【インタビュー】コニー 前編〜“歌ってみた”の人気ヴォーカリストがオリジナル曲を発表するまでの軌跡

取材・文:永島聡一郎(Vocal Magazine Web)
撮影:八島 崇

優しく力強い歌声と明るいキャラクターで人気の歌い手、コニーが2021年11月19日よりオリジナル楽曲のプロジェクトを始動、12月28日には2曲目となる「Wonderful Life」を自身のYouTubeチャンネルで公開した。フィーチャリングヴォーカリストには作詞作曲も手がけたメガテラ・ゼロ、nero、伊礼亮の3人が参加。最高の仲間たちと作り上げたこれからの決意を感じさせる最高にハッピーな楽曲に仕上がっている。

本インタビューでは、“コニー”名義で11年にわたって活動してきた彼が、どのようにして”歌ってみた”を知り、のめり込み、そして現在の魅力的な歌声を獲得したのかについて、たっぷり語っていただいた。しかも後編では、iPhoneでの”歌ってみた”録音にトライ。その動画はヴォーカル・マガジン・ウェブのYouTubeチャンネルにアップさせていただいている。ぜひチェックしてみてほしい。

“歌ってみた”にどハマりした中3の夏休み

──コニーさんが最初に”歌ってみた”を知ったのはいつ頃ですか?

コニー 中学校3年生の夏休みのことでした。2007年ですね。部活が終了してとってもヒマだったので、パソコンでどこかの動画サイトを観ていたら、ドMさんという方がジギルさんという方と2人でコブクロの「桜」をカバーしていたんです。それがとてもきれいなハーモニーとしっかりした音源だったので衝撃を受けたんですよ。“えっ!? この人たちってプロなの? 違うの? どうやって作ってるの!?”って。

それからいろいろ調べてみたら、ニコニコ動画というサイトでJポップのカバーをやってたり、ボーカロイドっていう文化があって、それをカバーして歌うアマチュアの人たちがいるってことを知りました。そして、そういうカバーのことを”歌ってみた”と呼ぶんだということがわかって、どハマりしてしまいました。1日12時間くらいパソコンに張りついてましたね。

──なぜ、そんなにハマってしまったんでしょう?

コニー まったく心当たりはないです(笑)。

──それまで歌ったり、楽器を弾いたりといった経験は?

コニー 父はバイオリンを演奏していましたけど、私自身は音楽的なバックボーンが何もないところから始めました。歌もほとんど歌ったことがなかったくらいです。

──えっ? そうなんですか?

コニー 中学校の合唱コンクールで、隣にいた松田って奴から「お前下手だなあ!」と言われるくらいだったんです(笑)。

──それでも”歌ってみた”にハマってしまったんですね。

コニー とにかく皆が楽しそうだったんですよね。だから、“わー!混ぜてー!”という感覚でハマっていきました。当時、世間一般にはまだそれほど知られていなかったボーカロイドによる素晴らしい楽曲がたくさんあって、それがニコニコ動画などの特定のサイトだけで公開されているというのが、まるで大きな秘密基地のようでしたね。そこではうまいヘタも関係なく、 “僕の音楽を聴け!”みたいなものもなくて、ただただ“楽しそう”だったんです。

2010年2月11日 “コニー”誕生

──”歌ってみた”を観て楽しんでいたコニーさんが、自分でも始めてみたのはいつですか?

コニー 高校1年生の時に一人暮らしを始めたんですけど、そのタイミングで当時住んでいた田舎にあったヤマダ電機に走りました。

──何を買いに?

コニー TASCAMのオーディオインターフェース、US-122です。STEINBERG Cubase LEという録音ができるソフトも付属していました。

──なぜ、それを買おうと

コニー ”歌ってみた”の人たちが、どうやって歌を録っているんだろうと調べてみたら、“え? パソコンで全部やってるの?”ってことがわかり、パソコンで録音するためにはオーディオインターフェースという機械をつないで、そこにマイクを接続するんだってことがわかったので。ですから、3千円くらいのカラオケ用みたいなものですけどマイクも買いました。

─パソコンは?

コニー 中学生の頃は親のパソコンでしたけど、高校に入学した時に自分で買いました。

──最初に録音した曲を覚えていらっしゃいますか?

コニー 『ぼくらの』というアニメのオープニング主題歌「アンインストール」という曲です。当時、アニソンのオケを公開されている方がいて、それで歌いましたね。ネットには公開しませんでしたけど。

──まずは録ってみようと。

コニー そうです。それから3ヵ月くらいは前のめりになって歌ったり、投稿したりしていましたけど、当時はまだ“コニー”とは名乗っていませんでした。それに、まだまだヘタだったんですよね。それで修行しようと思って、”歌ってみた”の人たちが集まる招待制のWebサイトに入り、みんなで切磋琢磨したりしていました。

──では、コニー名義での初投稿というと?

