【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第38回:ミックスボイスへと繋がる!「共鳴」と「倍音」まとめ

2024.10.23

共鳴と倍音はミックスボイスへ繋がる

 tOmozoです。第27回から11回に渡って、声の2つの響き=「共鳴きょうめい」と「倍音ばいおん」シリーズをお届けしてきました。今回は共鳴と倍音についての“まとめ”をし、このシリーズを一度ひと区切りとさせていただきます。

 これまでは共鳴と倍音それぞれについて解説してきましたが、今回はこの2つの関係性と、「声区せいく」に及ぼす影響についても簡単に見ていきましょう(‘ω’)ノ。


「共鳴」と「倍音」まとめ

「共鳴」と「倍音」特徴比較表

 『声が良く響いている』などと言いますが、「声の響き」には2つがあり、それが「共鳴」と「倍音」です。まずは特徴を表で比較します。

共鳴倍音
モノマネオオカミの遠吠えセミの鳴き声
声の役割声の広がり声の芯
例えるならじんわり広がる霧光る雷の光線
音の輪郭球状放射線状
音の質感ウェットツヤ感
音色の個性深い 太い 暗い ふくよか明るい 鋭い 固い 煌びやか
作り方の考え方共鳴腔の①拡大と②充満倍音の①生成と②表出
作り方①「喉仏下げ」など「喉ちんこの引き合い」
作り方②「鼻にためる」など調音(未執筆)など
声区の成分裏声の成分地声の成分
練習しやすい声区ヘッドボイスチェストボイス
練習しづらい声区チェストボイスヘッド・ファルセット
声区への効果硬い地声に湿度を与える裏声でも力強く鳴らせる
声区間への効果声区融合の潤滑油に声区間のしわ伸ばし・ハリ
「共鳴」と「倍音」の特徴比較表


「共鳴」と「倍音」の関係性

共鳴も倍音も共存できるし、させるべき

 共鳴と倍音は共生関係にあり、2つの響きが合わさって音色/声色を形成します。最終的には合体して出ていくために両者が混同されて説明されていることも多いようですが、2つの響きの成分自体は明確に作り分けが可能です。なのでこれまでは共鳴と倍音をそれぞれ別々に解説してきました。
 今回はシリーズのまとめとしてこの2つの響きを合体させたパターンを練習しましょう。

共鳴と倍音の成分割合4パターン

①共鳴「少」倍音「少」
②共鳴「少」倍音「多」
③共鳴「多」倍音「少」
④共鳴「多」倍音「多」

(1)①のみ (2)①から②へ (3)①から③へ (4)③から④へ (5)②から④へ
【共鳴と倍音の共存練習】
【共鳴と倍音の共存練習】

共鳴作りと倍音作りは“取り合い”になりがち

 共鳴と倍音の“成分”は最終的には混ざり合って出ていきますが、共鳴と倍音の“生成”は同時にやるのが難しい作業です。倍音を多く作ろうとすると共鳴生成が疎かに、共鳴を多く作ろうとすると倍音生成が疎かになりがちです。上記サンプルで言うと「④を目指した時に③か②に傾きやすくなる」ということです。
 これに関しては解決策のコツが無いわけではないですが、結局は”それぞれの成分を単体でしっかりと作れるようになること″に回帰します。中途半端な材料を合わせても中途半端な料理が出来上がるだけです。過去の連載に戻って練習していただければと思います。

 でも極論、共鳴と倍音のそれぞれの成分量は“お好み”なので、求めている声色になるように成分を足すことができればOKです。ですが、幅広い音色変化のためには、共鳴も倍音もたくさん作れるようにしておきましょう。


共鳴と倍音は「声区」へ

 共鳴と倍音シリーズの中で、これまでも「声区」については簡単に触れてきました。「声区」とは、ウィスパーボイス、ファルセット、ヘッドボイス、チェストボイス、ミックスボイス、エッジボイスなどの発声分類のことで、共鳴と倍音の2つの響きはこれら分類の作り分けに色濃く影響します。

【声区表 詳細ver.】
【声区表 詳細ver.】

共鳴は「裏声」の成分

 共鳴は裏声の成分で、裏声の1つである「ヘッドボイス」らしさを作ります。地声に共鳴成分を足していけば、ヘッドボイスっぽくなって裏声寄りに傾きます。つまり「共鳴」は地声を裏声のように柔らかく出すような「ミックスボイス」の材料の1つになるということです。“柔らかい声に寄せる”ので「ソフトミックス」と呼ばれたりもします。

倍音は「地声」の成分

 倍音は地声の成分なので、倍音成分が一番目立つ声区は、地声である「チェストボイス」です。裏声に倍音成分を足していけば、チェストボイスっぽくなって地声寄りに傾きます。つまり「倍音」は裏声を地声のように力強く出すような「ミックスボイス」の材料の1つになるということです。“強い声に寄せる”ので「ハードミックス」と呼ばれたりもします。

その他、声区に関係する成分は?

 共鳴はヘッドボイスに、倍音はチェストボイスに関係しますが、その他にも「吐息」成分は「ファルセット・ウィスパーボイス」に直接関係しますし、「鼻音」成分は各声区を融合する「ミックスボイス」の接着剤にもなります。連載の声区シリーズではこれらの“成分”を駆使しつつ、各声区とミックスボイスの習得を目指していく内容になります。

【声区表 詳細ver.】
【声区表 詳細ver.】


次回予告

 ということでいよいよ声区シリーズに突入していきますが、一度上記のような発声を調整する“成分”を洗い出しておきたいので、次回は「発声成分と発声動作まとめ」をお送りしたいと思います(‘ω’)ノ。


本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

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