【連載】『ENGAB♡AtoZ』
ENVii GABRIELLA
※本連載は、音楽系エンタメサイト『耳マン』の更新終了に伴い、2024年3月より当サイト『Vocal Magazine Web』にお引っ越ししました。過去の連載記事はこちらをご覧ください!
唯一無二の3人組オネエユニット・ENVii GABRIELLA(通称エンガブ)のメンバーが愛してやまないヒト・モノ・コトについて、アルファベットのAからZを頭文字に始まるキーワードで紹介していく連載『ENGAB♡AtoZ』。第24回はKamusが“X”を担当し、 “X DAY”をテーマに、自身の人生の分かれ道になった日を振り返ります。
【X】Kamusの運命が変わった最初の“X DAY”
“X DAY”とは人生において近い未来に重要なことが起きる日、計画の決行日などを指すらしいです。
今回は過去の私のX DAYを綴ってみようと思います。
私が最初に決めた大きな出来事は、ダンサーを目指すためにそれまでの職業である自衛隊を退職したいと上官に話したことです。
もちろん祖母にも相談していたのですが、とにかく心配しながらも応援してくれると信じていたし、“何事も決めるのは自分だから”という教育方針だったので、そこまで緊張はしなかったんですよ。
ただ上官に話すときのことは、何も覚えていないくらい緊張してましたね。
上官と事務室でふたりで話したとき、辞める時期まで具体的に話したかと思います。
そして、その会話の内容はすぐに隊全体に広がりました。
辞めると決まったX DAYまで苦手な上官から冷たい言葉を浴びたり、無視されたりしましたね。
逆に応援してくれる先輩や退職の準備を手伝ってくれる先輩もいました。
本当いろんな人がいるなぁと思いました。
退職する日、所属していた衛生隊の隊員が全員1列になって見送ってくれました。
ひとりひとり握手をしていくなかで、自分の班の班長に「お世話になりました」と言った途端、何かの糸が切れたかのように涙が止まらなかったのを覚えています。
今でも「自分が決めた道だからがんばってね」と、班長や同期の仲間たちに送られたあの日は忘れられません。
その日、意地悪だった上官は最後なのに握手もしてくれませんでした。目の前で「ありがとうございました」と言っている私の顔も見ず、別の隊員を見ていました。
本当にいろんな人がいる。
これから東京という都会に出てなれるかわからないダンサーという夢を追いかける自分にとって、こういう対応をする人はきっとごまんといる。負けてられないんだ。
この上官に次会う機会があったとしたら、「改めて当時はお世話になりました、おかげで東京でもいろいろ乗り越えられました」って言ってやるって思いましたね(笑)。
そして、私のX DAYは過ぎていきました。
ダンサーとして経験した2度目のX DAY
たくさんの出会いのなかで、いろんな仕事をしてきました。
2度目のX DAYはダンサーとして初めての大会にして大舞台である『ダンスディライト』という大会に出場した日。
前にもコラムにも書かせてもらいましたが、ゲイバーで出会った女の子とダンスユニットを組んで小さいイベントで踊ってたんですよ。2、3回イベントで踊ってもっと刺激が欲しくなって大会出たくない?って話になって、調べたときにたまたま見つけたのが『ダンスディライト』というイベントでした。
このイベントで有名になったらいろんな人に私を、私たちを、私たちのダンスを認めてもらえる!
