【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第18回:声帯を閉じる筋力UP【“抜ける“歌声の改善法 part1/9】

2024.06.5

~力強い歌声へ!~声帯を閉じる筋力UP

 tOmozoです。今回は声帯せいたいを閉じる筋力をUPするためのトレーニングをしましょう。「声帯を強く合わせること」は、力強い発声を叶える条件の1つです。第17回:歌声が「抜ける」原因と力強く鍛えるボイトレ9選のうち、1つ目のメニューを詳しく解説する内容になります。

声帯を閉じる筋力UP
【声帯を閉じる筋力UP】

特に息漏れが多い人向け

 “歌声が抜ける”症状のうち、今日のメニューは特に「息漏れが多い発声」が気になる人向けのメニューです。


仕組みの理解とトレーニング

いじる器官は声帯

 専門用語でまとめながらトレーニングを進めていきましょう。声が最初に作られる器官であり、発声において最終的にコントロールしなければならないのは「声帯せいたい」です。イラストで確認しましょう。

いじる器官は声帯
【いじる器官は声帯】

息を吐くとき・声が出ているとき声帯の動きは?

 息=「呼気こき」だけを吐いているとき、声帯は息を通すために開きます。

 ①まずは息だけを吐いてみてください。

 ②次に無意識に「あ~」と発声してみます。

①息だけ吐いてみる ②無作為に「あ~」と発声

 発声しているとき、声帯は閉じ気味になっていて、息が声帯に当たることで声帯が振動をし声が作られます。“摩擦で音が鳴る”と思っていても問題ないでしょう。声帯と息で摩擦音を作るには、“呼気が閉じ気味の声帯に当たってこすれている”必要があります。

息漏れが多い人は声門閉鎖圧が弱い

 “声帯を閉じること”を「声門閉鎖せいもんへいさ声帯閉鎖せいたいへいさ)」と言い、″声帯を閉じる力”は「声門閉鎖圧せいもんへいさあつ」と言います。息漏れが多い発声は、声門閉鎖圧が弱くて声帯が開き気味になるために起こります。吐く息の量や強さ・速さである「呼気圧こきあつ」に「閉鎖圧」が負けてしまっている状況です。

声帯と息の通り抜け
【声門閉鎖と息の通り抜け】

 そうすると、いわゆる「ウィスパーボイス」や「ファルセット」というような息漏れの多い発声の分類声区せいくと言います。前者は地声の音域での呼び方、後者は裏声の音域での呼び方と思っていてOkです。)になります。これを実感するために、まずは意図的に息を多く混ぜながら発声してみましょう。

①不安定なウィスパーボイスを再現 ②声門閉鎖でバランスを取ったウィスパーボイス

 川に例えると、護岸工事が不十分で土砂が流出をしてしまっているような状況です。①水の流れ/息の流れを一定に安定させるため、②土砂/無駄な息の流出を防ぐため、両岸から護岸を補強するのが声門閉鎖だと思うと良いでしょう。

 「ウィスパーボイス」や「ファルセット」は、悪い状態を示す言葉として使われる場合もありますが、本来コントロールをして積極的に活用するべき発声です。

一番強い声帯の働きと音声は?

 声帯が一番強い力で閉じている状態を確認しましょう。少し不謹慎ですが、誰かにお腹をパンチされているシーンを想像して「ヴッ!」と苦しそうな声を出してみてください。

①苦しそうな「ヴッ!」 ②「ア゙ー」で長めに発声

 これが最も声門閉鎖圧が強いときの音です。声帯の扉が強く閉まっているので、息は“抜ける”ことがことができずに声帯の下に溜まります。か弱い発声を鍛えるには、この強く閉じる力を足しながら発声していけばいいのですが、これはやり過ぎであり、いわゆるのどめ声」と呼ばれます。

声門閉鎖の力加減の練習

 ということで声門閉鎖にも力加減が必要になってきますので、呼気圧と閉鎖圧のバランスを取る練習をしていきます。以下のイラストのように「チェストボイス(強い地声)」と「ウィスパーボイス(ささやき声)」のグラデーションを作るトレーニングをします。

ウィスパーのバランス11段階
【ウィスパーのバランス11段階練習】

 このエクササイズについては、第11回で丁寧に説明していますので、以下のリンクからご確認ください(‘ω’)ノ。第11回では「脱力」がテーマになっていますが、バランスを取る作業は同じメニューです。今この記事をご覧の読者さんは「増力」が課題ですので、強い発声の方を時間をかけて取り組めばOKです。

第11回:「喉詰め声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part1/6】


次回予告

 最後に気を付けてほしいのは「声帯をダイレクトにいじる作業はいわゆるのどめ声になるリスクを上げる」ということです。なので「発声作業はまず”声帯以外に“頑張ってもらう」のが原則になります。ということで(2)以降のメニューを用意しましたので、次回以降もお付き合いください(‘ω’)ノ。

声が抜ける発声改善トレーニング一覧
(1)声帯を閉じる筋力UP:第18回に完了
(2)お腹に力を入れる:第19回に予定
(3)こめかみを上げる:第19回に予定
(4)鼻にかける
(5)鼻にためる
(6)喉ちんこの引き合い
(7)子音の圧縮/表情筋の稼働=声を集める
(8)腹式呼吸(腹圧UP+呼気圧UP)=声量UP
(9)大胆に発声作業をする

本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

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