【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」
tOmozo
第22回:重要回「喉ちんこの引き合い」でツヤのある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part6/9】
2024.07.3
目次
力強い歌声へ! ~ 声色を磨く作業
tOmozoです。今回扱う「喉ちんこ(軟口蓋)の引き合い」も聞いたことが無いボイトレ法だと思います。なぜなぜマンの筆者が、ボイトレによくある「…それで、それはどうやったらできるの?…」を追及してたどり着いた秘密の答えです(‘ω’)ノ。
歌声の輝きをUPしてくれるこの作業は、力強い発声を叶えるだけでなく、いろいろな発声作業のバランスを取ってくれる重要なカギを握っています。第17回:歌声が「抜ける」原因と力強く鍛えるボイトレ9選のうち、6つ目のメニューを詳しく解説する内容になります。
いろいろな発声作業のヘルパーやバランサーにもなる
タイトルには“声のツヤ”をメインに書いていますが、他にも”声のハリ“”声の芯“”声のバネ感“などの効果が期待できるのがこの「喉ちんこの引き合い」です。いろいろな発声の調整作業の手助けになったり、極端になり過ぎないようにバランスを取ってくれる万能アイテムです。
声のツヤとは倍音のこと
今回扱う“声のツヤ”とは、専門用語で言うと「倍音」と呼ばれる響きになります。倍音の説明をし始めると難しい音声学の話に突入するので、今回は“明るく鋭い響き”と思っていてOKです。
声のツヤ出しトレーニング
倍音生成で音色もコントロール
言い換えれば「倍音生成」のトレーニングになりますが、それを叶えるのが「喉ちんこの引き合い」です。まずは目指すべき発声を提示します。
このような“セミの鳴き声”や“ブザー音”に近い音です。管楽器で言えば強く吹いたときのサックスが一番近いでしょうか。これが“声のツヤ”の成分です。この音声サンプルは、極力「倍音」だけを抽出・強調しようとした発声をしていますので、実際の歌唱ではこのままの状態で使うことはないと思っていて良いです。“明るく煌びやかに響く歌声の中にはこの成分が多く含まれていますよ”と捉えていてください。
基本的にはこのように“強い”発声をしなければこういった音色にはなりませんので、“歌声が抜ける”の改善策にもなるし、“声色/音色磨き”にもなるということです。
響きは2つ「倍音」と「共鳴」
ちなみに、歌声に限らず「響き」には「倍音」と「共鳴」があります。今回の“声の芯で振動する鋭い響き”である「倍音」は明るい煌びやかなサウンドで、“広がりのあるウェットな響き”である「共鳴」は深く暗いふくよかなサウンドの要素を持っています。以下の音声サンプルで、①共鳴だけを強調した発声と、②共鳴と倍音を共存させた発声、を提示します。このように両者は混在が可能です。
鼻にかけてから喉ちんこを上げる
やり方は「鼻にかける」をしたあと、鼻にかける力は残しつつ「喉ちんこ上げ(鼻にためる)」をします。上の音声サンプルでは「い~」でやりましたが、この作業をより意識しやすい発音は「ん~ぎー!/ng~giー!」です。「ん」の時に口は閉じないようにしてください。「い」の形で「ん」を発音します。
「ng」で鼻にかけてから明瞭な「gi」を作ろうとすることで自然とこのサウンドが生まれやすくなります。
発音は「い」で“潰す”
発音に「い/i」を用いているのは、“母音5つの中で一番倍音が鋭く表れやすい”からです。理由はここでは割愛しますが、「喉仏を上げる」ことでも倍音は“確認しやすく”なります。しばしばこの“喉仏を上げて歌声を圧縮する”ような作業を「潰す」と表現しますが、この場合は悪い意味ではありません。まずはこうした方が練習が捗ります。
「鼻」にまつわる発声作業を駆使
今までいろいろな発声動作を紹介してきましたが、このトレーニングでは「鼻にかける」と「喉ちんこを上げる」作業が重要になります。かっこ書きにした「鼻にためる」は、それこそ喉ちんこを上げることで完成するのですが、今回とは求めている効果のニュアンスが異なるので、簡単に「鼻にかける」と「鼻にためる」を横並びにすることはできません。
この辺については丁寧に説明すると長くなるので、これに関しては予定を変更して次回! 第23回にて補足説明をし、それを理解してもらって今回の「喉ちんこの引き合い/声のツヤ出し」のトレーニングのコツもさらに補足したいと思います(‘ω’)ノ。
次回予告
ということで次回、第23回は“声のハリ”や“声のツヤ”を作ることができる「喉ちんこの引き合い」の続編、~補足版~をお届けします。(‘ω’)ノ。
声が抜ける発声改善トレーニング一覧
(1)声帯を閉じる筋力UP:第18回
(2)お腹に力を入れる:第19回
(3)こめかみを上げる:第19回
(4)鼻にかける:第20回
(5)鼻にためる:第21回
(6)喉ちんこの引き合い:第22回(今回)
追加⇒喉ちんこの引き合い~補足版~:第23回に予定
(7)子音の圧縮/表情筋の稼働=声を集める
(8)腹式呼吸(腹圧UP+呼気圧UP)=声量UP
(9)大胆に発声作業をする
本コラムの執筆者
tOmozo
岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。
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