【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」
tOmozo
目次
喉仏の上がり過ぎを治そう
第11回では歌声が詰まる原因6つのうち、1つ目の「喉詰め声」を紹介しました。今回は2つ目の(2)「喉仏」の「上がり過ぎ」=「ノド上げ声」を扱います。最後のトレーニングまでお付き合いください(‘ω’)ノ。
“キンキン声”や“平べったい声”の原因は喉仏?
いわゆる”キンキン声”や“平べったい声”は、喉仏が上がることによって起こる発声の問題です。でもこれにはいろいろ条件が付きます。
喉仏の上がり過ぎは完全悪ではない
まず大前提から申しますと、”喉仏は上がっていても良いもの”です。”明るい声”や”軽い声”、”かわいい声”なんかは喉仏をある程度上げていないと作れません。ではなぜ悪いイメージを持たれるのか?、何が問題になってくるのか?……
この点から整理したい人は、筆者ブログ【完全版!】のほうで、以下に紹介したトピックについて徹底解説していますのでそちらをご覧ください。
・喉仏が上がっている+突っ張ったらそれは悪
・”キンキン声”や”平べったい声”になる条件
・「喉声」は「ノド詰め声」と「ノド上げ声」
・「声帯詰め声」は横方向で「喉頭上げ声」は縦方向
・喉仏を下げるとどんな声に?
【完全版!】「喉上げ声」を徹底理解したい人向けのお話。
解決策は「喉仏を下げる+α」
解決策のメインは「喉仏が上がっているのなら下げれば良いじゃない」なのですが、個人の症状によってはそれだけでは治らない場合があります。その+αの部分は個人で対面レッスンをしないと特定できないことですので、今回は誰にでも共通する「喉仏を下げる」部分を扱います。それでは仕組みの理解と一緒にトレーニングメニューを進めていきましょう(‘ω’)ノ。
喉仏を下げるコツいろいろ
喉仏の位置コントロールは、声帯の開閉コントロールのように”息”という分かりやすい物理的なアイテムを用意できないので、難しく感じる人が多いです。ひとつずつ試してみてください。
(1)顎を下げる
母音(あいうえお)の中で一番顎が下がるのは「お/o」です。各母音を顎を下げ気味に調整して発声します。「お/o」の響きを借りるために「おう、おぅい、おあ、おぁえ」の練習も効果的です。(2)ととに、気道の狭さが原因となって”歌声が詰まる”場合にも有効なメニューです。
(2)唇を伸ばす
母音の中で一番唇が伸びるのは「う/u」です。口角を伸ばすと筋連動により喉仏は下がりやすくなります。特に「い/i」や「え/e」は唇を伸ばした先で口角を横に引くような調整作業をしてみてください。それから、鼻の下を伸ばして上の前歯と唇を離そうとする作業も有効です。”声の伸び”を作りたいときにも手助けになる動作となります。
(3)舌の付け根を下げる(舌先は上げる)
舌の付け根である「舌根」は筋肉を介して喉仏と繋がっています。舌全体を下げる意識も有効ですが、この方法では問題が発生するリスクもありますので、おすすめの方法は「舌先を上げる」ことです。そうするとシーソーと同じ要領で舌根が下がってくれます。英語の「r」の発音に近くもなりますね。”歌声がこもる”側面はあるものの、”シックな声”、”まろやかな声”になります。特に”キンキン声”の中和剤として有効です。
(4)深呼吸→あくびで声道を広げる
4つめに紹介したものの、これが初心に立ち返った方法です。深呼吸やあくびの状態を再現することで、喉仏は自然に下がり、脱力状態も誘発してくれます。一番深く吸った段階で軽く息を止め、そのポジションをキープして、そのまま発声してみてください。生理的な身体の動きの再現は無理のない自然な動作になりやすいです。この作業直後の発声はウィスパーボイス気味になるので、過剰な声門閉鎖が問題である”ノド詰め声”の症状もある人には特に有効です。
(5)唾を飲み込む動作
そもそも何かを飲み込むときには、喉仏は必ず一度下がるものです。その瞬間をキープしようとする意識も有効です。タイミングとしては飲み込む動作をした直後が一番深くなっているはずですので、飲み込んだ直後に「あ~」と深い声を出そうとしてみてください。これも生理的な身体の動きを利用したエクササイズになりますが、(4)と違ってアクティブな動作になるので、声門閉鎖は強めになりやすいです。なので”深くも力強い声”を目指している人には特に有効なメニューです。
(6)共鳴の響きで内側から押し広げる
”広がりのあるウェットな響き”である「共鳴」を作ろうとすることで、身体の内側から声道を押し広げるようなアプローチで喉仏を下げることができます。共鳴の詳しい説明は省きますが、響きを作りやすい発音は重たく「daba」で、あくびと鼻詰まりが共存したような音です。それから”オオカミの遠吠え”がモノマネしやすいです。ちなみに少し「r」の位置を取ると、もの凄くオオカミっぽくなりますよ。特に”平べったい声”を立体的にさせる膨張剤として有効です。
(7)喉ちんこは上げる
実は”喉仏が下がること”と”喉ちんこが上がること”は深い関連があります。詳しい説明はまたの機会にするとして、喉仏を下げることを目的とした”喉ちんこ上げ”の作業で有効なのは「吸気発声」です。息を吐いたら(6)の「daba」を用意して息を止め、吸い上げるような動作をするとサンプルのような音声が鳴ります。このとき、喉ちんこがめいいっぱい上がるだけでなく、喉仏もかなり下がります。”声の張り”や”声のツヤ”を作りたい場合にも有効です。
(8)最終的には筋肉で下げる「ッウ!~」
喉仏を下げる筋肉は、喉仏から鎖骨の上に向かって付いています。この筋肉を作動させるためには、これまでのメニューを意識をしつつ、鎖骨あたりに向かって声を太くする意識で発声します。筋肉を作動させるには、ある程度の力が必要になりますので、過剰に働かないように力加減が重要になります。ですのでこのメニューは最後に書いています。テニス選手が打球する時の「ッウ!~」はこの筋肉の作用を誘導しやすいです。
これらのメニューを繰り返しやっているとだんだん喉仏を下げるのが上手くなってきます。あとはこれを色々な音域に拡大させて練習していきましょう(‘ω’)ノ。得意になると、動画のように無音でも自力で素早く動かせるようになります。
今日の終わりに
これらのエクササイズは他のトレーニングメニューでも出てくる部分になりますので、今回上手くいかなくても、いろいろなボイトレをこなしながら、地道に頑張っていきましょう。
次回予告
次回第13回では、第10回「歌声が詰まる原因6つ」の3つ目で紹介した(3)「喉ちんこ」が「上がり過ぎ」=「息・鼻が詰まる」について解説していきます(‘ω’)ノ。
本コラムの執筆者
tOmozo
岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。
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