文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)
バンド・ヴォーカリストに必要な機材の知識
バンドで一番身軽で、手ぶらでもスタジオでリハーサルができる、僕たちヴォーカリスト。身体が楽器の僕たちは、機材を何も持っていなくてもロックできるのがいいところではあるけど……。
ライバルのヴォーカリストに差をつけるなら、ヴォーカルやヴォイストレーニングに役立つ機材を入手してみてはどうだろう。
特に高校生諸君! ヴォーカリストとしてキャリアがまだ浅いなら、形から入るというのもモチベを上げるためにはいいと思うよ。
今回は持っていると役に立ちそうな機材から、絶対に持っていてほしい機材まで、ひと通り紹介していこう。
マイク
ヴォーカリストたるもの「Myマイク」1本くらいは、ぜひ購入してほしい。
オススメは何と言ってもSHUREのSM58。大スタンダードのダイナミックマイクで、どこのスタジオ、ライブハウスでも準備されている。当然、筆者経営のスタジオにも常設している。
でも、オリジナリティが大切なロックバンドにおいて、みんなと同じものを使うというのはなんだか面白くないという君……。
いいね!! その姿勢は大切だよね。マイクの周波数特性やバンドの環境、そして自分の声質やヴォーカルスタイルを考慮してマイク選びをするのが大切だからね。特注して自分専用のMyマイクを持っていても筆者はいいと思う。機材代なんてギタリスト諸君に比べれば、ヴォーカリストはホント微々たるものだからね。
でも、購入前のマイクを試させてくれる楽器屋さんは、なかなか少ないというのも事実。何を選んだらいいかわからない場合は、見た目やフィーリングで選んでしまうのも僕はいいと思うよ。ギターやベースも、最初は見た目やフィーリングで選んで、少しずつ自分との相性がわかってくるプレイヤーも多いよね。ただし、フィーリングで選ぶ場合でも以下の点には気をつけよう。
ヴォーカル用マイクを選ぶこと
これ、当たり前なんだけど、楽器専用のマイクというものがある。それを知らずにネットで楽器専用マイクを購入してしまったヴォーカルの生徒さんもいる。使えないことはないけど、どうせならヴォーカル専用マイクがいいよね。あと、USB接続しかできないタイプは、自宅でのレコーディングや配信に使うものだ。
また、レコーディングに適しているコンデンサーマイクは、基本的にスタジオ練習やライブでは使えないからね(コンデンサーマイクには、ライブ向きにカスタムされているものもあるんだけど、数は少ない)。ヴォーカル用ダイナミックマイクで、USBマイクでないものを選べば間違いないだろう。
マイクスタンド
楽器を弾きながら歌う場合や、両手を空けてパフォーマンスをしたい場合はマイクスタンドが必要になる。
スタジオで使うマイクスタンドは「ストレートタイプ」と「ブームタイプ」の2種類だ。
楽器を弾かないヴォーカルはスタンドを使う必要はないけど、ここはスタンドを使ってパフォーマンスにこだわろう。
その場合、ストレートタイプのスタンドを使う。これも特注して自分専用のMyマイクスタンドを持っていても筆者はいいと思う。機材代なんて、ギタリスト諸君に比べればヴォーカリストはホント微々たるもの……(2回目)。
楽器を弾きながら歌う人には、角度を調整できるブームタイプがオススメだ。
ここでヴォーカリスト諸君に、いいバンドになるためのアドバイスをしたい。
メンバーの分のマイクやPAやスタンドのセッティングは、僕たちヴォーカリストがやってあげよう。楽器を使うメンバーはチューニングやエフェクターセッティングなどで、ヴォーカルのセッティングより時間がかかる。いいバンドになるためには、メンバーをリスペクトし合って、お互い楽しく助け合って演奏しよう。
エフェクター
ギタリスト君たちが誇らしげにエフェクター何個もつないで、エフェクター踏む操作を内心ずっと「カッコいい……」と思ってきた。
だが、筆者の若かりし頃と違って、最近はヴォーカル専用のエフェクターが、かなりいい感じでパフォーマンスに使えるようになってきたのだ。特にガテラル系のデスボイスなどは、エフェクターを使ったほうがよりカッコいいパフォーマンスができる。
もちろん基本的なリバーブやディレイ、エコーなどは、スタジオやライブハウスのPAでかけることができるけど、エフェクターがあれば自分の手元・足元で操作できるようになりカッコいい!
さらにリアルタイムでハーモニーもできるし、ボカロなどでお馴染みのケロケロボイスという感じにもできる。内緒だけど、自然な感じでピッチ修正してくれるエフェクターだってある!
