ヴォーカルテクニック&無敵のグルーヴ大作戦!【集中連載】『ロック・ヴォーカリスト“THE BIBLE”』Vol.5

文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)

バンド・ヴォーカリストに必要なリハスタの知識(実践練習編)

 ヴォイストレーニングのあとは、今回もバンドマンのための基礎知識のコーナーをお届けしよう! 今回は前回の続きで、バンド・ヴォーカリストに必要なリハスタの知識(実践練習編)だ。

 バンドを始めたばかりの人にとって、練習の仕方もわからないことだらけで不安だよね。そんな不安な気持ちを少しでも解消し、効率的な練習やリハーサルをするために、今回紹介したことをぜひ実践してみてね。

 しっかりと準備をしてスタジオ練習/リハーサルをして、本番のライブでは思いっきり楽しんで成功させたいよね。
 そこで今回は、高校生バンドの「凪ナズム」をモデルにして、初めてスタジオに行く人のために、スタジオ練習について徹底解説しよう! 「凪ナズム」と一緒にリハスタに入った気分になって、スタジオの使い方を見ていってほしい。

ライブ写真
凪ナズム(撮影:ヨシダホヅミ)

 まずは、前回の記事を見直して、バンドメンバー全員の中間点にあるような、行きやすいリハスタを見つけて電話予約しよう。

 筆者経営のリハスタ、スタジオモンキーダンス(ご予約専用:0120-9482-88)

 電話対応のスタッフの人には、スタジオに入りたい日にちと時間を伝えよう。使用時間についてだけど、スタジオが初めてのバンドは、まずは2時間くらいから予約しよう。初めてみんなで合わせるにはちょうどいい時間だろう。

練習当日のリハスタ入り!

 いよいよリハスタに入ろう。予約した時間の5〜10分前にスタジオに着いておくと余裕を持てるけど、(スタジオの方針にもよるけど)あまり早く集合するのも、お店に迷惑になるので控えよう。

 まずはスタジオに入る前に受付で手続きしよう。初めてのスタジオ使用だと、スタジオにもよるが会員入会手続が必要な場合が多い。またスタジオ代金も前払いのところも多い。スタジオでは普通ひとりずつの支払いには対応していないので、時間の有効利用のためにも、とりあえずその場で誰かが支払うのをお薦めしたい。

 スタジオの受付やホールでは、スタッフや他の練習しているバンドでも挨拶を忘れずにね。「おはようございます!」で行こう。

豆知識:なぜ、挨拶はいつでも「おはようございます」なの?

 日本では「言霊思想」の文化があるよね。結婚式のスピーチで「別れる」、「キレる」を口にしないとか、病院には4号室は少ない……といった文化や思想だ。
 昔から歌舞伎や狂言といった、芸能の世界は特にこの「言霊思想」が残っている。「こんにちは」や「こんばんわ」はお客様が「来ん(来ない)」に繋がって縁起が悪いとされているのだ。

 だから芸能の世界では「おはようございます」と挨拶するんだ。僕たちも、ライブにたくさんお客さんが来てほしいよね。なので、僕たちは「おはようございます!」で行こう!

スタジオに入室

 予約時間が来たらスタジオに入室できるけど、あわてずにちょっと待って。前の時間帯に他のバンドがいた場合は、出るほうが先。機材の搬出などを優先してあげよう。

 そして、そのあとスタッフが点検や片付けに入る。最近では消毒や空気の入れ替えもしなければならない。すべて終了してから、いよいよ入室だ。スタジオには、通常見たことがないような分厚い防音扉がある。しっかりと閉め、ドアのノブをロックしよう。

 スタジオ内に入ったらすぐにセッティングを始める。わからないことがあればスタッフに尋ねよう。スタジオの機材は高価なものも多く、アンプやスピーカーは使い方が悪いだけで壊れるので、スタッフに遠慮なく聞いてほしい。

リハ1
リハ2
リハ3

マイクをPAミキサーに繋いでみよう

 本連載のVol.2でも説明したが、復習を兼ねて振り返ろう。

 ギターはギターアンプに繋げればいいけど、ヴォーカルアンプってどこ? 
 通常のリハスタではヴォーカルアンプというのは設置していない。ヴォーカルのマイクはPAミキサーに繋ぐ。キーボードやCDやパソコン、スマホなども同じくミキサーに繋いでスピーカーから音を出すのだったね。

