【インタビュー】ヨシダタクミ(saji)、アニメOP「Magic Writer」での歌唱表現を語る。10年先も歌い続けるヴォーカリストとしての野望

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

レコーディング中ヘッドホンは右外し

──今回のレコーディングマイクは何でしたか?

ヨシダ 僕はもうずっとソニーの800G(C800G/9X)です。sajiになってから他のマイクってほぼ使ってないんじゃないかな。

──どんな部分がお気に入りですか?

ヨシダ 僕、声がもったりしてるんですよ。ミッドレンジが太めなんで、あんまりスピード感のある歌い方ができなくて。みんなが第一選択で使うノイマンの87(U87Ai)みたいなナチュラルな感じでレンジが出ると、どうしてもちょっと遅さが出ちゃうというか。800Gだとちょっとハイが出て、いい意味で真ん中が抜けるんです。スパッといく切れ味やサウンドが出るので、自分の声がもったりしてるなと感じている人には向いてると思います。

──歌唱についてはどんな感覚でしたか?

ヨシダ Vocal Magazine Webさん的にはあまり面白くないかもですけど、あまり歌い上げず淡々と歌う曲なので、ある種テンションを上げずに歌うのに苦労したかもしれないです。曲調はめちゃめちゃメリハリが効いてるじゃないですか。ブラスが入ってきたり、スウィングしたり。でもヴォーカルの僕のイメージは「朝の電車で無表情のときの自分を思い出しながら歌う」でした。テンションが一番低い、あの心を閉ざしきってるときの気持ちで歌ってるんですよ(笑)。

──(笑)。どうしてそういうイメージを作ったんですか?

ヨシダ 主人公が、現実世界で自分の人生を楽しめているのか自問自答しているストーリー設定なので、まあ僕らもそうですけど、人生って9割方はつまらないことじゃないですか。1割ぐらい面白いことがあるからみんな楽しめているけど、人生ずっと楽しいやつってあんまりいないと思うんですよ(笑)。

──ヨシダさんでもそう感じるんですね。

ヨシダ 僕はどちらかと言うとずっとつまらないと思って生きてます(笑)。人生をギュッとしたらもちろん楽しいと思ってますけどね。日常の中で無意識に時間を消化してることって多いと思っていて、音楽を聴く瞬間ってまさしくその時間に聴くじゃないですか。夜寝る前とか、通勤中とか。そのシチュエーションに合わせたいと思ったので、そういう歌い方にしたんです。さっきリファレンスと言ったのが、僕の中で斉藤和義さんの「歩いて帰ろう」で。あの曲も別に背中を押してくれるわけじゃないけど、なんか淡々と染みる。そのテンションがいいなと思って歌いましたね。

──ヴォーカル録りはスムーズに進みましたか?

ヨシダ ウチは早いと思います。sajiって全曲セルフディレクションなんですよ。ただ、テイク選びはディレクターさんにお任せします。そのために3つ残すんですけど、1テイクずつの時間で言うとホント20分ぐらいで終わるんじゃないですかね。

──レコーディングのときに環境作りはしますか? 例えば照明を落としたり。

ヨシダ ああ、まったくしないです(笑)。僕めちゃくちゃエコですよ、どの環境でも文句言ったことがない。靴だけは脱ぎますね。歌いながらリズム取ると刻む音が入っちゃうので。

──歌うときは身体や足でビートを取るんですか?

ヨシダ 僕は足で取りますね。昔、音楽学校時代に、大黒摩季さんに教えていたジンコ先生っていう先生がいて。ジンコちゃんめっちゃ仲いいんですけど、その人がずっと独特な身体のノリ方を教えてくれていたんです。でも「俺らの世代でそんなノリ方して歌ってるやついねぇ」って言ったら鬼ギレされて、それ以来身体で取るというやり方は一切やってないです(笑)。

それと、これはあんまり提唱しないですけど……歌うとき、僕はヘッドホン右外してます。

──それは空間と声の混ざり合いを耳で確認するため?

ヨシダ そうです。セルフディレクションをしている関係もあって、どうしてもヘッドホンだけで聴いちゃうとナチュラルに聴けないんですよ。外しているとけっこうシビアに聴こえて、今フラット気味だなとかわかる。セルフディレクションって確認するのも自分だから、普通にやると時間が倍になっちゃうんです。となるともう歌いながらディレクションできないとダメで。そのための右外しですね。

──かなり耳の感覚が養われそうですね。

ヨシダ それが困ったことに、ライブではイヤモニの現場があるじゃないですか。この間出させてもらったアニサマ(Animelo Summer Live)もそうなんですけど、あの規模になるともうイヤモニなんて絶対外せないです。音が遅れて返ってくるんで歌えたもんじゃない。でも、右を外したいマンになっちゃってるから、外せないことがハンデにすら感じるようになっちゃって。もちろんエンジニアさんやPAさんには怒られますよ(笑)。

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