【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第4回【目と耳で理解!】歌い方の種類と印象をまとめて紹介!part1/5 -音高変化編-

2024.02.28

第2・3回の要点|【歌で大事なのは?】理論vs感覚

・歌は感覚だけでも歌えないことはない。
・「天才」でなければ「秀才」を目指そう。
・天才以外は歌う際に理論と感覚、どちらも必要。
・「基礎」の段階では理論が感覚を矯正してくれる。
・「表現」の世界では感覚が理論の存在を上回る。
・表現では基礎や理論ではなく、感動が先立つようにすべき。
・「表現」とは「どう歌うか/どんな歌い方をするのか」。
・「感覚」⇒「理論」⇒「感性」⇒「技術」の順。
・「感性/センス」は「歌い方」で発揮する。

 tOmozoです。第3回までは歌における「理論と感覚」について、その関係性と重要性をお話してきました。

「歌い方」の種類をまとめて紹介!part1/5

 第4回の今日は、あなたの「感性/センス」で選ぶことができる「歌い方」について解説します。歌い方にはどんなアイテムの種類があるのかを、動画サンプルと一緒に「その歌い方に抱くであろう印象」とともに紹介していきます(‘ω’)ノ。それぞれの練習方法などはまた後日詳しく徹底解説しますので、わからないところがあってもご安心ください。これらの中にはカラオケの採点でよく見るものもあると思いますが、カラオケ機械では読み取れないだろうものもたくさんあります。(AIが発達すればもしかしたら全部の要素を判断できるようになるかも?)。

動画サンプルの見方

動画サンプルの見方

 動画サンプルでは、上から順番に①音声波形はけい(音の大きさ/音量がどう動いているか)、②ピッチ曲線きょくせん(音の高さ/音程がどう動いているか)、③フォルマント表(音のトーン/音色おんしょく声色こわいろの成分)を目で見ることができます。

 ①②については目で見るとわかりやすいですが、③のフォルマントに関しては、見たからといって「わかる」ものではありません。音が持つ要素の中で「音色」だけは明確に視覚化できないものだからです。声色の違いに気が付くには自分の耳だけが頼りになりますので、細かい耳になるように鍛えていきましょう。

 上の例では3つすべて表示していますが、実際には歌い方のアイテムごとに必要な部分だけを表示していきます。サンプルで歌ったのは「きらきら星」のメロディです。

音高変化による「歌い方」一覧

 表情を付けるアイテムとしてカラオケ採点でも一般的なのは「音の高さに変化を加えること」ですが、まずは「音程に変化の無い状態=棒読みの歌」を確認してみましょう。このサンプルでは5つの声色こわいろで棒読みのきらきら星を歌っていますが、聴いてのとおり、声色が変わるだけでも印象はだいぶ変わります。ので、公平な比較をするために、今回の記事で紹介するサンプルは基本的にはひとつめの発声(下記動画の0秒〜5秒の部分)を基調としてみました。筆者が発声できるレンジを10段階としたとき、地声成分(声門閉鎖せいもんへいさ)は「6~7程度の強め」で、声色の深さ/トーンは「5~7程度の深め」です。

「きらきら星」を棒読みで歌唱した5パターンのトーンを比較

それではアイテムをグループ分けしながら洗い出していきましょう。

⑴「しゃくり」

 音程のずり上げ。「しゃくりの長さ・深さ」はコントロールできるし、声色の変化と組み合わせると「粘り気、柔らかさ、躍動感、重たさ、けだるさ」などを表現できる。

音高変化による「歌い方」/「しゃくり」
(“長さ・深さ”によるパターン分け:①中間・深め ②短め・浅め ③長め・深め)

⑵「つまみ※」

 ※これは一般的に呼称が付いていないので筆者が呼んでいるものです。「しゃくり」の動きの上下反転バージョン。下に降りたがっている音を「上からつまんでからパッと離す」動作のイメージ。「フォール」は音の終わりを降ろすのに対して、「つまみ」は音の始まりを降ろす点で、このふたつを区別している。