そんな気持ちで応募したのを覚えています。
練習はいつもより長く、そして振り付けはいつもよりキャッチーに楽しく、ふたりでいつまでも踊るんだろうなーって思ってた。
だけど、大会当日。
会場に着いてびっくり。
見たことないくらいの出場チーム数に、いつもの小さいイベントの会場の何10倍もの大きなステージ。完全に出る大会を間違えた。そう思いましたね。
イベント出て踊って楽しもう!って気持ちで応募した私たち。でもそこにはダンスの世界でもっと上を目指している人たちがいたんです。
一緒に踊っていた女の子は完全に精神がやられてしまい、踊れないかもと会場の駐車場で泣き始めてしまいました。
ただ楽しく踊れれば良いと思っていた私たちにとっては、本当に衝撃的な出来事でした。なんとか励まして、出るだけ出て帰るということで納得してくれたその子とふたりでやれるだけのことをしました。
いつもどおりの楽しいを押し付けるダンスと、構成と呼べない構成。そこにいるライバルを全員お客様にして少しでも笑ってもらえる、楽しんでもらえるようにパフォーマンスしました。
パフォーマンス後、司会の人に振り付けをいじられたりしましたが、出場してみて思ったのは「たくさんの人たちに観てもらうのが楽しい!」でした。もちろん勝つことも審査員の話題になることもなかったですが。
いい思い出になりました。
大会後、帰る私たちに声をかけてくれた人がいました。
「私のイベントにも出てみない?」
めちゃくちゃ緊張したイベントから、新たなX DAYに繋がる縁が生まれたイベントになったのです。
3度目のX DAYはエンガブの始まりの日
月日は流れ、縁が縁を呼びエンガブのメンバーとも出会うのですが、特にグループを組むということはなく、TakassyにもHIDEKiSMにも現場で会ったきりでさらに月日は流れていきました。
そんななか、2016年の秋頃にHIDEKiSMから連絡が来ました。
「まだゲイバーで働いてる? 今から飲みに行っていい?」
このとき私はまだゲイバーで働いていたので、懐かしいなぁと思いながら「いいよー」って返事をしてHIDEKiSMとTakassyのふたりが職場のゲイバーに来ました。
正直Takassyはほんの一瞬だけ現場で会話をしただけだったので名前すら忘れてた。まじごめん。
数年前に出会った現場の話をしながらお酒を飲み交わしていくうちに、音楽の話に。
Takassyが作った曲を「ちょっと聴いてみる?」と言われて、ノリで生きてる私は「聴くー」と軽く返事。
このとき聴いたのは『Gimmedalight / ギミダライ』。曲は本格的なクラブミュージックのような感じでめちゃくちゃ好みだった。
そしてふたりは本題に入った。
「私たちグループを組みたくて、そのメンバーとしてカミュの名前が挙がったの。どう? 一緒にやってみない?」
またも私は「やるー」と軽く返事。
そしてその冬から年明けにかけてリハーサルが始まった。しかしグループ名も、特に披露するイベントも決まってなくてリハーサルは次第にダラダラしたものになった。
そして来たるX DAY。
Takassyがリハーサル後、ご飯に誘ってきた。
このグループを作るにあたり思っていること、今のこの雰囲気の悪いリハーサルのこと。
直球で投げてきた言葉に私は悩んだ。
そして最後に、このまま続けるか辞めるか今決めてほしいと。
悩んだ結果、私たちの意見はまとまった。このユニットをやろう。
それが私の3度目のX DAYとなり、エンガブの始まりの日になったのでした。
X DAYと聞くと、なんかドキドキとハラハラが待ってる感じに思うよね。
そしてやっぱり生きていると何度かX DAYと呼べる日がやって来る。
楽しみな日、悪いことが起きるかもな日、いろんなX DAYが来るなかでひとつ言えることは、その日は大事な日で何かが変わる日だということ。
始まったり、終わったり。形はいろいろあるけどね。
今後も生きていくなかでX DAYが必ず来る。
すぐ来るかもしれないし、遠い未来かもしれない。
そのときに怖がらずに“自分の人生”を考えて選択してほしい。選択を間違えてもまた選択はできる。
大丈夫。だって私たち今楽しそうでしょ?
(Kamus)
Kamus(カミュ)
12月28日生まれ、青森県出身。音楽ユニット・ENVii GABRIELLAのメンバーで、YouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』の店子。同ユニットの振り付けを担当している。陸上自衛隊の元隊員で、衛生班・手術班に所属していた。ダンサーの夢を叶えるべく上京し、ショーダンサーやアーティストのバックダンサーをはじめ、バラエティ番組への出演など多岐にわたる活動を経験。TakassyとHIDEKiSMの共通の知り合いであったことから、ENVii GABRIELLAのメンバーとなった。
・Kamus X:https://x.com/NEOkamus1228
・Kamus Instagram:https://www.instagram.com/kamusyuji/
リリース情報
メジャーセカンドミニアルバム『DVORAKKIA』
2024年5月29日(水)リリース
収録曲
1. Mother Ship / Message in a Bottle
2. Portrait of Love / Petal Dance
3. Cherry Pie / Dvorakkia
4. Strangers / Fate
5. 哀恋
6. 僕の名を持つ君へ
7. Sail On
リリース&特典情報
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t14730
ダウンロード&サブスクリプション
https://engab.lnk.to/DVORAKKIA_CD
本コラムの執筆者
ENVii GABRIELLA
ENVii GABRIELLA
Takassy(タカシ)、HIDEKiSM(ヒデキズム)、Kamus(カミュ)からなる唯一無二の“最強オネエユニット”。それぞれ違うフィールドで活躍していた3人が、2017年3月よりユニットでの活動を開始し、2021年10月にメジャーデビュー。バラエティ豊かな楽曲、圧倒的な歌唱力、息の合ったダンス、ピンヒールを着用しての華麗なパフォーマンスが特徴的。“動画で楽しむ新宿二丁目”がコンセプトのYouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』も人気で、約20.6万人のチャンネル登録者数(2023年11月時点)を誇る。
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