【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」
tOmozo
目次
~力強い歌声へ!~声帯を閉じる筋力UP
tOmozoです。今回は声帯を閉じる筋力をUPするためのトレーニングをしましょう。「声帯を強く合わせること」は、力強い発声を叶える条件の1つです。第17回:歌声が「抜ける」原因と力強く鍛えるボイトレ9選のうち、1つ目のメニューを詳しく解説する内容になります。
特に息漏れが多い人向け
“歌声が抜ける”症状のうち、今日のメニューは特に「息漏れが多い発声」が気になる人向けのメニューです。
仕組みの理解とトレーニング
いじる器官は声帯
専門用語でまとめながらトレーニングを進めていきましょう。声が最初に作られる器官であり、発声において最終的にコントロールしなければならないのは「声帯」です。イラストで確認しましょう。
息を吐くとき・声が出ているとき声帯の動きは?
息=「呼気」だけを吐いているとき、声帯は息を通すために開きます。
①まずは息だけを吐いてみてください。
②次に無意識に「あ~」と発声してみます。
発声しているとき、声帯は閉じ気味になっていて、息が声帯に当たることで声帯が振動をし声が作られます。“摩擦で音が鳴る”と思っていても問題ないでしょう。声帯と息で摩擦音を作るには、“呼気が閉じ気味の声帯に当たってこすれている”必要があります。
息漏れが多い人は声門閉鎖圧が弱い
“声帯を閉じること”を「声門閉鎖(声帯閉鎖)」と言い、″声帯を閉じる力”は「声門閉鎖圧」と言います。息漏れが多い発声は、声門閉鎖圧が弱くて声帯が開き気味になるために起こります。吐く息の量や強さ・速さである「呼気圧」に「閉鎖圧」が負けてしまっている状況です。
そうすると、いわゆる「ウィスパーボイス」や「ファルセット」というような息漏れの多い発声の分類(声区と言います。前者は地声の音域での呼び方、後者は裏声の音域での呼び方と思っていてOkです。)になります。これを実感するために、まずは意図的に息を多く混ぜながら発声してみましょう。
川に例えると、護岸工事が不十分で土砂が流出をしてしまっているような状況です。①水の流れ/息の流れを一定に安定させるため、②土砂/無駄な息の流出を防ぐため、両岸から護岸を補強するのが声門閉鎖だと思うと良いでしょう。
「ウィスパーボイス」や「ファルセット」は、悪い状態を示す言葉として使われる場合もありますが、本来コントロールをして積極的に活用するべき発声です。
一番強い声帯の働きと音声は?
声帯が一番強い力で閉じている状態を確認しましょう。少し不謹慎ですが、誰かにお腹をパンチされているシーンを想像して「ヴッ!」と苦しそうな声を出してみてください。
これが最も声門閉鎖圧が強いときの音です。声帯の扉が強く閉まっているので、息は“抜ける”ことがことができずに声帯の下に溜まります。か弱い発声を鍛えるには、この強く閉じる力を足しながら発声していけばいいのですが、これはやり過ぎであり、いわゆる「喉詰め声」と呼ばれます。
声門閉鎖の力加減の練習
ということで声門閉鎖にも力加減が必要になってきますので、呼気圧と閉鎖圧のバランスを取る練習をしていきます。以下のイラストのように「チェストボイス(強い地声)」と「ウィスパーボイス(ささやき声)」のグラデーションを作るトレーニングをします。
このエクササイズについては、第11回で丁寧に説明していますので、以下のリンクからご確認ください(‘ω’)ノ。第11回では「脱力」がテーマになっていますが、バランスを取る作業は同じメニューです。今この記事をご覧の読者さんは「増力」が課題ですので、強い発声の方を時間をかけて取り組めばOKです。
第11回:「喉詰め声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part1/6】
次回予告
最後に気を付けてほしいのは「声帯をダイレクトにいじる作業はいわゆる喉詰め声になるリスクを上げる」ということです。なので「発声作業はまず”声帯以外に“頑張ってもらう」のが原則になります。ということで(2)以降のメニューを用意しましたので、次回以降もお付き合いください(‘ω’)ノ。
声が抜ける発声改善トレーニング一覧
(1)声帯を閉じる筋力UP:第18回に完了
(2)お腹に力を入れる:第19回に予定
(3)こめかみを上げる:第19回に予定
(4)鼻にかける
(5)鼻にためる
(6)喉ちんこの引き合い
(7)子音の圧縮/表情筋の稼働=声を集める
(8)腹式呼吸(腹圧UP+呼気圧UP)=声量UP
(9)大胆に発声作業をする
本コラムの執筆者
tOmozo
岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。
本コラムの記事一覧
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第1回 連載スタートにあたって
2024.02.7
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第2回「理論と感覚」の「考え方」
2024.02.14
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第3回【歌で大事なのは?】理論vs感覚~感覚が理論を越えるとき~
2024.02.21
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第4回【目と耳で理解!】歌い方の種類と印象をまとめて紹介!part1/5 -音高変化編-
2024.02.28
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第5回【目と耳で理解!】歌い方の種類と印象をまとめて紹介!part2/5 -音色変化編-
2024.03.6
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第6回【目と耳で理解!】歌い方の種類と印象をまとめて紹介!part3/5 -音量・グルーヴ変化編-
2024.03.13
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第7回【目と耳で理解!】歌い方の種類と印象をまとめて紹介!part4/5 -グルーヴ変化編-
2024.03.20
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第8回【目と耳で理解!】歌い方の種類と印象をまとめて紹介!part5/5 -リズムとテンポ変化、応用表現編-
2024.03.27
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第9回 これまでの連載内容まとめと補足記事紹介〜本連載の概要、歌における理論/感覚の考え方、歌い方の種類を紹介〜
2024.04.3
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第10回 歌声が詰まる原因6パターン【ボイトレ】
