、少なからずMCを入れてセットリストを組む方が多いと思いますので、今回はMCに着目していきます。

私は、MCは歌うことと同等に、ステージにおいて「魅せる」ためにはとても重要な役割を担っていると考えます。
自身がどのようなキャラクターでどんな内容を話すのかに向き合うことが大切だと思っているからです。
新人の方などが出演するライブハウスをふらりと観に行った際、歌はとても魅力的なのにMCのテンポ感が悪く、せっかくの世界観を壊してしまっていたり、何を話しているかまったく聞き取れなくて、非常にもったいない!というようなことが度々あります。
私も改めてMCの流れは大切にしなければと自身を振り返るキッカケになりましたし、今一度他のアーティストのライブDVDなどを観て研究したりもしました。

「魅せる」MCには準備が肝心

まず、リハーサルの時点で、MCはどのような概要を話すか大枠だけは流れを決めておきます。
それを演出に携わるスタッフさん全員に共有します。
バンドメンバーがいる際は、その内容をメンバーに共有します。
そして、和楽器バンドのように喋るべき人数が多いときには、ロングMC、ショートMC、伝える内容が決めうちのMC、完全自由で時間だけ決めているMCなど、より細かく設定します。

そして、ライブによって全体のMCの量を変えたりもしています。
例えば和楽器バンドの場合、年に一度の集大成にしている『大新年会』 というライブでは、演出をメインとし、MCはダレない程度の分量でスマートに行ないます。
全国ツアーのときには、少しアットホームで普段あまり喋らないメンバーにもなるべく話してもらえるようにみんなで決めています。
フェスやイベントに出演の際には、最低限、我々に興味を持っていただけるような情報を伝えます。
ただ伝えるだけではなく、箱の大きさに応じての聞き取りやすいスピード、トーン、反響を考慮した間、興味を引きやすい語順、その辺りを考えて喋ります。

また、時にはヴォーカリストは進行役でもあるべきです。
タイムキーパーであり、話の持っていく方向を定めたり、メンバーの話が脱線しても元に戻したり、曲に入るタイミングを仕切ったり。

円滑にライブを進行するために、次の曲に入るキッカケの言葉だけをスタッフやメンバーと決めていたりもします。

〇曲名フリで入る
〇3回煽りで入る
〇「それでは聴いてください」をキッカケに

実は「いくぞー! おまえらついてこーい!」
と私がノリだけで言って、周りが空気を読んでついてきているわけではないのです(笑)。
その辺りはしっかり練られ、演出やリズムインのタイミングなども含めてリハーサルを重ねています。

ヴォーカリストが何を歌っているかだけではなく、MCをどんな世界観で何を伝えているかという点も、音楽と同じくらいの熱量で向き合ってみるのはいかがでしょうか?
自身がどんなキャラクターでMCをするとより魅力的なヴォーカリストに映るか分析してみることは、個人的にはとてもオススメです。

本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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