【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第27回:2つの声の響き「共鳴」と「倍音」をマスター!

2024.08.7

「共鳴」「倍音」は声の個性を生む

 tOmozoです。今回から新シリーズ「共鳴きょうめい」と「倍音ばいおん」に突入していきます。「声の響き」と呼ばれるものにはこの2つがあり、音色おんしょく声色こわいろを調整できる発声アイテムとなります。

 リズムや音程は“正解”がありますが、声色に関しては特にポップスに関しては自由です。例えば明るい声にするのか深い声にするのか、ガシッとした声にするのかサラッとした声にするのか、などは完全に個人の自由であり、それが個性の1つになります。
 共鳴と倍音はこういった音色作りの調整に大きな役割を果たしますが、実はそれだけではなく、基本的な発声動作にも関わりがあるとても重要なアイテムです。特に「地声じごえ」と「裏声うらごえ」のコントロールに大きな影響を与えます。

 今回は共鳴と倍音がそれぞれどのようなもので、発声にどう関わってくるのか、その全体像を紹介します。次回からそれぞれ詳しく解説しますのでお楽しみに(‘ω’)ノ。


「共鳴」「倍音」の正体とは?

共鳴は霧で倍音は雷のようなもの

 まず、2つの響きをイメージにすると、共鳴きょうめいはじんわり広がる霧のようで、倍音ばいおんはその中でピカッと光る雷の光線のようだと言えます。

共鳴と倍音のイメージは「霧と雷」

倍音を目で見ながら聴いてみよう

 「倍音ばいおん」とは実際に演奏している/歌っている高さである「基音きおん」よりも高い音程で鳴っている成分のことで、複数個存在します。倍音を機械で強調する様子とともにその音声を提示します。

倍音の推移を確認:「ド」の1音の中にもそれより高い音の成分が含まれている。

 倍音は複数個あると言いましたが、1つの基音を鳴らすだけで、以下の「倍音列ばいおんれつ」に表示されたたくさんの倍音が鳴(る可能性があ)ります。

「倍音列」とは?

 ただし全部が毎回鳴るわけではなく、発声の方法による強さや声色の違い、母音の違いによっても倍音の現れ方は変わります。当然楽器の種類によっても変わるし、同じ型番のピアノでも個体の違いによって変わることもあります。

倍音は鋭くて明るい芯の響き

 倍音が多く含まれた発声は以下のようなサウンドになります。

①倍音量「少」 ②倍音量「中」 ③倍音量「多」 ④倍音成分を強調

 倍音の響きは”明るい“”鋭い“”硬い“、そして”きらびやか“というイメージを持たれるでしょう。共鳴に関しては求める発声によっては“少なくてもいいもの”という考え方ができますが、倍音に関しては“多く出せるように常に意識する”と思っていた方が色々な発声コントロールをするにあたって有利に働いてくれます。

共鳴は可視化が難しい

 倍音の成分はグラフや音符によって表示できますが、共鳴は目に見える形で表現するのが難しい成分になります。その代わりに、倍音を作る時よりも共鳴を作る時の方が、身体の物理的な変化を目に入れやすいです。この辺についても次回から解説いたします。

共鳴のイメージと動作

共鳴は広がりのあるウェットな響き

 共鳴が多く含まれた発声は以下のようなサウンドになります。

①共鳴量「少」 ②共鳴量「中」 ③共鳴量「多」 ④共鳴の成分を抽出

 共鳴の響きは”深い“”太い“”暗い“、そして”ふくよか““みずみずしい“というイメージを持たれるでしょう。特にクラシックや合唱ではこの響きの豊かさが求められています。


 ここから先に関しては、次回以降に解説する内容の見出しのみを紹介するに留めたいと思います(‘ω’)ノ。

共鳴作りの発声作業:空間作りと充満作業

 豊かな共鳴が作られる条件は2つあり、それぞれ必要な発声作業が異なります。

①共鳴腔(響きの入れ物)を広く作る

・喉仏を下げる
・喉ちんこを上げる
・顎は下げて唇を伸ばす

②広い共鳴腔に響きを充満させる

・鼻に溜める

倍音作りの考え方:原音作りと表出作業

 豊かな倍音が作られる条件も2つあると考えると仕組みが分かりやすいです。

①声帯でたくさんの倍音を生成する

・喉ちんこの引き合い
・声門閉鎖と呼気のコントロール

②声が口から出るまでに倍音を強調する

・調音(子音や母音の調整)


共鳴と倍音の関係

・共鳴作りが上手だと倍音作りが苦手になる
・倍音作りが上手だと共鳴作りが苦手になる
・本来は共鳴も倍音も共存できるし、させるべき
・倍音は共鳴に乗って拡散される

共鳴と倍音、地声と裏声の関係

・共鳴は裏声の成分、倍音は地声の成分
・地声は声門閉鎖だけでは完成しない
・良質なチェストボイスは倍音で鳴らす
・ヘッドボイスを完成させるのは共鳴
・裏声の成分を持つ発声は2+1種類
・ミックスボイスに共鳴と倍音と鼻音も

共鳴と倍音に関するうんちく

・共鳴を作れるとエコーによく反映される
・モノの鳴りが特定の音程で増幅されるのも共鳴
・「鼻腔共鳴」という言葉の功罪
・倍音の練習に「ホーミー」をオススメ
・倍音が多い楽器と少ない楽器をモノマネしよう
・活舌の問題にも共鳴と倍音は関わってくる


次回予告

 次回からはこれらの内容について詳しく解説していきます(何回に分けるかなどは未定です)。倍音や共鳴について詳しく解説すると音響学の話も出てきてしまいますが、これを機会に是非マスターいていただければと思います(‘ω’)ノ。


本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

本コラムの記事一覧

その他のコラム

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!