【連載】「理論・感覚・考え方も磨くヴォーカルトレーニング」

tOmozo

第20回:「鼻にかける」で粘り気のある歌声に【“抜ける”歌声の改善法 part4/9】

2024.06.19

力強い歌声へ! ~ 声に弾力性をプラス

 tOmozoです。今回はボイトレでよく耳にする「鼻にかける」トレーニングを紹介します(‘ω’)ノ。歌声に粘り気を与えてくれるこの作業は、力強い発声を叶える条件の1つです。第17回:歌声が「抜ける」原因と力強く鍛えるボイトレ9選のうち、4つ目のメニューを詳しく解説する内容になります。

声を鼻にかける
鼻にかける

特に声が散りやすい人向け

 「声が散る」とは、”息が漏れ過ぎる“状況や、”声がカサカサする“”深くはなるけどスカスカな感じ“のようなことを言い、今回の大きいテーマである「声が抜ける」症状のひとつになります。声の芯を中心に向かって練り込む“餅つき”のような作業である「鼻にかける」は、これらの声が散る症状を改善してくれるアイテムになります。

鼻にかかる、鼻にかける、位置と筋力

 以前、“喉ちんこが上がり過ぎ”たことによる「息・鼻が詰まる」症状の対処法として、「鼻にかける」エクササイズを紹介しました。この記事の最後でそれをあらためて紹介するとともに、今回のエクササイズとの性質の違いが“位置と強度”にあることや、「鼻にかかる」「鼻にかける」について解説した関連記事をまとめて紹介します。


鼻にかけるトレーニングメニュー

 それでは実際のエクササイズと、効果がある理由を簡単に説明しながら進めていきましょう。前半の3つ目までは筋力のパワーアップが目的ですので、全体的に強めの発声で明瞭な発音を心がけてください。何か問題が発生するまでは積極的に増力していきましょう。

(1)「na(n)/な(ん)」「nga(ng)/ンが(ん)」

 「な/n行」は子音しいんの「n」は「鼻音びおん」なので自然に鼻にかかります。発音をな行にするだけで粘り気のある声を作るための筋肉を刺激しながらトレーニングできます。ですが、もっと効率的に鼻にかける練習をするなら「ンが/ng行」の方が効果的です。子音のタイミングだけでなく、後続の母音も鼻母音びぼいんになるように練習します。50音の中でこれを一番実現しやすいのが「ンが/ng行」です。この仕組みについては末尾にて関連記事を紹介します。

(2)「nya(n)/にゃ(ん)」「ngya(ng)/ンぎゃ(ん)」

 (1)の発音に「y」を入れたエクササイズです。「y」は半母音はんぼいんと言って「い」の発音と思っていてOKです。「い」の音素おんそを入れることによって、”鼻にかけたことによるネバネバな粘性だけでなく、明瞭でキラキラとした煌びやかさも作る“ことも期待できます。これは専門用語で言うと、”「鼻音びおん」だけでなく倍音ばいおんも意識する作業“となります。鼻音の”もこもこ“”ネバネバ“が気になる人は、(1)を飛ばしてこの(2)で練習して貰ってもかまいません。

(3)「ga(ng)/が(ん)」「ka(ng)/か(ん)」

 「nga(ng)/ンが(ん)」が鼻にかけるのに役に立つなら、「ga(ng)/が(ん)」「ka(ng)/か(ん)」も有効です。理由は分かりますか?……それは口腔こうくう内のベロのどちんこの位置が同じ“だからです。「ga」は「nga」の柔らかさを取った破裂音バージョン、「ka」は有声音である「ga」を軽くした無声音バージョン、になります。この2つは「鼻にかける」とは違いますが、使われる器官は同じになりますので筋肉の瞬発力を鍛える良いトレーニングになります。

……

 この3つは鼻にかける“筋力のパワーアップ”が目的ですが、以下に紹介するエクササイズは鼻にかかった音色を作るために“喉ちんこの位置を下ろす”ことに主眼を置いています。微細な発声コントロールのためにはこちらの方が重要です。

(4)母音の発声で喉ちんこを下ろすのが大事

①完全な「ngハミング」
②少し「あ/a」を足す
③ハッキリした「んが/nga」で
④各母音をなめらかに
⑤「あ」から「ん」へ
⑥「あ」から「ぁん」へ
⑦「んぁ」「ぁん」で
⑧「あっ!」”喉ちんこが上がった“声を確認
⑨各子音をくっ付けて「鼻母音」練習

(5)歌唱中の意識のコツ4つ

①歌詞の間に「ん/ng」を挟めて歌う
②「ん」と小さくハミングを入れてから各音を歌い始める
③母音を歌うときは脳内で「ん/ng」を念じる
④声を“鼻に当てる”作業

これらについては以下の記事で徹底解説していますのでご確認ください(‘ω’)ノ。

第13回:「息・鼻が詰まる感覚」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part3/6】

また、そもそも「鼻にかかる」とは?などの仕組みが知りたい方は以下の記事をご確認ください(‘ω’)ノ。
第14回:「鼻にかかった声」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part4/6】


次回予告

 次回、第21回は“声の湿り気”を作ることができる「鼻にためる」をお届けします(‘ω’)ノ。

声が抜ける発声改善トレーニング一覧
(1)声帯を閉じる筋力UP:第18回
(2)お腹に力を入れる:第19回
(3)こめかみを上げる:第19回
(4)鼻にかける:第20回(今回)
(5)鼻にためる:第21回に予定
(6)喉ちんこの引き合い:第22回に予定
(7)子音の圧縮/表情筋の稼働=声を集める
(8)腹式呼吸(腹圧UP+呼気圧UP)=声量UP
(9)大胆に発声作業をする



本コラムの執筆者

tOmozo

岩手県田野畑村出身。独学で中学1年の時にピアノ演奏、高校時代から作曲を始める。北海道教育大学大学院音楽教育専修修了。在学時から札幌の自宅で音楽教室を開く。2016年より岩手県盛岡市にてNoteOn音楽指導部を立ち上げ、ヴォイストレーニングだけでなく、ピアノ、作曲などのレッスンを行なっており、各SNSでは演奏やレッスンのコンテンツを投稿している。芸能プロダクションでのトレーナー経験があるだけでなく、作曲、編曲の仕事もしており、TV番組やCMソングなども担当。

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