コニー 2010年2月11日です。曲はDECO*27さんの「キミ以上、ボク未満」という楽曲をカバーさせてもらってたんですが、たまたまDECO*27さんご本人の目にとまって、Twitterでリツイートしてくださったんです。そこから、“コニー”というインターネット・ミュージシャンの人生が始まりました。

歌の上達に絶対必要なのは“録音して聴き返す”こと

──コニー名義で活動を開始した当時の使用機材はどんなものでしたか?

コニー オーディオインターフェースは最初に買ったUS-122を愛用していました。ただマイクだけは中古品のAKG C3000を購入しました。いろいろ勉強していくうち、 “どうしたら音がもっと良くなるんだろう?”と思うようになり、マイクを変えたくなったんです。

──コニー名義で投稿を始めるまでに、ヴォイストレーニング的なことも実践されたのでしょうか?

コニー ヴォイストレーニングの教室に通ったりはしなかったんですけど、おうちで録音したり、カラオケに行って録音することで、まずは自分の声に慣れるというところから始めました。歌う上ではピッチやリズムも大切ですけど、私はまず“発声”だなと思ったんです。“どうやったら声をプロっぽくできるだろう”、 “それっぽく聴こえるんだろう?”ということですね。それをチマチマ研究していきました。録音したものを聴くと、“あ、ここのニュアンスがちょっと違うな”とか、いろんなことに気づけるんですよね。

──自分の声の研究にのめり込んだわけですか。

コニー のめり込みました。例えば“ヴィブラートってどうしたらいいのかな?”とかわからないことがあったら、ニコニコ動画で検索すると、ヴィブラートの方法を教えてくれる動画が見つかるんですよね。あるいは高い声の出した方を知りたいなと思って、メタルの方がハイトーンを出してるのをマネしてみたりとか。

──お手本もネットにあったわけですね。

コニー ネットで参考にした人はたくさんいますね。自分らしいオリジナルの歌い方が8割くらい完成するまでの間は模倣の繰り返しでした。自分の声に合うかどうかはともかくとして、好きな音楽を歌っている人、好きな歌い方の人をたくさん研究して、良いところを取っていったら私が生まれた、みたいな感じです。

──特に参考にした人はいますか?

コニー そうですね……私はバラードが好きなんですね。ロックはリズムが難しくてうまく歌えず途中で心折れたりもしたんです(笑)。私の声質は軽めなのでロックには合わなかったんですよ。そこでマネしたのが、Jポップだったら玉置浩二さんです。”歌ってみた”のシーンでしたら、当時、YamaNekoさんという名前で活動されていて、今は山猫さなえさんという名前に改名されている方をよくマネしていました。この方の歌は、今聴いてもメジャーシーンで肩を並べられる男性ヴォーカルの人ってどれくらいいるんだろうか?と思うくらい上手なんです。だから、マネはしましたけど、その境地にはいまだにたどり着けていません(笑)。インターネットミュージックシーンには、名前が売れてる売れていないに関係なく、歌の上手な方が本当にたくさんいらっしゃいます。そういう方たちの歌い方をたくさんミックスして今の私になりました。

──録音して聴き返すことが大切だというのは歌の練習においてよく言われることですが、コニーさんもそうお感じになりますか?

コニー そのことに関しては私も断言します。歌がうまくなることにおいて、一番重要なのは録音して聴き返すことです。歌が上達する要素の5割以上を占めていると思います。例えば、野球の練習だってスイングしたり、ピッチングしたりするフォームを絶対にチェックすると思うんです。野球ならほかの人に見てもらえることもあると思いますが、”歌ってみた”の場合はネットで公開するまでは自分しか聴いていないことが多いと思うんですよね。そうすると他人からの評価が一切ないわけです。だから、録音して聴き返さないと、誰もその歌を評価しないことになってしまい、修正すべき点があっても気づけないことになります。

──しかも、コニーさんは先ほど“まずは自分の声に慣れる”ことから始めたとおっしゃいましたね。

コニー そうです。歌というとピッチやリズムに目が向きがちですが、それはいったん置いておいてもいいです。録音して、まずは自分の声に慣れていくことから始めて、“ああ、自分はこういう歌い方をしているんだ”ということを知るのが大切です。そして、“自分はこういう声質だから、こういう歌も合いそうだな”ということに気づけるようになると歌の幅も広がっていくと思います。それを繰り返して自分のスタンスを作っていくわけです。だから、歌を始めた初期の段階であればあるほど、自分の声を録音して聴くことが絶対的に必要です。

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