バンド・ヴォーカリスト必須! ミックスヴォイス大作戦!【集中連載】『ロック・ヴォーカリスト“THE BIBLE”』Vol.3

文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)

タングトリル

 続いてタングトリルについて解説しよう。いわゆる「巻き舌」というやつだ。舌を上の前歯から2センチくらい奥、口の上部に当てて「プルルルルル……」と震わせる。
 ちなみにこのタングトリルは、カンツオーネなど実際の歌唱スタイルにも使われることがある。これはリップロールと異なるところだ。

舌筋のストレッチ効果

 タングトリルもウォーミングアップとして最適だ。舌の筋肉をほぐし、リラックスする。歌唱時には、このリラックスがホント重要。舌の筋肉が硬くなっていると、のども開かないし歌声がクリーンにならない。舌の筋肉をタングトリルによってほぐすことができると発声しやすくなるのだ。

のどを開くトレーニングになる

 リップロール同様に、タングトリルはのどを開くトレーニングにもなる。のどを開くことは歌唱時の基本だよね。これによって声帯に負担をかけずに歌うことができるようになるのだ。
 この、のどを開いた状態をわかりやすく説明すると「あくび」をしたときの状態に近い。しかし、発声時にこの状態にするには、トレーニングが必要で、タングトリルが最も効果的な練習方法となる。
 また、先に挙げたように舌のリラックスができていると、のども緊張がほぐれた状態になる。舌の根本(舌根)も下がり、のどを開けるようになるのだ。

歌に安定感がつく

 タングトリルの練習は安定した発声につながる。なぜならタングトリルは吐き出す息の量を一定にするトレーニングになるから。吐き出す息の量を一定にできるようになると、歌声がブレることなく安定する。逆に、発声時の息がコントロールできなければ、声がひっくり返るなど不安定な歌声になってしまう。
 タングトリルは、舌が回るほどの息の量を常に出す必要があるよね。だからこのトレーニングによって、ハイトーン発声時も息をコントロールすることができるようになるのだ。

ピッチ(音程)が正確になる

 正しい音程がとりやすくなる。これには、タングトリルをしながらドレミファソラシド(スケール練習)が効果的。このトレーニングにより、音の高さによって変わるのどの感覚をつかむことができる。
 僕たちの発声時ののどは、さまざまな音階を出すためにさまざまなアジャストをする。しかし、歌っているときは口や舌の動きにも気を取られてしまい、のどの動きに集中しにくい状況になってしまう。
 これに対してタングトリルをしている間の舌は一定の動きをしている。この間、のどの動きだけに集中することができて身体で理解しやすくなるのだ。

換声点がわかる

 換声点を身体が理解して表声とファルセットをスムーズに切り替えられるようになる。この効果は、いろいろなスケール練習をタングトリルで発声することによって会得できる。
 先に触れたように、タングトリルをしている間は舌は一定の動きをするよね。舌の動きが決まっているので、のどの感覚だけに集中することができる。ナチュラルな発声におけるのどの動きを身体で覚えることによって、表声とファルセットを切り替えるポイントがわかるようになるのだ。

アーティキュレーション・滑舌が良くなる

 アーティキュレーションや滑舌が良くなるという効果も挙げられるだろう。これらが悪いと歌詞が歌メロにきちんとはまらずグルーヴ感が出ない。そのため、ヴォーカルには滑舌の良さも求められる。
 ここでもタングトリルのトレーニングは有効。舌筋や口周りの筋肉にストレッチ効果があるからだ。その結果、口や舌の動きが良くなり、滑舌が良くなる。

腹式呼吸の練習になる

 腹式呼吸の練習にもなる。腹式呼吸は、横隔膜を下げお腹に空気を貯め(る感覚)、そこから吐くという呼吸法でヴォイストレーニングの基礎。これによって安定感のある歌声になる。
 タングトリルは、吐く息の量をコントロールすることで、できるようになる。つまり吐く息の量をコントロールするには腹式呼吸が有効。だからタングトリルを練習することが、同時に腹式呼吸の練習にもなるということなのだ。

タングトリルのトレーニングの方法とコツ

 タングトリルのやり方を説明していこう。

1:まず口を軽く開け、舌の先を上の前歯から2センチくらい離して上あごに付ける。一度ゆっくりと「ラ」と言ってみよう。その上顎に舌が付いた位置が目安だ。
2:腹式呼吸を意識して、息を適量で吐いてみよう。これを何秒間か続けてやってみる。
3:それができたら「ラ行」で発声してみよう。「ラ、リ、ル、レ、ロ」の中で一番ローリングしやすい文字を見つけて繰り返し練習。
4:最初は巻き舌で3文字くらいから始めよう。「ロ、ロ、ロ」これが言えるようになった、次の段階
で「ロロロロロロロ……」と長いタングトリルができるようになるまで練習だ。まずは、短くてもそ
の音を鳴らせるようになることを目指してみると良い。

 リップロールとタングトリルのやり方については動画を用意したので、うまくいかないという人は参考にしてほしい。

動画4:リップロールとタングトリル

動画4:リップロールとタングトリル

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