ヴォーカルテクニック&無敵のグルーヴ大作戦!【集中連載】『ロック・ヴォーカリスト“THE BIBLE”』Vol.5

文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)

事前にその日の目標を決める

 個人的な練習はスタジオに入る前にやっておこう。スタジオに入ってからハイトーンの練習や歌詞やメロディを覚える……なんてやっていたら、当然うまくなるのに時間がかかるよね。
 これ、当然なんだけど各メンバー各々、しっかり個人練習でできることは個人練習でやっておくというのが大基本だ。この大基本をやっていないバンドがあまりにも多い。スタジオでやることは「リハーサル」。みんなで合わせる「練習」がスタジオの使い方の基本なのだ。楽曲を覚える場ではないのだ。

 「なんとなくみんなでスタジオに入って練習する」という方法では、上達のスピードも遅いし、お金も時間ももったいない。スタジオ練習では目的を持ってやろう。何を克服するかなどの目標を決めてからやっていこう。

 初めてのスタジオは、メンバーの演奏レベルにもよるけれど「全員、音を合わせるようになる」とか「1曲を最後まで合わせられるようにする」といった簡単なものからでもいいので、メンバー全員で「目的」を持ってスタジオに入ろう。

演奏・歌唱を録音する

 初心者バンドだと自分がどのような演奏をしていたり、どのような声で歌っているのかわからない場合が多い。
 自分たちの演奏を客観的に聴くためにも、リハーサルは毎回、録音もしくは録画しよう。まずは専用のレコーダーなどを使わなくてもスマホなどで十分だ。

 プレイ中は気づかなかった反省点などがわかる。自分自身やメンバーのできていない部分や直すべき部分をしっかりと理解しよう。
 いずれは、いいものが録れたら動画サイトにアップする……なんていうのもチャレンジしてほしい。

できないところだけを合わせる

 「この曲のこの部分だけ合わない……」なんてことはプロでもよくある。

 普通、1曲をプレイすると3分程度はかかるだろう。うまくプレイできない部分のために1曲まるまるプレイしていたら、結果的にできる前にスタジオ使用時間が終了してしまう。
 うまくいかない部分があるなら、できないところだけを何度も繰り返し練習するのだ。例えばAメロの入口だけとか、サビ前の「クう」ところを合わせる……とかね。

 何度も同じところをプレイし、メンバーみんなで合ってきたら、1曲を通してプレイしてみよう。

リハ6
リハ7

ドラムに合わせる

 初心者バンドにはよくあるのだけど、メンバー全員で合わせるときにヴォーカルに合わせてしまいがち。これは初心者バンドあるあるだ。

 まずは、ドラムとベース、2人で合わせる。ドラムにベースが合わせるのが基本だ。いい感じになってきたら、そのあとギター、キーボードといったウワモノ(上物)を合わせる。最後にヴォーカルの登場だ。早く上達するためにはこの順番で合わせるとスムーズに行って、結局いい演奏が早くできる。なので全体練習に入る前に、ドラムとベースの2人で個人練習に入ることをお薦めする。

 もちろん曲によっては「この部分はベースを主体に合わせたほうがいい」とか「ここはギターを聴いたほうがやりやすい」なんてこともある。まずはヴォーカリスト自身が「ヴォーカルは最後に合わせるのが基本」ということを知っておいてほしい。

リハ8
リハ9

スタジオ退室

リハ10

 リハーサル/練習が終わったら、速やかに片付けをして退室しよう。予約時間が過ぎれば次の時間に予約を取っているバンドが来る。初心者だと片付けに手間を取ることも考えられるので、余裕を持って10分前には練習を終了しよう。

 5分前になったら、照明などで終了の合図が出るスタジオが多い。ドラムやアンプなどを移動した場合は元の位置に戻し、使用したケーブル類などは8の字に巻いて(以前やったよね!)戻す。

できれば次回の予約も取ろう

 受付に戻ったら、可能なら次回の予約も取っちゃうといい。また、当たり前のことなんだけど、スタッフに「お疲れさまでした」、「ありがとうございました」と挨拶して帰ろう。
 これは演奏面と同じ。スタジオでできないことは本番でもできない。誰だって失礼な態度や挨拶もできないミュージシャンやバンドマン、ヴォーカリストを応援する気にならないよね。

 スタジオのスタッフは、特に初心者バンドマンたちにとって、初めての「頼れるロックの人」。わからないことがあったときや、困ったときに助けてくれる存在だ。挨拶くらいはきちんとしようね。

 バンドを始めたばかりのヴォーカリストにとって、スタジオは貴重な練習場所でもあるし、アドバイスがもらえる場所だったりもするんだ。
 たくさんリハスタに入って、本番は思いっきり楽しんでライブやオーデションに挑もう。頑張ろうね、応援しています!

Vol.1〜Vol.4をチェック!


プロフィール

本山nackeyナオト

埼玉県出身。
 これまで500ステージ以上のライブ、100曲以上のレコーディング、ロックから演歌まで幅広いレコーディングやステージングをディレクション。誰もが知っているビッグバンドやメガヒットアーティストなども含め、200以上のバンドをメジャーへとサポートした。

 1989年からSTUDIO monkeydance(スタジオモンキーダンス)を主宰し、自身のスクールでは常に100人以上在籍中。

 ヴォイストレーナーのほか、ヴォーカル講師、音楽ディレクター、音楽プロデューサー、セミナー講師、ラジオパーソナリティとして多方面に活躍中。テレビ埼玉(『ミュージックシティスペシャル』)定期的に出演。フジテレビ系(『スーパーミュージックジャム』) ほかにも日テレ、TBSテレビ、テレビ東京など出演。

 ヴォイストレーニングの指導には定評があり、これまで30年のボイストレーニング指導で延べ30,000人以上にかかわり、多くのプロ歌手やプロ音楽家、プロヴォイストレーナーを誕生させている。

SMDボーカル教室
http://smdvocal.com/index.html

所在地:埼玉県川口市西川口1-33-9 博宝堂ビル2F
TEL:0120-9482-88

ナッキー先生が、リットーミュージック「歌スク」の講師として参戦中!
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撮影:ヨシダホヅミ
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