【インタビュー】浜田麻里 最新アルバム『Soar』をリリース。デビュー40周年を迎えてなお進化し続けるヴォーカルの秘密にさまざまな角度から迫る!

取材・文:舟見 佳子

喉を傷めないギリギリのラインに自分を追い込んだりするので、そのせめぎ合いがあるんです

──どうしても年齢とともに声が出なくなっていく方も多いと思うんですけど、そんな中で麻里さんはさらに向上し続けているというか、そこは単純にすごいなと思うんです。

浜田 ありがとうございます。

──そうあり続けるために、何か努力していることはありますか?

浜田 取り立てて皆さんと違う努力はしていないんです。ただ、歌を使ってお仕事をするということが子供の頃から当たり前だったので、喉を傷めないようにするとか、そういうことは無意識ながら、ずっと気にはしてきていると思いますね。

──デビュー前のお仕事時代から喉のケアなどは身についてらっしゃるんですね。同時に、声の出し方をコントロールすることも大事だと思いますが。

浜田 はい、そう思います。こういうスタイルの音楽ですし歌唱法なので、どうしても喉を傷めやすいですから。歌についてもメンテナンスに関しても、喉を傷めないギリギリのラインに自分を追い込んだりするので、そのせめぎ合いがあるんです。そこから超えることがないようにとは気をつけますよ。それでもたまにミスってしまうことも過去にはあったんですけど。

──過去に傷めた経験が?

浜田 もちろん、もう常時です。今はアーティストケアみたいなことも普通になっていて、それほどめちゃくちゃなスケジュールをアーティストに押し付けたりしないですけど、昔はひどかったので(笑)。それこそライブに関しても、“3日連チャン、1日休んで2日。また1日休んで3日”とか、そういうツアーでしたし、海外に行ったりすると、1週間で5本なんていうこともありました。そういうときは、喉の傷みがどのくらいなのかっていうのを自分で考えながら歌っていくというか、それが当たり前になってました。今はもう、そういう無理はしないスケジュールにしますね。昔は何度も何度も傷めてっていうのを繰り返していました。今もしますけど、たまに。

──歌い過ぎちゃったりとか?

浜田 本番で歌い過ぎることはそんなにないんですけど。私の場合3時間以上あるコンサートが多いので、メンテナンスとしてギリギリまで追い込まないと(ツアーで)持たなくなる。追い込む過程でたまにちょっとやっちゃうことがあります。気をつけてはいますけど。

──声は消耗品と考えて、ライブのリハーサルなどであまり声を出さない方もいます。

浜田 それは全然間違ってないんですけど、場合によりますね。ギリギリまで追い込む時期と、なるべく軽めに抑えておかないといけない時期っていうのがあるので。私はそのスケジュールとの兼ね合いで考えます。

──ツアー後半など、すでに同じセットリストで何ステージもやっていて、調子が上がってるタイミングだったらサウンドチェック程度で大丈夫とか?

浜田 自分の喉のウォーミングアップ具合で決める感じですかね。

──ライブの前のウォーミングアップは、どんなことをされていますか?

浜田 歳を重ねてからは、私はもう歌い過ぎぐらいのウォーミングアップをしないと、自分のベストのパフォーマンスが本番でできないので、本番前に何時間も歌います。他の方にはそれは薦めないですよ。決して良いことではないと思うんですけど、私はそれをしたほうがいいと自分で判断してるので。

──会場に入ってサウンドチェックして、そこから歌い込む?

浜田 サウンドチェックの前に、まず自分で1時間くらいウォーミングアップします。リハや本番も入れるとたぶん5〜6時間……もっと歌ってるかもしれないです。そのほうが現時点の自分にとっては、本番がより良くなるという結論でやってるんですけど。まぁ、時期にもよりますよね。若い頃はリハーサルをやってもやらなくても同じみたいに思っていた時期もあります。特に一時期テレビによく出ていた頃なんかは、リハでほとんど歌わずに本番の生放送をやってました。それは若いからゆえのことだったんだなと、今は思いますけど。

──現在は喉を温めていくというか、歌って調子を上げていくんですね。

浜田 はい、そうです。まずは独自のメソッドがあるので、それをずっとやっています。さらに演奏する曲のやりやすいところから入っていって、結果セットリストほぼ丸々やるくらいの声出しをします。

──それでも喉はヘタらないんですね。

浜田 その日に歌い過ぎてヘタるってことは、経験上ほぼないです。気管支に何か入っちゃったとか、そういうときは無理できないですけどね。調子が良くないときでも、後半になればなるほど戻っていくことのほうが多いので。

──ウォーミングアップでは、発声以外のストレッチとかリップロールとか、そういうこともされるんですか?

浜田 やったほうがいいんでしょうけど、あまり私はやらないです。やるとしてもアーッと口を開けて筋肉を伸ばすくらいですかね。そもそも、あまりリップロールは得意じゃないんですよ。

──食事や水分補給などで決めていることはありますか? 例えばライブの日はこのくらいの量しか摂らないとか?

浜田 特にこだわってはいないですけど、やっぱりライブが近づいてくると、そこそこ力のつくようなものをなるべく食べるようにはしています。水分補給については、本番中はけっこう摂ります。ステージの直前までに水分を摂っておくというよりも、声出しをする中で水分が必要だと思ったら摂るという感じですかね。ステージドリンクはだいたい常温のお水です。

──のど飴やハーブティーなどは?

浜田 のど飴は必ず常備しています……何て商品名でしたっけ? 仁丹の会社が出しているやつ。

──これですね!(と、ライターと編集者のふたりが同時にカバンから森下仁丹の“鼻・のど甜茶飴”を出す) これ、愛用されているアーティストさん、ものすごく多いですね。

浜田 あ、それです。でも、“これじゃなきゃいけない!”みたいなことは全然なくて、飴だったら何でもいいんですけど。スタッフが“龍角散のど飴”とか、そういうのを用意してくれることが多いですね。以前、歌番組の収録前に着色料多めの飴を平気で舐めていて、後日テレビで見たら舌が真っ黄色で恥ずかしい思いをしたことがあって(笑)。それからはなるべく色がつかないものを選ぶようにはしています。

──吸入器は使われます?

浜田 吸入器も使いますし、ツアー先にも加湿器と両方を持って行きますね。加湿器は超音波の気化式ではなく、熱い蒸気が出るタイプです。気化式の蒸気はやっぱり冷たいので。例えば寝ているときに炊いているわけですけど、私の場合は冷たい蒸気が喉には本当にダメなんですよ。喉が敏感なので冷たい蒸気が常時当たると炎症状態になっちゃうんですね。

これは蒸気だけじゃなくエアコンも同じです。例えば車でクーラーの冷たい風がバーっと出ますよね。それを直接当てると炎症を起こしちゃうんです。そういう敏感さがあるので、温度にはすごく気をつけてます。6度差があるとダメなんですね。昔、かかりつけのドクターで博士クラスのすごい方がいらして。その方が“6度の差があると炎症になる”ってずっとおっしゃっていたので、それは気をつけてます。

──6度差というのは、自分がいる室温や気温と当たる空気の温度との差ですか?

浜田 そうです。以前にそれで失敗をしたんですよ。ツアーのとき、車の助手席に座っていたら疲れてそのまま寝ちゃったことがあって。そこにエアコンがずっと当たっていたから会場に着いたらすごい炎症状態だったんです。そこからは6度差っていうのを気をつけてますね。

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