2024.04.10
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第11回:「喉詰め声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part1/6】
2024.04.17
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第12回:「喉上げ声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part2/6】
2024.04.24
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第13回:「息・鼻が詰まる感覚」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part3/6】
2024.05.1
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第14回:「鼻にかかった声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part4/6】
2024.05.8
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第15回:重要回「声が張り付く」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part5/6】
2024.05.15
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第16回:子音の発音は味方にも敵にもなる【歌声が詰まる原因 part6/6】
2024.05.22
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第17回:歌声が「抜ける」原因と力強く鍛えるボイトレ9選
2024.05.29
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第18回:声帯を閉じる筋力UP【“抜ける“歌声の改善法 part1/9】
2024.06.5
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第19回:声は下から支え、上から吊る【“抜ける”歌声の改善法 part2・3/9】
2024.06.12
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第20回:「鼻にかける」で粘り気のある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part4/9】
2024.06.19
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第21回:「鼻にためる」で密度のある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part5/9】
2024.06.26
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第22回:重要回「喉ちんこの引き合い」でツヤのある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part6/9】
2024.07.3
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第23回:-続-「喉ちんこの引き合い」を模型で説明【“抜ける”歌声の改善法 part6-Ⅱ/9】
2024.07.10
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第24回:-続-「喉ちんこの引き合い」/倍音生成=「鼻を鳴らす」【“抜ける”歌声の改善法 part6-Ⅲ/9】
2024.07.17
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第25回:子音の圧縮や表情筋の稼働で「声を集める」【“抜ける”歌声の改善法 part7/9】
2024.07.24
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第26回:声量アップに腹式呼吸!【“抜ける”歌声の改善法 part8&9 /9】
2024.07.31
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第27回:2つの声の響き「共鳴」と「倍音」をマスター!
2024.08.7
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第28回:「共鳴」とは?基本の作り方を解説!
2024.08.14
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第29回:「共鳴」をヘッドボイスで極める!共鳴量による感覚の違いを可視化
2024.08.21
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第30回:「共鳴」をチェストボイスに応用!最低限必要な『マストの共鳴』とは?
2024.08.28
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第31回:『マストの共鳴』でミックスボイスの下地が整う!「鼻に○○る」などとの関係も
2024.09.4
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第32回:ファルセットやウィスパーボイス作りにも「共鳴」の響きが必要!
2024.09.11
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第33回:声の「倍音」は作れる!声門閉鎖の上位互換「喉ちんこの引き合い」を解説
2024.09.18
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第34回:声門閉鎖だけでは「倍音」は作れない……「喉ちんこの引き合い」で倍音生成ができる証明!
2024.09.25
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第35回:息と声帯と倍音の関係を「ホームの白線の外側に立つ」で考える
2024.10.2
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第36回:“弱く閉じる? 強く開く?” 声門閉鎖の「位置と強度」で完全無欠なコントロールを!
2024.10.9