ミキサー1

①まずマイクとケーブルを繋ぐ。その後ミキサーに繋ぐ。すべてのフェーダーが下がっていることを必ず確認。

ミキサー2
ミキサー3

②チャンネルは通常左から1番、2番と呼ぶ。こちらから先に上げてもいいし、マスターフェーダーから先に上げてもいい。必ず片方ずつ上げること。

③ハウリングに注意しながら、ゆっくり上げていこう。

ミキサー4

④グラフックイコライザーをお好みの音質になるように調整しよう。

ミキサー5
ミキサー6

⑤エフェクトをかけてみよう。エフェクトの大元を上げないとエフェクトがかからない。EFFECT RTN(エフェクトリターン)のフェーダーを上げることでかかり具合を調整する。

ミキサー7

⑥イマイチ音圧や音量が乗らない場合、コンプレッサーやゲインも少しずつ上げてみよう。

これだけは絶対に覚えよう(これをやったらスタジオ出入り禁止の可能性も……)

シールドの抜き差しをするときはフェーダーを必ずゼロにする!

 すべてのアンプやミキサー共通なのだが、フェーダーが上がったままでシールドやケーブルを抜き差しすると、一発で故障する場合もある。シールドやケーブルを抜き差しするときは、必ずフェーダーやダイヤルをゼロにして、できれば電源をオフにしてからにしてほしい。

アンプの上に飲み物を置かない!

 スタジオ内は飲食一切禁止というスタジオは多い。筆者のスタジオは自分がヴォーカリストなので、室内でのドリンクのみ、OK にしている。
 ドリンクのみOKのスタジオの場合でも、アンプの上に缶のドリンクやフタの空いたペットボトルを置くのは厳禁だ。

 当然スタジオ内は禁煙だ。本当に極まれにOKのスタジオもあるが、ほとんどのスタジオは禁煙。スタジオ内で喫煙したら出入り禁止になると思ってほしい。

 続いては、Vol.3でも説明した通り、いいバンドになるためのアドバイス。

 メンバーの分のマイクやPAやスタンドのセッティングは、僕たちヴォーカリストがやってあげよう。

 楽器を使うメンバーはチューニングやエフェクターのセッティングなどで、ヴォーカルのセッティングより時間がかかる。スタジオ使用時間も有効に使えるし、いいバンドになるためには、メンバーをリスペクトし合って、お互い楽しく助け合って演奏しよう。

音楽スタジオ/リハスタでの効果的な練習法

リハ風景

 スタジオでの練習やリハーサルをするとき、初心者バンドだと「どうやって練習したらいいかわからない」といった場合も多いだろう。

 音楽スタジオでの練習は文字通り「リハーサルスタジオ」。ライブや発表の場、オーディションなど……まさに本番のためのリハーサルだよね。
 お金も移動の時間もかかるし、少しでも効率のいいリハ(練習)をしたほうが、個人的にもうまくなるし、バンドのためにもなるよね。ライブや発表会、オーデションなどの本番で良い結果を残すためにも、スタジオで効果的な練習をする方法を紹介しよう。

 リハスタで上手に効率的な練習やリハをすることができるバンドは、必ず本番でも良いパフォーマンスをすることができる。
 逆にリハスタの使い方がヘタでグダグダなバンドは、上達のスピードも遅く、本番も当然グダグダ。考えてみれば当然で、リハでうまくできないことは、本番でもうまくできっこないよね。

 この連載を読んでくれているみんなには、ライバルバンドやライバルヴォーカリストより上達してほしいし、オーディションにも勝ってほしいと心から願っている。

 この連載で記したことはライブやライブリハーサルだけでなく、将来的なレコーディングなどでも役に立つので、覚えておいてほしい。

セッティングは素早く、ウォーミングアップも忘れずに

 スタジオ内に入るとまずセッティングをしなければならないけど、ヴォーカリストの場合、メンバーがチューニングやセッティングしている間、軽い腹式呼吸やハミングなどウォーミングアップを絶対にしてほしい。

 ここでは、以前作成したウォーミングアップの動画をぜひ参考にしてほしい。

簡単にできる!ボイトレ前のウォーミングアップウオーミングアップ

 時間的には5分もあれば十分だ。このときヴォーカリスト的には「このウォーミングアップをしたら良い声が出る」といったマインドセットが本当に大切なんだ。一流のアーティストは必ずこの時間を大切にする。レベルが高くなればなるほど重要視していることのひとつ。

 まずセッティングやアップが終わらないと、リハを始めることができないよね。

 ケーブルの繋ぎ方やスピーカーの使い方など、個人的に習得できることや知識は、この連載で説明しているのでしっかり確認してほしい。ヴォーカリスト含め、ヴォーカル以外のメンバーにもこの連載の受講をお薦めする。

 PAやアンプの設定、ドラムのセッティングなどは前もって個人練習に入り、(個人練習はどこのスタジオも安く設定していることが多い)自分なりのセッティングをある程度、決めておくことをお薦めしたい。

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