【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」
tOmozo
第16回:子音の発音は味方にも敵にもなる【歌声が詰まる原因 part6/6】
2024.05.22
目次
子音の発音を味方にしよう
「子音と母音」とは、例えば「か=ka」なら「k」が子音、「a」が母音です。子音の発音はときには発声を手助けしてくれる救世主になりますが、ときには心地よい発声を邪魔してくる悪者にもなり得ます。
第10回から「歌声が詰まる」原因と解決方法について6回に渡って解説してきました。6回目は「口腔内各所」で「子音が溜まり過ぎる」を扱います。今回で「詰まるシリーズ」の最後になります(‘ω’)ノ。
歌声を詰まらせる子音は主に3つ×2
悪さを働く子音は主に3つで、それは「か/k行」「た/t行」「ぱ/p行」です。それに濁点を付けた「が/g行」「だ/d行」「ば/b行」も同じような作用をします。(前者グループは「無声破裂音」、後者グループは「有声破裂音」と分類されます。)これらの子音は口腔内のどこかの器官で一度、音声を遮断・圧縮してから破裂させる発音です。例えば「かっぱ/kappa」などの「っ」のタイミングで遮断・圧縮が起こることになりますが、その場所については以下のイラストをご覧ください。
「か/k行」では下の奥と喉ちんこが、「た/t行」では上の歯と舌先が、「ぱ/p行」では上下の唇がくっ付くことで声や息を遮断・圧縮します。そしてその瞬間は声帯で起こる「声門閉鎖」も強くなる傾向があります。「かっ!かっ!かっ!」と強く発音してみてください。声帯付近にも負荷がかかっているのを感じると思います。ということは、高音域でこれらの子音が出てくると、声帯が絞まり過ぎる「喉詰め声」を特に誘発しやすくなります。ただ、すべての人に当てはまるわけではありません。これについては記事の最後に説明します。
解決策は「長く引き伸ばす+ウィスパー」
長く引き伸ばして分散
「k・g」「t・d」「p・b」の子音は、圧縮されるほど発音の時間が短くなり、その分瞬間最大風速も強くなります。なので、”完全に遮断されている時間がないように“、これらの子音は”長く“発音してあげます。息の成分を少しづつ漏らしながら圧縮されすぎないようにすると、無駄な力みを分散しやすくなります。
この作業は「k・g」「t・d」「p・b」の順番にやりやすさを感じるでしょう。これでもカバーできない場合はもう1つ意識できることがあります。
ウィスパーボイスで分散
また、子音のタイミングで完全に遮断する時間を作ったとしても、後続の母音がウィスパーボイスになっていれば脱力を図ることができます。”後続“と言っても、母音になってからウィスパーしても間に合いませんので、最初からウィスパーボイスを用意しておいて子音の発音もコントロールします。
ウィスパーボイスの練習については以下の記事をご覧ください。
子音が敵になってしまう条件
さて、そもそも子音が“敵”になってしまうのは以下のような条件が揃ったときです。
・普段から声量を上げた強めの発声をしている場合
・“滑らかに繋げる”より“切る”ような歌い方が多い場合
・子音が「k・g」「t・d」「p・b」の場合
これらの子音は、「もともと発声が弱くてパワーアップを目指している」人にとっては逆に味方になってくれます。この6つ以外の子音も、それぞれ発声を調整するための役割を自然と含んでいますので、これについても別の機会に解説しましょう。
“発声は表裏一体のバランスである”という側面はここでも現れます。足し算でバランスを取るのか引き算でバランスを取るのか、人によって必要な作業は異なります。
次回以降予告
これまでは「歌声が詰まる」のテーマのもと、いわば”脱力“をするためのアイテムを多く紹介してきました。次回以降はその逆で、弱々しい発声をパワーアップする”増強“のアイテムを紹介していきます。テーマは「歌声が抜ける」となります。今回紹介した子音たちを”味方“にする方法を含めて、いろいろなトレーニングメニューを紹介していきます(‘ω’)ノ。
本コラムの執筆者
tOmozo
岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。
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