【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第5回【目と耳で理解!】歌い方の種類と印象をまとめて紹介!part2/5 -音色変化編-

2024.03.6

第4回の要点

 tOmozoです。第4回から「歌い方」のテクニックを動画サンプルにして公開しています。前回のpart1では「音の高さ」に変化を加えることで生まれる表情の違いを紹介しました。それぞれの練習方法などはまた後日詳しく徹底解説しますので、わからないところがあってもご安心ください(‘ω’)ノ。

音高変化による「歌い方」一覧(第4回

⑴「しゃくり」
⑵「つまみ※」
⑶「フォール」
⑷「ライズ※」
⑸「先打ち※」
⑹「ビブラート」
⑺「フェイク/こぶし」

(※印は筆者の命名)

「歌い方」の種類を徹底解説!part2/5

 part2の今回は「声の質感/音色おんしょく声色こわいろ/トーン」を変化させる歌い方を紹介していきます。いろいろなテクニックの中で、みんな大好き「ボイトレ」が直接影響するジャンルですね。重要だと思われがちですが、最初に言っておくと、ポップスの場合「声色は基本的にオプション」です。つまり「極論どんな音色で歌っても良い」のです。リズム・ピッチ・表現の他の要素がしっかりしていればさえ、音楽/歌は成り立ちますので、無理に「良い声」を作ろうとしなくても良いんですよ。「本当に?」と思った読者さんのために、この事実をとある演奏で証明しましょう。

あなたの声で表現を作ろう

 以下はお正月の曲として有名な「春の海」を、筆者がリコーダーとピアノで演奏したものです。本来は尺八と琴で演奏するものですが、これを聴いたら「あ~それっぽい!」と感心することでしょう(笑)。
 終わりには「みんながイメージしているであろうリコーダーっぽい演奏/無表情で棒読みにした演奏」も添えておきました。

「春の海」リコーダー、ピアノで演奏/tOmozo

 リコーダーを低級楽器だと思っていた皆さん、どうですか?(笑)。楽器が立派じゃなくても、音を動かして表情を付けてあげさえすれば、ちゃんとした音楽にすることができるんです。つまり「たとえ発声が未熟であっても、表現次第では良い歌が歌える!」ということです。「不完全な自分の声が嫌いで……」って言う人もけっこう多いですが、最後に大事になるのはそこじゃない、ということもおわかりいただけたかなと思います。逆に言えば「声自体が極上の一級品だったとしても、棒読みの表現しかできなければ宝の持ち腐れになる」ということです。「自分の声という楽器を使って、いかに表情豊かな音楽を作れるか」、第1回でも言っていると思います。
 クラシックでは「発声学上の良い声」が重要な要素になるんですけど、ポップスは声色の個性が認められる世界です。「自分のもともとの声色を基調とした上で、楽曲に合わせた自由な音色変化/表現ができればそれが正解」という考え方を皆さんにはオススメしたいですね。
 この「自由な表現を可能にする」ためには、①音楽を感じ取って、表情付けを脳内生成することができる「感性/センス」と、②それを声で形にすることができる「技術/スキル」が必要です。……つまりですね、結局は「ボイトレも頑張れ」ということです(笑)。

 説明に出てくる動画サンプルの「見方」は、第4回のpart1で確認してください。今回はイラストも添えました。それではpart2スタート(‘ω’)ノ。

▼第4回目はこちらから!

音色変化による「歌い方」の種類

⑴「ウィスパーボイス、チェストボイス/吐息といき量」

 息を多く混ぜる「ウィスパーボイス」は、「優しい、はかない」印象に。「吐息量を調整する=声帯せいたいの閉じ具合(横方向)を調整する作業」となる。「地声らしい力強い声/チェストボイス」を作る条件のひとつは「声帯を強く閉じる」こと。声帯を閉じることを声門閉鎖せいもんへいさと言い、ここでは音色調整のためのアイテムとして扱っているが、そもそも発声の基本中の基本となる。これも10(11)段階で調整練習。ウィスパーすると一般的には声量が落ちて不安定になりやすい。これを安定させるためのコツは「大きいひそひそ話」、「声帯は開き気味、でも声門閉鎖は強く」。形状と強度は別々にコントロールするもの。詳しくは後日。

音色変化による「歌い方」の種類/「ウィスパーボイス、チェストボイス/吐息量」

⑵「声色の明るい・暗い、細い・太い/喉頭こうとう位置」

 「パワフルな声は太い」とか「可愛いアイドル声は明るい」など、声の音色を表わす言葉があるが、こういったものはのどぼとけ/喉頭こうとう」の上下位置(縦方向)を調整することで作り分けることができる。顎・舌の位置にも影響を受けながら、喉頭を下げる筋肉で調整する。10段階で作り分けができると自由な声色が手に入る。「明るい・暗い、細い・太い」のほかにも「浅い・深い、軽い・重い、鋭い・鈍い」のニュアンスの違いも、⑴の横方向、⑵の上下方向の動きの組み合わせによって作りわけることができる。詳しくは後日。