音高変化による「歌い方」/「つまみ」(みんな使ってね)

⑶「フォール」

 次の音に向かって、もしくはフレーズの終わりでピッチを滑らかに下ろす。「柔らかさ、脱力感、浮遊感、重たさ」などを表現できる。

音高変化による「歌い方」/「フォール」

⑷「ライズ※」

 ※これも巷では名前が付いていないもの。次の音に向かってピッチをゆっくり上げるものを、筆者は「ライズ」と呼んでいる。これは「フォール」の上下反転バージョン。「しゃくり」がその音の始まりを上げるのに対して、「ライズ」はその音の終わりを上げる点で、このふたつを区別している。

音高変化による「歌い方」/「ライズ」(みんな使ってね)

⑸「先打ち※」

 一般的に無意識下でもよく使われるが、これも明確な呼称がないため命名。フォールをやろうとしたとき、フォールになり切れずに次の音程に早く落ちてしまうことでもこの形になる。この場合はフレーズの緊張感が早く消えてしまうので「もったいない」印象にもなり得る。

音高変化による「歌い方」/「先打ち」(みんな使ってね)

⑹「ビブラート」

 サンプルではビブラートの波の細かさ(正確には周期と振幅と言う)などの違いでパターン5つを用意した。「躍動感、揺らぎの心地よさ、緊張/緩和、せわしなさ、しつこさ」などの印象を与える。フレーズによってはビブラートをかけたほうが良いところと、かけないほうが良いところがある。

音高変化による「歌い方」/「ビブラート」5パターン

⑺「フェイク/こぶし」洋楽/演歌

 洋楽と演歌でニュアンスは違うものの、音の装飾をすることには変わりはない。「音の動きによる面白さ、自由感」など。使いすぎると「感情的」よりは「技巧的」な雰囲気が強くなる。

音高変化による「歌い方」/「フェイク/こぶし」

……

 さて、今回も長くなってきたのでこれ以降は「歌い方まとめて紹介シリーズ」として全5回/part5に分けて紹介していきます。それぞれのアイテムの練習方法や詳しい説明については、また後日改めて記事にしたいと思います。次回part2は音色変化による歌い方アイテムです。それでは次回動画をチラ見せ!してお別れです(‘ω’)ノ。

音高変化による「歌い方」/「ウィスパーボイス・ヘッドボイス・ミックスボイス」

次回以降予告

2.音色変化による「歌い方」の種類(第5回

⑴「ウィスパーボイス、チェストボイス/吐息といき量」
⑵「声色の明るい・暗い、細い・太い/喉頭こうとう位置」
⑶「ファルセット、ヘッドボイス、ミックスボイス/声区せいく
⑷「ネイザル、トゥワング/鼻音びおん量」
⑸「ハスキーボイス、シルキーボイス ※/もともとの声色」
⑹「擬似ぎじハスキー、がなり/ノイズ量」
⑺「エッジボイス」
⑻「裏返し/ヒーカップ」
⑼「ブレス音の活用(4つ)」

3.音量変化による「歌い方」の種類(第6回

⑴「構成ごとの強弱」
⑵「フレーズごとの強弱」
⑶「音符ごとの強弱」
⑷「クレッシェンド、デクレッシェンド」

4.グルーヴによる「歌い方」の種類(第7回

⑴「フレージング」
⑵「アーティキュレーション」
⑶「2個イチ※」
⑷「文節区切り」
⑸「リズムによるグルーヴ」

5.リズム変化による「歌い方」の種類第8回

⑴「シンコペーション」

6.速度変化による「歌い方」の種類第8回

⑴「タメ」と「走り」
⑵「フェルマータ」

7.テクニック応用表現編!第8回

⑴「モノや動きも表現」
⑵「歌詞なし声だけで感情表現」

本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

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