【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第11回:「喉詰め声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part1/6】

2024.04.17

声帯の閉じ過ぎを治そう

 第10回では歌声が詰まる原因について、問題を起こす器官と状態を6つ紹介しました。今回からその6つの症状それぞれの治し方を6回にわたって徹底解説していきます。今回は一つ目に紹介した(1)「声帯」の「閉じ過ぎ」=「ノド()め声」を扱います。


喉詰め声は吐息で中和する

 まず結論から申しますと、声帯を閉じ過ぎたことによる喉()め声の解決のカギは“ウィスパーボイス”です。息をたくさん混ぜるささやき声/ヒソヒソ声のことですね。どういうことか解説していきますのでじっくり読んでいってください(‘ω’)ノ。それではスタート。

「喉詰め声」は「ノド詰め声」

 まずこの症状を理解するためには、喉詰め声の“喉”を特定しないとなりません。喉とはあまりにも広い範囲を示す言葉であり、発声の諸問題を解決できないばかりか、もっと複雑化させてしまう悪魔の言葉です。筆者はこの注意喚起のために“ノド”と表現しています。「喉/ノド」という言葉を使う危険性については以下の記事をご参考ください。

【完全版!】悪魔の言葉「喉/ノド」

「ノド詰め声」は「声帯詰め声」

 この場合の“ノド”とは声帯(せいたい)を指します。声が作られる最初の器官であり、最終的にコントロールするのも声帯です。

声帯は開く? 閉じる?

 声帯は、ある程度閉じた状態に肺からの空気が当たると振動が生まれて声が作られます。声帯で摩擦音が生まれるイメージです。逆に完全に開いた状態では息だけが通り抜けるので声を作ることができません。ですから“声帯は閉じるもの”です。声帯を閉じることを声門閉鎖(せいもんへいさ)声帯閉鎖(せいたいへいさ)と言います。

どれくらい閉じるべき?

 “閉じる”と言っても、そこには程度問題が生じます。声帯をどれくらい閉じるかによって、どんな音色/声色こわいろになるか、声の出しやすさ、改善すべき問題の有無、が変わってきます。いろいろな声における“声門閉鎖の程度”を見ていきましょう。

(1)吐息
 息だけ吐いているときは“声帯が完全に開いた状態”で“声は鳴らない状態”です。息だけ吐く場合は出しづらさを感じないはずです。

(2)ささやき声/ヒソヒソ声
 多くの息が混ざるも声は薄っすら鳴ります。“声帯が開き気味=少し閉じた状態“です。慣れていないと声量は出しづらくて張り付いた感じを覚えやすいですが、音色自体はサラサラと流れていくような質感になり、”詰まる”とは反対の声になります。

(3)しっかりめの”話し声”や”歌声
 “声帯が閉じ気味=少し開いた状態”で、日常的によく使うバランスの発声ですが、歌においては地の声が大きい人ほど音域が上がってくると詰まりやすくなります。

(4)「ウ”ッ!」や「……ッ!!」
 お腹をパンチされた時のような苦しそうな音です。“声帯が過度に閉じた状態”です。この段階になると“声帯の閉じ過ぎ”の状態となります。

声帯を閉じ過ぎると?

 上記の(4)が声門閉鎖(せいもんへいさ)が強すぎて声がせき止められている極端な例であり、これがまさに“声帯で声が詰まっている”状態です。これを()め声/喉()め声過剰閉鎖(かじょうへいさ)と呼びます。このように程度の問題はあるにせよ声帯の閉じ過ぎが、歌声が詰まる原因の一つになります。


解決策は「閉じ過ぎるのなら開けばいいじゃない」

 「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」のような意地悪な話ではありません(笑)。強すぎる閉鎖を治すには声帯を開き気味にすれば良いんですが、実は声帯を開く動作は、声帯の筋肉だけではコントロールできません(「半不随意筋はんふずいいきん」と言います)

声帯の開閉コントロールは息で

 “ケーキ”のように特別なものを用意する必要はありません。声を作るのに必要な材料は声帯と息です。専門的に言い換えると声門閉鎖と呼気です。声帯が閉じ気味だと漏れる息は少なくなり、逆に息を増やせば声帯は開き気味になるように、この二つはお互いがそれぞれをコントロールし合う表裏一体の関係です。発声はバランスです。この場合もシーソーや綱引きのように、声門閉鎖の強さと呼気量のバランスを取れば良いのです。発声に呼気を混ぜようとすれば、声帯の筋肉は息を通すために開く動作をするので、声帯が過剰に閉じる動作を中和してくれるのは呼気となります。
 「声帯に“息を挟める”ことによって、物理的に閉じないようにする」と思っていても良いでしょう。「乾燥でカチカチに固まった食材(=声帯)を霧吹き(=呼気)で柔らかく戻す/ほぐす」ようなイメージも近いです。なのでささやき声/ヒソヒソ声のように呼気をたくさん使うウィスパーボイスを習得することがノド詰め声を改善する解決策となるのです。


ウィスパーボイスのトレーニング

 では実際に、息を吐く/息を混ぜる/息を漏らす作業を必要とするウィスパーボイスの練習をしていきましょう。

筋弛緩法

 筋弛緩法(きんしかんほう)と聞くと難しそうですが、簡単に言うとあえて力んだ状態も覚えることで、脱力状態も覚えようというものです。過剰閉鎖の緊張状態とウィスパーの脱力状態を行き来させて練習します。

(1)まずは音程感を降ろして脱力を強調。

(2)次は同じ音程上でコントロール。

11段階でコントロール

 最終的には以下の11段階でコントロールできるようになると良いですが、まずは大まかに100、80、60、40、20、10、0の6段階で区別できるようにしましょう。図の【声の輪郭のイメージ】のように、“息の成分”の中心に“声の成分”が鳴っているのをイメージしましょう。

(1)まずは6段階で区別。

(2)次は11段階でコントロール。

グラデーションでコントロール

 上記の11段階をなめらかに繫げて練習します。

コントロールするコツあれこれ

 上手くいかないときは以下の方法を試してみてください。
(1)鼻づまりの状態「danban」を作りながら漏らす。
(2)漏らし気味なら「ha」で、閉鎖気味なら「ah」の発音で練習する。
(3)漏らす呼気は“温める/湿らせる”ように吐くとなじみやすくなる。
(4)意図的な声門閉鎖「あ”/う”」を軽く混ぜながら発声。

 これらの練習方法と、なぜ効果があるのかについての解説はウィスパーボイスをメインで扱う機会にお話ししましょう。

閉鎖の強さと狭さ、呼気の多さと速さ

 それでも上手くいかない場合や、もっと進んだトレーニングをするときは、閉鎖の強さと狭さ、呼気の多さと速さについても理解して調整する必要があります。これらについても別の機会にお話ししましょう。実際にヘッドボイスやミックスボイスの習得をするときなどにも必要な知識と感覚になります。

今日の終わりに

 ボイトレは問題が複雑に絡み合っていると解くのが難しくなります。今回感覚を掴めなくても、ほかの項目でボイトレをしている中で急に感覚を掴める瞬間が訪れたりすることがありますので、一つに凝り固まらないで練習するのも効果的な方法です。


次回予告

 次回は、第10回「歌声が詰まる原因6つ」の2つ目で紹介した(2)「喉仏の上がり過ぎ」=「ノド上げ声」について解説していきます(‘ω’)ノ

 

本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

本コラムの記事一覧

その他のコラム

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!