【インタビュー】トゲナシトゲアリ 理名(vo)がオリジナルアルバム『棘アリ』をもとに語り尽くす、バンドの歩みと歌の進化

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

歌詞はびっしり書き込む

──ここからはアルバム『棘アリ』について聞かせてください。4月5日からアニメ『ガールズバンドクライ』がスタートし、24日には初のオリジナルアルバムも発売ということで、今はどんな気持ちですか。

理名 とにかく「アニメが楽しみ!」ということが一番にありまして、今後の活動にもたくさん変化が生まれると思いますし、いろんな仕事をしていきたいです。アニメのアフレコは半年ぐらいかけて行ったんですが、やっぱり1話と比べると最終話の成長がすごくて。アニメと一緒にアフレコの成長も観ていただけることが楽しみです。

──声優初挑戦でしたが、アフレコは楽しかったですか。

理名 もう、すっごい……!

──予告編を拝見しましたが、初挑戦とは思えないくらい、主人公・井芹仁菜の雰囲気に声がマッチしていました。

理名 ありがとうございます!

──それではアルバム各曲についてお伺いします。トゲトゲの楽曲は歌も楽器もすごく難しいですが、ヴォーカル面で感じる楽曲の特徴を教えてください。

理名 とにかく早口でテンポが速い!そして上下する音程です。あと、息継ぎと息継ぎの間も全然うまくいかない曲が多くて、曲が増えるたびに「この曲で鍛えられたな」って思います(笑)。

──レコーディングもそれぞれ時間がかかりましたか。

理名 最初の「名もなき何もかも」はかなり時間がかかったんじゃないかなと思います。レコーディング時間が毎回2~3時間ある中で、最近は1時間半~2時間くらいで録り終わるんですが、「名もなき何もかも」はもう時間いっぱいやる感じでした。期間も確か一か月ぐらいかかったのかな。

「名もなき何もかも」

──「名もなき何もかも」は、同じフレーズをいろいろなパターンで録ったと伺いました。

理名 そうですね。「ココもうちょっとこういうふうに歌ってみて」や、「目の前にお客さんがいると思って歌ってみて」というアドバイスをいただいたこともありました。

──レコーディングのときは歌詞に指示を書き込んだりされますか。

理名 もうすごい書き込みました!「名もなき何もかも」や「偽りの理」はびっしり書いてあります。いやぁ、自分で見返してもすごいなコレ……って思っちゃうぐらい(笑)。

──頭の中で記憶するより、一つずつ書き残しておくんでしょうか。

理名 そうですね。そのとき言われたことを忘れないうちに書いています。今は初期の課題曲に関しては意識するところは3割くらいで、7割はクセとしてついているところもあるし、あまり意識しなくても口が慣れてきた感じがします。

──リリース順だと、1st Singleの収録曲が「名もなき何もかも」と「偽りの理」ですね。最初の課題曲ということで、「偽りの理」もハードルが高かったのではないでしょうか。

理名 「偽りの理」は今まで歌ったことがないくらい難しくて……。ゆったりしているので歌いやすそうに聴こえるかもしれないんですけど、逆に難しかったです。当時はこの曲の高音がすごく苦手で、「長い時間ゆったり高い声を出し続ける」っていうことに苦戦したんです。あとAメロがすごく早口なので、リズムが走らないように、楽曲に沿って歌うのが難しかったです。

──続く2nd Singleは「気鬱、白濁す」と「理想的パラドクスとは」です。「気鬱、白濁す」は「みんなでバンド練習を始めてからまず苦戦した曲」というメンバーコメントもありましたが、ヴォーカル面でもバンドならではの難しさを感じましたか。

理名 この曲もキーが高くて苦手意識があるんですが、落ちサビで急にバンドが静かになって、歌とキーボードとギターだけになるんです。「そこでどうやって歌を乗せるか」っていうのは、緊張する場面というか、すごく意識したところです。

── 一方の「理想的パラドクスとは」は特に印象的というか、特段クールな歌唱表現に痺れました。歌い方のアプローチは最初から見えていましたか。

理名 この曲は歌に関してはあんまり苦戦しなかったです。ただ、キーボードソロからラスサビで歌に戻ってくるところで「ヌルッと入らないように」というアドバイスをいただいて、そこは何回も練習しました。

──そして3rd Singeは「爆ぜて咲く」と「黎明を穿つ」。「明」と「暗」と言っていいほどタイプの異なる2曲ですが、どちらもライブ映えしそうです。ただやはり、生歌の難易度が高そうで、実際にライブで歌った手応えはいかがでしたか。

理名 「爆ぜて咲く」はお客さんの人気も高くて一緒に盛り上がれる曲なので、体力の消耗も激しくて(笑)。たくさん動く分、音もブレるし、サビで裏声に瞬時に上がって地声に戻ってくるフレーズが何個かあるんですけど、裏声でビシッと音程を当てるところは毎回不安ではあります。そして「黎明を穿つ」はAメロが私たちの曲の中では一番低いはずなので、この前に高い曲を歌っていたりすると出なかったり……なんだかんだで一番緊張する曲です。

「爆ぜて咲く」

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