【インタビュー】ヨシダタクミ(saji)、アニメOP「Magic Writer」での歌唱表現を語る。10年先も歌い続けるヴォーカリストとしての野望

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

sajiが10月3日(火)に新曲「Magic Writer」をリリースする。今作はテレビアニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』のオープニングテーマで、躍動感のあるスウィング・ロックのうえで、ヨシダタクミ(vo, g)の深い歌声が夢を諦めかけた大人に温かく寄り添う。

sajiは2011年メジャーデビューのバンド、phatmans after schoolのオリジナルメンバーであるヨシダタクミ、ユタニシンヤ(g)、ヤマザキヨシミツ(b)によって結成された3ピースロックバンドで、2019年から活動中。キャッチーでエモーショナルな青さと、シリアスで憂いを帯びた二面性のある楽曲で聴く者の琴線に触れてきた。

今回Vocal Magazine Webには、ヨシダタクミが登場。水樹奈々、Kis-My-Ft2を始め多くのアーティストへの楽曲提供も行なっているヨシダに、新作での歌唱表現はもちろん、ソングライティングに向き合う姿勢や、ヴォーカリストのこだわり、歌の上達方法など、さまざまなことを教えてもらった。

原作を読んだその日の夜に曲の種を作る

──新曲「Magic Writer」はアニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』のオープニングテーマに起用されています。アニメ作品にはどんな印象を持ちましたか?

ヨシダタクミ 最初に気になったのはやっぱりタイトルで、いかついなと(笑)。主人公はタイトルにあるようにおっさん、年齢的にはアラフォーなんですけど、現実世界での自分の人生がある中で、別にそれを悲観しているわけではなく、それはそれとして、VRMMO(仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)の世界でどう楽しむかというところにフォーカスが当たっているんです。なんか変に主人公の暗い部分とかが出てこないのがすごく良いなと思いました。おじさんならではの楽しみ方みたいな観点で、ジョブアビリティ(バトル中に発動することのできるアビリティ)の選択の仕方とかが出てくるのも面白いなと(笑)。

──書き下ろし楽曲とのことですが、曲に昇華させるまでに時間はかかりましたか?

ヨシダ いや、全然かからなかったです。僕は基本的に「原作を読んだあとに(記憶に)残ったものでどうするか」ということしか考えていなくて、毎回浮かび上がってきた印象をそのまま曲にしている感じです。前クールにエンディングテーマをやらせてもらったアニメ『Helck』のときもそうですけど、もう読んだその日の夜にパソコンの前で曲の種を作りますね。

──具体的には楽曲にどんな想いを込めましたか?

ヨシダ 僕らがアニメのオープニングをやらせてもらうのは2回目で、1作目はTVアニメ『かげきしょうじょ!!』で、10代の女の子が主人公で、“オスカル様”に憧れて「紅華歌劇音楽学校」に入ろうとするんですよ。僕も10代の頃に音楽を目指した人間なので、あっちの曲に関しては本当に等身大というか、まだ何者でもない少年少女たちの無限大のワクワク、青さみたいなのを描いた応援歌だったんです。でも今回の作品って主人公がおじさんじゃないですか。青い時期を経て、ある程度人生として完結に向かっている最中なので、そういう人たちにいかに響く曲を書こうかという意識でしたね。僕も今30代なんですけど、自分のこのあとのキャリアとか考えるようになってきたので。

──サウンドはスウィングする躍動感のある曲調が印象的ですが、歌詞と曲調のイメージはどちらが先にありましたか?

ヨシダ もう曲調だけ決めてました。アニメサイドから「明るい曲で」ということだけはいただいていて。もしこれがキャラソンだったら僕もバチバチに明るく書くんですけど、自分が歌わせてもらって書き下ろしでって考えたときに、テンポ感はポップなんだけど、曲調としては極端に明るいのは避けようという裏テーマがあったんです。リファレンスでも考えていた曲があって、それをイメージしながら書きましたね。

──サウンドを作り込んでいくにあたり、メンバーとはどんなやりとりを?

ヨシダ 実は先ほど挙げた『かげきしょうじょ!!』オープニングテーマの「星のオーケストラ」のときと布陣が一緒なんです。アレンジャーは当時ご一緒した河合英嗣さんという方に僕からラブコールして。で、バンドメンバーに対しては、一貫して言ってるんですけど「とりあえず自由にやっていいよ」と。例えば、ベースのヤマザキには「基本的にはスウィングビートなんだけど、動き方は明るすぎないフレーズにしてほしい」という話をしたり。ギターはもう全部お任せしましたね、ご自由にどうぞって(笑)。

──途中にギターソロが鳴り響くフレーズがありますが、こちらは最初から長尺の構成だったのですか?

ヨシダ そうですね。ギターのフレーズって近年減ってはきているので、それに対してのアンチテーゼじゃないですけど、一貫してウチはできる限りギターを入れようと考えていて。バンド曲のイントロが超短くて間奏もなくなってきてるから、ギタリスト要らないんじゃないか問題を、ネットでギタリストたちが議論してた時期があって。それに対しての僕からの回答は「ギタリストに愛を」っていう(笑)。やっぱり最近リードギターを目指してギタリストになる人も減りましたよね。別にこれは批判とかじゃなくて時代の問題だと思うんですけどね。

──サイドギター希望ということですか?

ヨシダ そうです。フレーズギターっぽさとか、簡単なギターソロは弾けるけど、バチバチのいわゆる90年代の超カッコいいギターソロとかは難しいです、みたいな。ウチのギターはもう80年代90年代のそういうのが大好きで育った世代なので、彼のために毎回そこは用意してますね。

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