【連載】『ENGAB♡AtoZ』
ENVii GABRIELLA
HIDEKiSMが最愛の母に捧げた“涙”「最期の言葉を、私は生涯抱えて生きていく」〜『ENGAB♡AtoZ』第14回〜
2024.06.4
※本連載は、音楽系エンタメサイト『耳マン』の更新終了に伴い、2024年3月より当サイト『Vocal Magazine Web』にお引っ越ししました。過去の連載記事はこちらをご覧ください!
唯一無二の3人組オネエユニットENVii GABRIELLA(通称エンガブ)のメンバーが愛してやまないヒト・モノ・コトについて、アルファベットのAからZを頭文字に始まるキーワードで紹介していく連載『ENGAB♡AtoZ』。第14回はHIDEKiSMが“N”を担当し、“NAMIDA(涙)”をテーマに、最愛の母について綴ります。
【N】HIDEKiSMが最愛の母に捧げた涙
今から15年前のこと。
母が他界しました。
乳がんでした。
「どうしてずっと放っておいたの? このがん20年ぐらいあるよ」
医者に宣告されたあの日のこと。
今でも鮮明に覚えています。
ステージ4の末期がんでした。
末っ子の長男として生まれた私は、母のことが大好きでした。
母も私のことが大好きだった。
母の愛を受け育った私は、何よりも母が最優先。母が喜んでくれるなら、自分がゲイであることを隠してでも母の喜びが第一優先なぐらいマザコンでした。
きっとカミングアウトしても母は受け入れてくれたでしょうけど。
むしろ気づいてただろうな。
結局話せず終わっちゃったけど。
私が小学校5年生のとき、会社経営をしていた父の会社が倒産し、莫大な借金を抱え、夜逃げ。
埼玉の奥地にある祖母の家から、地元・練馬の小学校に2時間かけて通学。
25階建てのマンションの最上階の角部屋に住む裕福な家族が突然、和式トイレの今にも壊れそうな木造アパートへ引っ越すことを余儀なくされ、私は中学で転校。
待ち時間の長いエレベーターを待つ手間は省け、木造アパートの1階の角部屋は忘れものを取りに行くのが楽になりました。
いつも近くにあった空が、いつの間にか遠くに感じたのは、単純に距離が遠くなったからだったんだなって、大人になってから気づいたりしました。
それでも私は楽しかった。
何もかもが新鮮だったし、まるで冒険の始まりのような感覚で、ワクワクさえしてたかな。
それに家族みんなで一緒になって寝られるのが嬉しかった。
お金がなくても、アホみたいなくだらない話をして、いつも家族には笑いが絶えなかった。
お母さんはきっと気が気じゃなかっただろうけどね。
そんな中学時代のある日。
テレビで乳がんの特集が放送されており「胸を触って自己検診してみてくださいね」とタレントがポロリ。
それを観て「お母さん、実はしこりがあるんだよね〜」とサラッとつぶやく母。
「え、冗談でしょ。病院に行きなよ」と伝えるも、金もなく病院嫌いの母は、検査に行くには腰が重く、私も受験やらでそれどころではなくサラリとお蔵入りに。
そして時は経ち、私が高校を卒業したある日、仕事を終え帰宅すると「来年あたりで自分名義の借金をすべて返し終わりそうだ」と嬉しそうに話す母。
母は父の会社の倒産の際、母名義分の借金を背負っていたため、「すごい! 良かったね!」と私も一緒に喜び合っていました。
「良かったね。やっとこれで少しずつ余裕が出てくるかもね」と期待に胸を膨らませ、私もいよいよ歌手として本格的に活動していくぞと思いを馳せていた、そんなある日。
たまたまふたりで観ていたテレビ番組で、またもや乳がんの特集が放送されていました。
「ねぇ。しこりがあるって話、私が中学のときにも言ってたよね? さすがに病院行きなよ」
希望が見えた矢先のことだったからか、さすがの母もやっと重い腰を上げ、検査に行くことに。
結果は”大学病院の紹介状”。
「余命半年です」
宣告された母と私は、泣くこともなくなぜか気丈に振る舞っていました。
「大丈夫。ぜってぇ治してやる。治してみせる」
抗がん剤治療や放射線治療。
さまざまな治療を試みるも、病状は回復することなく、日に日に衰えていく母。
それでも希望は捨てず懸命に治療に専念するも、一向に回復の兆しはなく、入退院を繰り返していました。
「自宅で過ごしたい」という母の意向を汲み、2年3ヶ月の闘病生活の末、姉弟3人に看取られ母は空へと旅立ちました。
泣きました。
人生で1番泣いた。
全身の水分がなくなるほど涙しました。
