【インタビュー】浜田麻里 最新アルバム『Soar』をリリース。デビュー40周年を迎えてなお進化し続けるヴォーカルの秘密にさまざまな角度から迫る!

取材・文:舟見 佳子

4月19日に通算27作目となるニューアルバム『Soar』をリリースした浜田麻里が『Vocal Magazine web』に待望の初登場!

2023年にデビュー40周年を迎えたロックシーンのリビング・レジェンドであり、今なお圧倒的な歌唱力を誇るスーパーヴォーカリストの最新作は、プログレッシブメタルの最高峰として高い評価を得た前作『Gracia』をも凌ぐ最高傑作となった。

今回のインタビューでは、アルバム『Soar』についてはもちろんのこと、ヴォーカリストとして行なう日々のトレーニングやケア、すべて自身で行なっているというヴォーカル・アレンジやレコーディング、“この世代だからこそ書ける世界”と語る歌詞についてなど、本当にさまざまな点について話を聞くことができた。

それほど“ヴォーカリストとしての意地”みたいなところに、こだわりはないんですよ

──これまで、時代によっていろいろな音楽性にチャレンジされてきましたけど、ここ2作は特にプログレメタルというか……。

浜田 そっちに寄りましたね。よく“原点回帰”みたいに書かれるんですけど、あんまりそういう気持ちはなくて。そのときの社会背景だったり時代感みたいなものをベースに、自分がやるべき音楽と思って作ってきただけなんです。でも、確かにここのところはハード系でグッと締めようというような意識はちょっとありましたね。

──参加ミュージシャンも前作『Gracia』とほぼ一緒ですが、方向性としては同じ感覚で取り組まれたのでしょうか?

浜田 毎回だいたい感覚的には一緒なんですけどね。おかげさまで『Gracia』がわりと評判が良かったので、またひとつハードルを上げて……というところを目標に制作を始めた感じです。

──演奏もですけど、ヴォーカルもすごくハードルを上げてきたと思うんです。そこは挑戦心というか、ヴォーカリストとしての向上心ということでしょうか?

浜田 向上心はいつもあります。ただ今回、歌で“自分はこうなんだ”みたいなところはあまりなくて、わりとナチュラルではありました。どちらかと言うと、私は“歌”というよりも作品づくりにおいては8割がたプロデュース的な感覚が強いので。もちろん歌はメインになるんですけど、それほど“ヴォーカリストとしての意地”みたいなところに、こだわりはないんですよ。

──ヴォーカルに関して、手応えがあったとか成果を感じたところは?

浜田 私の場合ワーッとビブラートをかけるイメージかと思うのですが、今回は真っ直ぐ系のヴォーカルが多くなったなとは思っています。それはなぜかと言うと、今作はより演奏がすごく複雑になったというかプログレッシブハード系で、細かいフレーズをミュージシャンたちがやっているものですから、まずそれを聴かせたかったんですね。その上に歌でいろいろやっちゃうと何が何だかわからなくなっちゃう。あとは若干ウィスパー系だったり、あまりノイジーじゃないストレートとか、エンディングでちょっとオペラ系のヘッドヴォイスで歌ったり……。そういうのは今回多少やりましたね。工夫ということでもないんですけども。

──アルバムの中で、ヴォーカル的に気に入っている曲はありますか?

浜田 うーん、全部ですね。今回は相当ていねいに作り込んだので、1曲だけは挙げられない。挙げちゃうと他の曲がかわいそうで。でも、“歌”という意味で言うと「Escape from Freedom」なんかは、いろんな歌唱法だったりレンジが極端に広かったり。そういう意味では挙げられるかもしれないですし、自分でもドラマティックさみたいなものは気に入ってますね。

──「Escape from Freedom」は、確かにいろんな歌唱法が入ってますね。ギターソロ前、ロングトーンでフォールしてからの、そこからさらに伸ばす技術とか、すごいなと思いました。音程を落としたあと終わるかなと思いきや終わらない。あそこから伸ばせるっていうのはやっぱりものすごい武器なんじゃないですか?

浜田 あまり技巧的な観点で考えたことはないんですけど、おっしゃっていただいたフォールというのはフレーズ的な呼び方なのかもしれませんが、ひとつの音と音の間の動き方が大事なんですね。私はベンドと呼んでいますが、間の音も音楽的にきれいな曲線を描くように落としたり上げたりするのはわりと得意ですね。

──それもひとつの見せ場というか、リスナーが「すごい!」と感じるところだと思うのですが、そういうポイントを曲ごとに設けたいという意識はありますか?

浜田 そのために悩んで何日も考えるようなことは全然ないんですけど、無意識ながらどこかで「おっ!」と耳を引くようなところを作ろうというのは確かにあるかもしれないですね。

──AORっぽいアプローチをしていた時代にも、そういう曲調の中にハイトーンをバーンと入れたりしていたのが印象的でした。なので、ヴォーカリストとしての見せ場やインパクトを提示することは意識されてるのかなと。

浜田 やっぱり作るごとに“何か新しいものを”という意識はいつもありますね。それが、より起伏に富んだ歌に繋がっていったり……とかはあるのかなと思います。

──先行リリースされた「Tomorrow Never Dies」も、アルバムのオープニングに相応しい、圧倒される熱量のある楽曲です。

浜田 ハードめですね、かなり。でもこれは特別難しいという感じではないです。まぁ、私の場合キーは人よりは高いので……。この曲に関しては、ラストでちょっとオペラチックな発声をしているところぐらいですかね。あとはもう普通というか、いつもの感じなんですけど。

浜田麻里『Soar』トレイラー映像

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