まだまだ高校生だと使用者は多くないので(筆者は埼玉県高等学校軽音楽連盟/けいおん埼玉 official websiteの審査員をやることが多いので、高校生バンドのパフォーマンスをよく見ているのだ)、今、上手に使えば一目置かれる存在になれるだろう。
リズムマシン
ドラムやベースのリズム隊、キーボード、ギターの上モノだけでなく、音楽をやっているならヴォーカリストだって、すべての人がリズムマシンやメトロノームを使って練習するべきだと筆者は思う。
特に楽器を演奏しないヴォーカリストの場合、楽器隊に比べてリズム感が良くない人が多い。これはトレーニングしていないだけ。バンドメンバーに指摘される前に、リズムに強くなろう。
まずはバスドラやベースを意識して、裏拍を感じる練習からなんだけど、リズムについてはまた別の機会に解説するね。
普段からリズムマシンやメトロノームなどを使って、裏拍を感じながらトレーニングするだけでリズム感は全然違ったものになる。リズムマシンやメトロノームとベースだけで練習するのも効果的だ。
ちなみにピッチ(音程)感覚とリズム感覚は、脳みその同じところを使う。ピッチが甘い人はリズム感も甘い人が多い。
実は音痴に感じてしまう人のほとんどは、ピッチ(音程)がとれていないだけでなく、リズムもとれていない。リズムが曲に合わせられるようになれば、多少ピッチが甘くても不思議とそれほど音痴には聴こえなくなるものなのだ。
リズムマシンやメトロノームはスマホアプリでも無料ダウンロードできるものがたくさんある。実機だって1,000円程度でも購入できる。
しっかりリズム・トレーニングをしたいなら、15,000円ほどするBOSSのDB-90をオススメしたい。リズムマシンやメトロノームとしてはちょっと高いけど、長く使えるから。筆者自身も長年(10年以上)愛用しているし、スタジオでは常設している。レッスンにも使用している。
対応できないリズムパターンはないと言っていいほどで、ズレを教えてくれるリズムコーチ機能を使えば、ひとりで正しいリズムレッスンができる。
リズムマシンやメトロノームは上級者になれば必要ないということはなく、ずっと使い続けるものなので、思い切って最初に高いものを買ってしまうのも悪くないと思うよ。
ピッチトレーナー
ヴォーカリストにとっては声もひとつの楽器。まずはチューニングを合わせるところから始めよう。
最近はヴォーカリスト専用のチューナーが発売されている。ピッチがずれてしまう人、自分では合っていると思っているが、しっかりとピッチに強くなりたい人は、やはり持っていたほうが良いだろう。メンバーに注意される前にピッチに強くなろう。
オススメは、完全にひとりで練習するなら、Rolandの VT-12-BKがいいと思う。20,000円くらいするので少々高額かもしれないけれど。
予算的に厳しい人はKORGのVPT-1ボーカル・ピッチトレーナーを薦めたい。5,000円くらいだ。チューナーと言えばKORG。五線譜表示とピッチの上下を示すLEDで視覚的に歌のピッチを確認することができる。楽器には当たり前のチューナー。ヴォーカリストも取り入れてみよう。
次回はvol.4:“アーティキュレーション”大作戦! 次回もお楽しみに! 頑張ろうね、応援しています!
Vol.1〜Vol.2、Vol.4〜Vol.5も合わせてチェック
プロフィール
本山nackeyナオト
埼玉県出身。
これまで500ステージ以上のライブ、100曲以上のレコーディング、ロックから演歌まで幅広いレコーディングやステージングをディレクション。誰もが知っているビッグバンドやメガヒットアーティストなども含め、200以上のバンドをメジャーへとサポートした。
1989年からSTUDIO monkeydance(スタジオモンキーダンス)を主宰し、自身のスクールでは常に100人以上在籍中。
ヴォイストレーナーのほか、ヴォーカル講師、音楽ディレクター、音楽プロデューサー、セミナー講師、ラジオパーソナリティとして多方面に活躍中。テレビ埼玉(『ミュージックシティスペシャル』)定期的に出演。フジテレビ系(『スーパーミュージックジャム』) ほかにも日テレ、TBSテレビ、テレビ東京など出演。
ヴォイストレーニングの指導には定評があり、これまで30年のボイストレーニング指導で延べ30,000人以上にかかわり、多くのプロ歌手やプロ音楽家、プロヴォイストレーナーを誕生させている。
SMDボーカル教室
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