【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」
tOmozo
第33回:声の「倍音」は作れる!声門閉鎖の上位互換「喉ちんこの引き合い」を解説
2024.09.18
目次
今回は「倍音」作りの基礎を解説
tOmozoです。声の2つの響き=「共鳴」と「倍音」シリーズをお届けしています。前回までは「共鳴」について6回に渡って解説してきました。今回から「倍音」に突入していきます。今日は基本的な倍音の作り方を解説します(‘ω’)ノ。紹介する「喉ちんこの引き合い」は「声門閉鎖」に代わる万能発声アイテムになります。
「倍音」とは?
まず「倍音」の基本的な情報については、このシリーズの初回で音声・動画・イラストを用意して解説していますので、まずはこちらをご確認ください。
関連記事紹介:「共鳴」と「倍音」の基本情報
倍音のサウンド
”鋭くて明るい芯の響き“である「倍音」を多く含んだ発声は以下のようなサウンドになります。
倍音の響きは”明るい“”鋭い“”硬い“、そして”きらびやか“というイメージを持たれるでしょう。
裏声での倍音
裏声での倍音のサウンドを確認しましょう。裏声に分類されているものは「ファルセット」と「ヘッドボイス」の2種類ありますが、ここでは「ミックスボイス」も並べて比較してみます。以下のサンプルのようにそれぞれの声区と倍音の成分が共存可能になります。
①倍音生成を強調して地声裏声移動
②吐息重視のファルセット
③ファルセット+倍音生成
④共鳴重視のヘッドボイス
⑤ヘッドボイス+倍音生成
⑥ソフトなミックスボイス
⑦倍音・地声成分多めのミックスボイス
裏声発声であっても、倍音成分を増やすと”派手“な印象になるかと思います。それぞれの作り分けの方法についてはこのシリーズのどこかで詳しく解説しましょう。
次は「倍音生成」の基本的なやり方について詳しく見ていきましょう(‘ω’)ノ。
倍音作りの考え方:原音作りと形の調整
まず、豊かな倍音が作られる条件も、共鳴と同様に2つあると考えてください。
(1)原音での倍音生成
(2)調音での倍音表出
になります。この2つを簡単に例えると、”ひとまず声帯で倍音を量産したら、顎や舌や唇などでいろいろな形にパッケージングして外に出す“ようなイメージです。
共鳴での作り方より複雑に感じることと思いますが、詳しく見ていきましょう(‘ω’)ノ。
(1)原音での倍音生成=声帯でたくさんの倍音を作る
「喉頭原音」とは?
まず『原音での倍音生成』を平たく言うと“声帯でたくさんの倍音を作れること”になります。「原音」とは厳密には「喉頭原音」と言い、「喉頭」とは「声帯」を包んでいるケースのようなものです。なので喉頭原音は“声帯原音”と置き換えて認識してもらってOKです。”声帯で作られた生まれたての声“を喉頭原音と呼びます。
倍音生成には「喉ちんこの引き合い」
声帯で豊かな倍音を作るだけなら課題は1つで「喉ちんこの引き合い」をします。狙う音色はセミの鳴き声やブザーのような「ビィー」というサウンドです。
倍音は声門閉鎖だけでは作れない
実は、発声の基本として重要だと思われている「声門閉鎖」ですが、これを強くするだけでは”悪い地声“になるだけで、逆に響きを押さえつける形になってしまい倍音を潰すことになります。なので良質な発声を叶えるには、意図的な強い声門閉鎖は避け、この「喉ちんこの引き合い」とともに「吐息成分のスピード噴射」をすることによって声帯の動作を稼働させる「ベルヌーイ効果」が必要になります。この複雑に絡み合う仕組みと発声の調整方法については次回詳しく解説します(‘ω’)ノ。
「喉ちんこの引き合い」の作業とエクササイズに関しては、以下の記事にまとめ、詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。
関連記事紹介:「喉ちんこの引き合い」
第22回:重要回「喉ちんこの引き合い」でツヤのある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part6/9】
第23回:-続-「喉ちんこの引き合い」を模型で説明【“抜ける”歌声の改善法 part6-Ⅱ/9】
第24回:-続-「喉ちんこの引き合い」/倍音生成=「鼻を鳴らす」【“抜ける”歌声の改善法 part6-Ⅲ/9】
(2)調音での倍音表出:声が口から出るまでに倍音を強調
水撒きに使う散水ホースは、同じ水量でも出口の形状を変えることによって、ジョロやキリやストレートなどいろいろな水の出方を作れます。『調音での倍音表出』の作業はこれに似ています。これについても倍音シリーズのどこかで詳しく解説することとし、今回は概要だけに留めます。
「調音」とは?
「調音」とは、先述の”生まれたて“の喉頭原音を、舌や唇などで磨いたり形を整えたりして”声の聴こえ方“を仕上げる作業です。つまり「子音」と「母音」を聴き取りやすくする=「滑舌」を良くするための作業となります。
母音それぞれの形で圧縮する
倍音は「母音(日本語なら「アイウエオの5つ」)」と関わりがあります。『調音での倍音表出』の作業は、”顎や舌や唇の形は母音それぞれの形にする“のを大前提とした上で、「顎や舌や唇のどこかで声を圧縮する」と思っていればOKです。声道内のどこかが狭まっていれば倍音は強調され、きらびやかな響きをプラスできる、という算段です。
次回予告
今回は倍音生成の基本的なやり方として「喉ちんこの引き合い」を紹介しました。これはボイトレ界では誰も言及していないだろう筆者独自の提唱になりますが、仕組みを理解して声が変われば、これが“正解”であることが実感いただけると思います。
「倍音シリーズ」の2回目、次回については、今回紹介した「喉ちんこの引き合い」「声門閉鎖」、そして「ベルヌーイ効果」をキーワードに、良質な声門閉鎖で倍音生成を叶える方法について詳しく解説します(‘ω’)ノ。
本コラムの執筆者
tOmozo
岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。
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