音色変化による「歌い方」の種類/「声色の明るい・暗い、細い・太い/喉頭位置」

⑶「ファルセット、ヘッドボイス、ミックスボイス/声区せいく

 そもそも声の音域が変われば印象が変わるが、同じ音高であっても音色が変わればこの通り。今回は簡単に説明すると、①ファルセットは息混じりの裏声(=ウィスパーの裏声ver.)、②ヘッドボイスは「広がりの響き/共鳴きょうめい」が豊かな裏声、③ミックスボイスは「地声らしい芯の響き/倍音ばいおん」が豊かな裏声、と思っていて良い。

音色変化による「歌い方」の種類/「ファルセット、ヘッドボイス、ミックスボイス/声区」

⑷「ネイザル、トゥワング/鼻音びおん量」

 「鼻にかかった音/ネイザル」は「のどちんこ/軟口蓋なんこうがい」の上下位置で調整できる。例えばアナウンサースクールでは「濁音だくおんga gi gu ge go」の固い音色を柔らかくするために「鼻濁音びだくおんngaんが ngiんぎ nguんぐ ngeんげ ngoんご」の習得を必要とされる。ネイザルは鼻濁音のように喉ちんこを降ろし気味にして柔らかい鼻音を作る。トゥワングは、喉ちんこが挙がって張っていて弾力がある状態。「モワっと」させたければ前者、「パリっと」させたければ後者。

音色変化による「歌い方」の種類/「ネイザル、トゥワング/鼻音量」

⑸「ハスキーボイス、シルキーボイス ※/もともとの声色」

 そもそも人はそれぞれの声色を持っている。掠れかすれ気味のカッコいい声は「ハスキーボイス」と呼ばれるが、その反対の「ツルっ」とした声は呼び方がないので筆者は「シルキーボイス」と呼んでいる。ちなみに筆者はけっこうシルキー。動画はサンプルは次の⑹とまとめます。

⑹「擬似ぎじハスキー、がなり/ノイズ量」

 ハスキーボイスは強めの声門閉鎖圧と強めの呼気圧でマネて作ることができる。「がなり」や「デスボイス」もこの延長線上にある。ノイズが生まれるのは通称「仮声帯」と呼ばれるパーツ。※ハスキーの人がシルキーを作るのは難しい。

音色変化による「歌い方」の種類/「擬似ハスキー、がなり/ノイズ量」

⑺「エッジボイス」

 表現としては「我慢をしている感情」が感じられるが、基本的な発声を整えるためにも有効。発生条件のひとつは「呼気量が少ない状態」。

音色変化による「歌い方」の種類/「エッジボイス」

⑻「裏返し/ヒーカップ」

 声をあえて裏返すテクニック。「不満を抱えた感情、泣いている表情」を表現できる。サンプル内の「泣きの表現」はこのヒーカップ、不規則なビブラート、荒めのウィスパーで作ることができる。

音色変化による「歌い方」の種類/「裏返し/ヒーカップ」

⑼「ブレス音の活用(4つ)」

 ブレス音での表現。すべて勝手に命名したもの。
①深呼吸ブレス:歌い初めにあえてブレスの音を意味深に聴かせる。「緊張感、期待感」を演出できる。喉ぼとけ/喉頭の位置で音程感も調整可能。
②余韻ブレス:特にウィスパーでの発声の終わりで、発声を止めたあとに吐息を続ける。「○○……」の表現ができる。
③タメきブレス:強めの発声の終わりで、肺に溜まっている空気を一気に吐き出す。「感情の吐露とろ」を表現できる。原理もコツも「咳」と一緒。
④泣きブレス:苦しくて水面から顔を出したときの呼吸のように、吸気発声きゅうきはっせいをしながらブレスすると、泣いているときを再現した表現ができる。

音色変化による「歌い方」の種類/「ブレス音の活用(4つ)」

……

 このように「歌い方」のうち、音色を工夫するだけでもこれだけの多くの印象や感情を表現できますよ。次回はpart3!……この調子だとたぶん「歌い方」のテクニック紹介だけでpart5までかかると思います_(:3 」∠)_……。ですが、まだひとつひとつは徹底的に解説はできていません。part5まで一覧にしたら、いつになるかは未定ですが、それぞれの練習方法も解説しないとなりませんね。

次回以降予告

3.音量変化による「歌い方」の種類(第6回

⑴「構成ごとの強弱」
⑵「フレーズごとの強弱」
⑶「音符ごとの強弱」
⑷「クレッシェンド、デクレッシェンド」

4.グルーヴによる「歌い方」の種類(第7回

⑴「フレージング」
⑵「アーティキュレーション」
⑶「2個イチ※」
⑷「文節区切り」
⑸「リズムによるグルーヴ」

5.リズム変化による「歌い方」の種類第8回

⑴「シンコペーション」

6.速度変化による「歌い方」の種類第8回

⑴「タメ」と「走り」
⑵「フェルマータ」

7.テクニック応用表現編!第8回

⑴「モノや動きも表現」
⑵「歌詞なし声だけで感情表現」

本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

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