【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第29回:「共鳴」をヘッドボイスで極める!共鳴量による感覚の違いを可視化

2024.08.21

共鳴をヘッドボイスで最大量作る

 tOmozoです。声の2つの響き=「共鳴きょうめい」と「倍音ばいおん」シリーズをお届けしています。今回は「共鳴」の作り方を、裏声の1つである「ヘッドボイス」と絡めて解説していきます(‘ω’)ノ。なぜかと言えばヘッドボイスが共鳴作りに大きな役割を果たすから、そしてそもそも共鳴こそが裏声を完成させる成分だからです。

 今回は「共鳴を最大量作る」ことを目的にしていきながら、共鳴量の違いによる身体的な感覚を段階的にイラストで可視化します。最終的には共鳴の量は“お好み”なので、たくさん作っても邪魔になることもあります。でも“大は小を兼ねる”とも言いますので、場面に応じて大から小まで共鳴量を自由自在にコントロールできるようにしましょう。


ヘッドボイスとは?

発声の分類「声区」

 まず「ヘッドボイス」についてです。まずは以下の「声区表せいくひょう」をご確認ください。「声区せいく」とは簡単に言うと“発声を地声裏声と声帯の開閉度合で分類したもの”です。

発声の分類「声区」

ヘッドボイスの特徴

 ヘッドボイスのサウンドは「オオカミの遠吠え」に似ています。理論的な特徴は声門閉鎖せいもんへいさが強めの裏声で、息漏れが少ないことから結果的に共鳴の響きが作られやすい」ところにあります。これは逆に言えば「裏声で共鳴の響きを綺麗に作ることができたなら、それは完全なヘッドボイスである」ということです。

①ファルセット ②ヘッドボイス ③オオカミの遠吠え

 なので筆者はヘッドボイスのレッスンをする際には、共鳴の練習を徹底的にやってもらいます。理由は、①ヘッドボイスの発声に必要な「強めの声門閉鎖、息漏れの防止」が共鳴の中に自然と含まれているから、②共鳴ができている感覚を体感するのに地声より裏声の方が分かりやすいから、です。

ヘッドボイスで共鳴MAX

 このヘッドボイスを利用して「共鳴量を最大量作れるようになる」ことを目指しましょう。第28回では基本的な共鳴作りについて以下の発声作業を紹介しました。

(1)共鳴腔きょうめいくう拡大

喉仏のどぼとけを下げる(第12回
・喉ちんこを上げる(第14回

(2)共鳴腔充満

・鼻に溜める(第21回
・喉ちんこの引き合い(第15回第22回第23回第24回

 今回は、共鳴量を“最小から最大まで”段階的に増やしていく時に、それぞれの段階で体の感覚がどうなるのかをイラストで可視化しつつ、上記の作業がどのように関わってくるかを解説します。


身体で感じる共鳴の感覚をイラストで

 それでは共鳴量の違いによる感覚を以下のように4段階にして、イラストで可視化していきます(‘ω’)ノ。

(1)共鳴量「少」
(2)共鳴量「中」
(3)共鳴量「多」
(4)共鳴+地声成分

 まずは4段階それぞれの音声サンプルを用意しましたので聴いてみてください。

①共鳴量「少」 ②共鳴量「中」 ③共鳴量「多」 ④共鳴+地声成分

(1)共鳴量「少」:共鳴のはじまり

 まず共鳴は鼻先から溜まっていくのを感じることができます。ここが共鳴の重心になります。少ない共鳴量を扱う場合、それを共鳴腔きょうめいくういっぱいに薄めて広げるのではなく、鼻先から順番にセットしていく感覚がコツになります。

(1)共鳴のはじまり

 この時主に必要になる発声作業は「喉ちんこの引き合い」から「鼻に溜める」です。少ない共鳴量なら喉仏のどぼとけがそこまで下がっている必要はありません。喉ちんこは上がり気味である必要がありますが、その上がり具合の位置や強度は「鼻に溜める」の作業でちょうど良く用意できます。

(2)共鳴量「中」:共鳴量5~6割ほど

 共鳴が充分に作られている時は、鼻先から広がり、頭蓋骨の輪郭の大きさと同じくらい共鳴が広がっている感覚を得ることができます。ポップスでは一番実用的な共鳴量と言えるでしょう。

(2)共鳴量5~6割ほど

 (1)に加えて「喉仏を下げる」「喉ちんこを上げる」作業を意識します。ただ(1)が上手く行っているならば「喉ちんこを上げる」作業はそれ以上必要ないケースが多いです。

(3)共鳴量「多」:共鳴量MAX

 更に共鳴腔の拡大と充満を図って、喉仏を最深部まで下げることができたならば、頭蓋骨の輪郭をはみ出して鎖骨さこつ周辺まで広がった共鳴の響きを、良い意味での“重たさ”と共に感じることができます。

(3)共鳴量MAX

 “重たさ”が加わったことによって共鳴の重心は下がりやすくなります。下がると色々な発声トラブルの可能性が出てきますので、「こめかみを上げる」作業などを補充して共鳴の輪郭の上辺が落ちてこないように気を付けましょう。

(4)共鳴+地声成分:地声での共鳴作り

 上記3つは裏声での共鳴作りの感覚ですが、これが地声になるとどうなるでしょうか?最終的には裏声でも地声でも同じように共鳴を用意することができますが、身体的な感覚は結構変わります。これまでの共鳴の感覚に地声の成分が加わると、鎖骨周辺や声帯にこれも“重たさ”と言えるある種の“負荷”を感じます。地声なので声門閉鎖せいもんへいさは強めになり、裏声よりパワーがかかるものです。(ただし“良い地声の負荷”“悪い地声の負荷”がありますのでこれについてはまたの機会に)

(4)地声での共鳴作り

 これが共鳴の練習を裏声でやった方が良い理由になるんですが、“共鳴の重たさ”と“地声の重たさ”はどちらも鎖骨の上周辺で感じるものなので、両者を混同してしまったり分離できないケースが多く見られます。なのでピュアな共鳴を実感するためには、地声(チェストボイス)が届きづらい音域で、裏声(ヘッドボイス)で練習すると成功しやすいのです。

 ……今回は以上になります(‘ω’)ノ。「裏声と共鳴」にまつわる部分や、最大量の共鳴作りについて解説しました。


次回予告

 共鳴シリーズの第3回目、次回は「地声と共鳴」にまつわる部分や、根本的な発声動作に関わる最小限の共鳴『マストの共鳴』について解説していきます(‘ω’)ノ。

本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

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