【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第23回:-続-「喉ちんこの引き合い」を模型で説明【“抜ける”歌声の改善法 part6-Ⅱ/9】

2024.07.10

力強い歌声へ! ~ 第22回の続編デス

 tOmozoです。前回第22回:重要回「喉ちんこの引き合い」でツヤのある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part6/9】にて「喉ちんこ(軟口蓋なんこうがい)の引き合い」を紹介しましたが、詳しい部分を説明し切れなかったため今回に持ち越しになりました。まず前回からここまでの流れを簡単に抑えましょう(‘ω’)ノ。

「喉ちんこの引き合い」前回からの流れ

“抜ける”歌声の改善法として「喉ちんこの引き合い」があるよ。

これは“声のハリ”“声のバネ感”“声のツヤ”“声の芯”を作ってくれるよ。

“声のツヤ”とは倍音ばいおんのことで、響きの1つだよ。

ちなみにもう1つの響きとは共鳴きょうめいで、倍音と共存できるよ。

倍音の響きが豊かな歌声は“セミの鳴き声”“ブザー音”に似ているよ。

倍音を作りやすい発音練習は「ん~ぎー!/ng~giー!」だよ。

これは「鼻にかけながら喉ちんこを上げる」動作だよ。

この動作が「喉ちんこの引き合い」になるよ。

 ……ザっとこの流れです。今回に限らず「喉ちんこの引き合い」は”声のツヤ“出し以外にも“声のハリ”“声のバネ感”“声の芯””エネルギー生成“などいろいろな効果を期待できます。

 今回はまず「喉ちんこの引き合い」の具体的な動作を動画で見ていただきたいと思います。求める発声によって色々な“引き合い方”ができますが、今回の課題である『”声のツヤ“出し=倍音生成』を目的にした「喉ちんこの引き合い」の動作をメインで扱います。
 動画サンプル内の発音は、前回『”声のツヤ(倍音)“を作りやすい発音』として取り組んだエクササイズ「ん~ぎー!/ng~giー!」を今回も使っています。


「喉ちんこの引き合い」を模型で解説

「喉ちんこの引き合い」=綱引きで“ハリ”作り

 「喉ちんこの引き合い」とは、次の動画のような動きです。模型を使って動きを提示します。

「喉ちんこの引き合い」の動作

 このように、喉ちんこ(軟口蓋なんこうがい)を“下げるための筋肉”と“上げるための筋肉”、それぞれ反対方向に動く筋肉を同時に働かせる作業です。上下方向の“綱引き”のような動きになります。そうすると喉ちんこは“ピンっ”と引っ張られて“ハリ”が生まれます。“ハリ”が作られた時点で“歌声が抜ける”症状はほとんどの場合治まりますが、この“喉ちんこのハリ”“声帯のハリ”から“声のハリ”、そして次の段階の“声のツヤ(倍音ばいおん)”へと繋がっていきます。
 「倍音」は“声の煌びやかさ・華やかさ”に現れるので、今回の「喉ちんこの引き合い」は“抜ける”症状の改善以上の、“声色こわいろ/音色磨き”の意味合いも含んでいます。

喉ちんこの引き合いの強さ

 “喉ちんこのハリ”が目的なら場合によっては“軽く”喉ちんこの引き合いをすればOKだったりします第15回:重要回「声が張り付く」の治し方を徹底解説!で紹介したのは、発声準備のために用意する“それなりの”「喉ちんこの引き合い」でした)が、今回のように“声のツヤ出し”=倍音ばいおん生成を目的にする場合は“強く”喉ちんこの引き合いをする必要があります。

