【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第28回:「共鳴」とは?基本の作り方を解説!

2024.08.14

今回は「共鳴」の基礎を解説

 tOmozoです。声の2つの響き=「共鳴きょうめい」と「倍音ばいおん」シリーズをお届けしています。今回は「共鳴」の1回目なので、共鳴とは何なのか、共鳴の作り方、など基本的な部分を解説します(‘ω’)ノ。

共鳴のイメージと動作

「共鳴」とは?

共鳴は霧で倍音は雷のようなもの

 まず、2つある声の響き、「共鳴」と「倍音」それぞれをイメージにすると、共鳴はじんわり広がる霧のようで、倍音はその中でピカッと光る雷の光線のようだと言えます。

共鳴と倍音のイメージは「霧と雷」

 倍音は「鋭くて明るい芯の響き」で、共鳴は「広がりのあるウェットな響き」です。倍音は線的で、共鳴は立体的に感じるでしょう。

 両者は混ざり合って声に含まれるので、まとめて同列のものとして解説されることも多いですが、筆者は別物として解説します。その方が狙っている発声の組み立てをしやすいからです。例えば「共鳴は裏声の成分」で「倍音は地声の成分」としての側面が強く、地声裏声のコントロールをする時に、それぞれが密接に関わりあってきます。

 今回は両者のうち、どちらかと言えば作りやすいであろう「共鳴」の方を解説していきます。まずは簡単に共鳴の音色を確認してみましょう(‘ω’)ノ。


共鳴のサウンド

 広がりのあるウェットな響きである「共鳴」を多く含んだ発声は以下のようなサウンドになります。

①共鳴量「少」 ②共鳴量「中」 ③共鳴量「多」 ④共鳴の成分を抽出

 共鳴の響きは”深い“”太い“”暗い“、そして”ふくよか““みずみずしい“というイメージを持たれるでしょう。

裏声での共鳴

 裏声での共鳴のサウンドを確認しましょう。裏声に分類されているものは2種類あり、「ファルセット」と「ヘッドボイス」です。音声サンプルを聴くと、後者のヘッドボイスの方が共鳴の響きを多く含んでいるのが確認できると思います。

①ファルセット ②ヘッドボイス

 ここでは理屈抜きで2つの音色をモノマネしてみてください。両者の特徴の違いは次の機会に解説します。

 次は「共鳴」の作り方について詳しく見ていきましょう(‘ω’)ノ。


共鳴作りの考え方:空間作りと充満作業

 まず、豊かな共鳴が作られる条件は2つあると考えてください。(1)空間の拡大と(2)中身の充満です。

(1)共鳴腔(響きの入れ物)を広く作れること

 銭湯や体育館などの広い空間は声が響きやすい環境です。発声においては響かせるための空間を「共鳴腔きょうめいくう」と呼び、咽頭腔いんとうくう口腔こうくう鼻腔びくうなどがあります。“声の通り道”なので「声道せいどう」とも言います。

代表的な共鳴腔

 これらの共鳴腔を物理的に広げる作業は「喉仏のどぼどけを下げる」「喉ちんこを上げる」「あごは下げて唇を伸ばす」などで可能になります。今は「各共鳴腔ごとに何か違った作業をする」というような発想は必要なく、「まるっと共鳴腔を広げる作業」だと思っていてOKです。これらの作業とエクササイズに関しては、以下の記事にまとめ、詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。

「喉仏を下げる」

 喉仏=「喉頭」が下がることにより、その上側に共鳴腔を確保することができます。

「喉仏を下げる」

第12回:「喉上げ声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part2/6】

「喉ちんこを上げる」

  喉ちんこ=「軟口蓋なんこうがい」が上がることにより、その下側に共鳴腔を確保することができるほか、根本的な発声エネルギーにも関わってきます。

「喉ちんこを上げる」

第14回:「鼻にかかった声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part4/6】

(2)広い共鳴腔に響きを充満させれること

 共鳴の空間「共鳴腔」を広く作れたとしても、中身がスカスカになってしまう状況もあり得ます。広い銭湯や体育館でも窓や扉が大きく開いていたとしたら声は反響しませんよね。中身を溜めることができてこそ豊かな共鳴が生まれます。
 むしろ中身の量をそのままで共鳴腔を広くしたが故に、声の密度が落ちて“声が散る”“声が抜ける”症状になる人が良く見られます。入れ物を広くしたならば、その分中身の共鳴量も補充する感覚も必要になるということです。

共鳴腔の拡大と充満

 声の密度が落ちると各所に隙間ができてバランスを崩し、いろいろな発声トラブルの可能性が出てくるので、組み立て順序としては共鳴腔の拡大よりも充満の方が重要と思っていた方が各場面で役に立つケースが多いです。

 これを実現するためには「鼻に溜める」「喉ちんこの引き合い」の発声作業をします。これらのトレーニングについても以下の記事をご参照ください。

「鼻に溜める」

 「鼻に溜める」=「共鳴を溜める」でほぼ間違いありません。共鳴腔に充満させるための基本動作になります。

「鼻に溜める」

第21回:「鼻にためる」で密度のある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part5/9】

「喉ちんこの引き合い」

 おそらく全く浸透していないであろう筆者独自のメソッドです。声帯を直接いじらないのに声帯がスルスルと正しい動作をするので、無駄な息漏れの改善を始め、色々な発声コントロールが可能になります。

「喉ちんこの引き合い」

第15回:重要回「声が張り付く」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part5/6】
第22回:重要回「喉ちんこの引き合い」でツヤのある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part6/9】
第23回:-続-「喉ちんこの引き合い」を模型で説明【“抜ける”歌声の改善法 part6-Ⅱ/9】
第24回:-続-「喉ちんこの引き合い」/倍音生成=「鼻を鳴らす」【“抜ける”歌声の改善法 part6-Ⅲ/9】


次回予告

 今回は共鳴の基礎的な部分について解説をしました。次回はこの(1)共鳴腔拡大、(2)共鳴腔充満、を裏声の一種である「ヘッドボイス」に応用していきます。なぜヘッドボイスでやるかをシンプルに言うと、共鳴を作りやすいから、です。お楽しみに(‘ω’)ノ。

 

本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

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