目だけではなく鼻からも口からも皮膚からも水分が吐出するほど涙しました。
「ありがとう」
会話もままならなくなっていた母が、最期にすべての力を振り絞って言ったその言葉を、私は生涯抱えて生きていくんだろうなと感じました。
なんかすみません。
重たすぎる話で。
今このタイミングでこの話をするかどうか、私自身すごく悩みました。
けどこうしてコラムを書かせていただける機会をいただいた今だからこそ、過去に経験したこの想いを皆様に伝えたくなりました。
乳がんは他のがんより、比較的早期発見で治りやすい病気だと言われています。
しかし自己検診だけでは見つからない可能性ももちろんあります。
このコラムを読んでくださった皆様に、ぜひ乳がんの検査に行ってほしい。
エンガブは女性のファンの方も多いので、ひとりでも多くの方が乳がんへの知識を持ち、あなた自身や、あなたのまわりの大切な人が、1日でも多く、アホみたいにくだらない話ができる毎日を過ごしてもらえたらいいなと思い、文章にすることにしました。
気分を害されたらごめんなさい。
どうか。どうかあなたと、あなたの大切なまわりの人が1日でも多く寄り添っていられますようにと願いを込めて。
(HIDEKiSM)
HIDEKiSM(ヒデキズム)
1月17日生まれ、東京都出身。音楽ユニット・ENVii GABRIELLAのメンバーで、YouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』のチーママ。同ユニットの企画やマーケティングを担当している。2013年にバラエティ番組『笑っていいとも!』内のコーナー『オネエメンコンテスト』で優勝し、同コーナーから輩出された“オネエ系イケメン”5人組グループ・ONEPのメンバーとして約半年に渡りレギュラー出演した。当時からLGBT系アーティストとしての活動を精力的に行っており、2016年にTakassyからユニット結成の提案があったことから、ENVii GABRIELLAのメンバーとなった。
・HIDEKiSM X:https://x.com/HIDEKiSM0117
・HIDEKiSM Instagram:https://www.instagram.com/hidekism/
リリース情報
メジャーセカンドミニアルバム『DVORAKKIA』
2024年5月29日(水)リリース
収録曲
1. Mother Ship / Message in a Bottle
2. Portrait of Love / Petal Dance
3. Cherry Pie / Dvorakkia
4. Strangers / Fate
5. 哀恋
6. 僕の名を持つ君へ
7. Sail On
リリース&特典情報
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t14730
ダウンロード&サブスクリプション
https://engab.lnk.to/DVORAKKIA_CD/
ライブ情報 〜ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2024『DVORAKKIA』
- 6月21日(金)~22日(土):札幌・cube garden *2days
- 6月29日(土):大阪・ZeppNamba
- 6月30日(日):名古屋・ZeppNagoya
- 7月6日(土):福岡・DRUM LOGOS
- 7月14日(日):東京・ZeppDiverCity
本コラムの執筆者
ENVii GABRIELLA
ENVii GABRIELLA
Takassy(タカシ)、HIDEKiSM(ヒデキズム)、Kamus(カミュ)からなる唯一無二の“最強オネエユニット”。それぞれ違うフィールドで活躍していた3人が、2017年3月よりユニットでの活動を開始し、2021年10月にメジャーデビュー。バラエティ豊かな楽曲、圧倒的な歌唱力、息の合ったダンス、ピンヒールを着用しての華麗なパフォーマンスが特徴的。“動画で楽しむ新宿二丁目”がコンセプトのYouTubeチャンネル『スナック・ENVii GABRIELLA』も人気で、約20.6万人のチャンネル登録者数(2023年11月時点)を誇る。
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