 この強力な喉ちんこの引き合いを練習できる発音が「ん~ぎー!/ng~giー!」です。

①共鳴量「少」で練習 ②共鳴量「中」で練習 ③共鳴量「多」で練習

 これは「喉ちんこ下げ&喉ちんこ上げ」をする作業になります。「……どっちやねん!」と思った方、「どっち“も”」やるのです。

ツヤ出しには「喉ちんこ下げ&喉ちんこ上げ」

 「ん~ぎー!/ng~giー!」の発音は「喉ちんこ下げ&喉ちんこ上げ」の作業になりますが、分解すると以下のようになります。

「ん~/ng~」の発音部分が喉ちんこ下げ作業で、

「ぎー!/giー!」の部分が「喉ちんこ上げ」です。

重要ポイント1:タイミングと時間

 ここで重要な1つ目のポイントは喉ちんこを下げ“ながら”喉ちんこを上げる」ということです。あくまで同時進行が重要で、「喉ちんこ下げ」と「喉ちんこ上げ」の作業が別々になっては意味がありません。以下の動画で前者と後者の状況を提示します。

①成功例:喉ちんこを下げながら上げる ②失敗例:上げる時に下げる動画”抜ける“

 同時進行をしないと「喉ちんこの引き合い」にはならず、後者の作業では“抜ける”発声になってしまいます。実際の綱引きに例えると、片方の人が強く引いた時に反対側の人が綱から手を離したら?……“すっぽ抜け”てバランスを崩すのと同じです。

重要ポイント2:パワーの強さ

 この“声のツヤ出し”=倍音ばいおん生成を目的にした「喉ちんこの引き合い」の時は、「喉ちんこを下がった位置/上がった位置に取る」こと以上に「喉ちんこを下げる筋肉/上げる筋肉を強く働かせる」ことに意味があります。動画のように、両サイドから喉ちんこを引っ張るパワーが強ければ強いほど、倍音は多く生成されます。つまり「=強い地声が出る」と思っていてOKです。後で触れますが豊かな倍音こそ「地声の成分」そのものです。

喉ちんこを引き合うパワーが強ければ倍音が多く生成される

 「喉ちんこの引き合い」の仕組みの説明はここまでです(‘ω’)ノ。


「ん~ぎー!/ng~giー!」のコツ

 次に、前回・今回とエクササイズに使った発音「ん~ぎー!/ng~giー!」の練習の細かいコツについて説明しようと思いましたが、また長くなってしまいましたので、今回はコツの見出しだけを紹介してまた次回へ持ち越したいと思います_(:3 」∠)_。

「ん~ぎー!/ng~giー!」のコツ

①「ん~」は力強く「喉ちんこを降ろす/鼻にかける」
②「ん~」から「ぎ」は瞬間移動
③「ぎー!」は鼻にかけつつクリアに
④喉仏や舌は上げて練習する
⑤声帯には力を入れない!力を入れるのは?


 それから、発声の調整アイテムは、これまで紹介してきたものを含めこのようなものがあります。

喉仏のどぼとけ下げ(第12回)」
「喉仏上げ(未執筆)」
「喉ちんこ下げ(第13回)」
「喉ちんこ上げ(第14回)」
「鼻にかける(第20回)」
「鼻に溜める(第21回)」
「鼻に通す(未執筆)」
「鼻を鳴らす・鼻に当てる(未執筆

 次回はこれらの発声動作についても整理しながら、今回の課題である『”声のツヤ“出し=倍音生成』を更に詳しくトレーニングしていきましょう(‘ω’)ノ。

次回予告

 ということで次回、第23回は“声のハリ”“声のツヤ”を作ることができる「喉ちんこの引き合い」の~補足版②~をお届けします(‘ω’)ノ。

声が抜ける発声改善トレーニング一覧
(1)声帯を閉じる筋力UP:第18回
(2)お腹に力を入れる:第19回
(3)こめかみを上げる:第19回
(4)鼻にかける:第20回
(5)鼻にためる:第21回
(6)喉ちんこの引き合い:第22回
 追加①⇒「喉ちんこの引き合い」を模型で説明:第23回(今回)
 追加②⇒「喉ちんこの引き合い」=「鼻を鳴らす」:第24回に予定
(7)子音の圧縮/表情筋の稼働=声を集める
(8)腹式呼吸(腹圧UP+呼気圧UP)=声量UP
(9)大胆に発声作業をする

本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

本コラムの記事一覧

その他のコラム

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!