取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:西槇太一
このダンスも、あのダンスも、“あのビデオで観たやつだ!”って思ってほしくて
──踊りながら歌うアーティストの中でも、鞘師さんは歌っている最中も激しいダンスを踊り続けている印象があります。歌ううえでの振り付けは、どんなふうに考えていますか?
鞘師 本当はもうちょっと減らしたほうがいいとは思うんです。でも、他のアーティストさんを見ていると、ダンスパフォーマンスやミュージックビデオでは踊っているけど、ライブだとそこを踊らないという場面がよくあります。それは全然悪いことではないんですけど、私は“これを踊ってるのを見たかった”と思うことが正直あったりするんです。
だから抜き差しはしているんですけど、なるべくそう感じてほしくないなって。自分だけかもしれないんですけど、このダンスも、あのダンスも、“あのビデオで観たやつだ!”って思ってほしくて。
ライブで1時間半持たせることを考えたら踊らないほうがいいこともあるし、しんどそうに見えることもあると思うので、バランスを取りながら踊らないようにしている部分もあります。だけど、私が(他のアーティストが)踊りながら歌ってるのを観るのが好きだから、自分もそうしているんです。
──それを実現するために、できることを考えているんですね。
鞘師 実現できるところまでやろうと思います。もうちょっとやれることがあるのかなと考えながら、ひたすら歌いながら踊ることを繰り返しています。今の時期はライブがないんですけど、走るようにしていますね。
──ライブパフォーマンスではヘッドセットという選択肢もある中で、現在はハンドマイクを選んでいます。その理由はありますか?
鞘師 ヘッドセットをつけようかなと考えたことはあるんですよ。もしかしたら今後、ヘッドセットにする可能性もなくはないんですけど、ハンドマイクを持っていると歌ってるときに安心感があることと、息切れが激しいので、ヘッドセットだと息がマイクに入ってしまう。そこのバランスですね。今はマイクに向かって歌っている感覚がしっくりきてるんですけど、試行錯誤しています。
──ドキュメンタリーでは楽曲制作でミックスやマスタリングに立ち会っている場面もありましたが、これまでの活動の中では初めてでしたか?
鞘師 今まで一切なかったです。同じ曲でもプラグ(エフェクトのかけ方や順番)によって印象が全然変わることがわかりました。ふたつのパターンを出されたときに、全然違う印象なのが衝撃的で、すごく勉強になっています。
──これまでの作品では作詞をしていますが、今後は作曲にも興味があるというお話もありました。今はどんな楽器に触れているのですか?
鞘師 今はギターをやっています。コードをわかるようにしておきたいという目的があって。最初はアコギを買ったんですけど、弦が硬すぎて練習が進まないのでエレキを買いました。でも難しいので、いま先生を探しています(笑)。
──ギターは何を買ったんですか?
鞘師 スクワイヤーのストラトです。ボディが白で、黒のラメ系のピックガードです。
──家にはアンプがあるんですか?
鞘師 一応アンプもあります。ギターは最初、「Puzzle」を弾けるようになりたくて(バンドメンバーの村田)シゲさんに教えてもらったんですよ。でも、意外と難しくて苦戦中です。
──ガジェットやパソコンもお好きな鞘師さんですが、打ち込みなど、パソコンで曲を作っていくことにも興味はありますか?
鞘師 興味ありますし、ちょっとだけやったりしてます。初心者だったらGarageBandでもいいよって聞いたので、ちょっと遊んでみてますね。前にもGarageBandをいじったことがあったんですけど、そのときは曲の構造をまったく知らなかったんです。でも今は曲のデータをもらって、“あぁ、こんなことになってたんだ”と1個1個聴きながら真似してみたり、たまにカーソルで1個1個打っていったりしています。
──前にGarageBandを触ってみたのは、いつ頃だったのですか?
鞘師 13〜14歳のときだと思います。自分で初めてMacのパソコンを買って、触ってみたんです。
──もともと曲を作ることにも興味があったんですね。
鞘師 足を踏み入れるタイプではあるんですけど、そこから歩きだせないこともあって。でも、興味はありましたね。
──現在ドラマ『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』に出演中で、夏には舞台への出演も決まり演技のお仕事も増えています。歌詞を書くことは自分を解放することでもあって、演技も通ずる部分があるのかなと。鞘師さんの歌の表現が進化していく過程において“解放”がキーになっているのかなと思ったのですが、現在はどんな感覚ですか?
鞘師 まさにそうですね。今やっているドラマも自分とは全然違う役だけど、自分も同じような感情を持つことはあって。フォーカスしたらあの子になるとか、そういうことだと思うんです。
ひとつの感情に対して大きく向き合うことが、演技の面白さだと思います。でも、恥ずかしさとか、照れがなくなったらもっとできるのにって悔しく思うことが今もあるんですよ。客観的に自分を見すぎてしまうことがあるので、それでちょっと恥ずかしくなったり、抑えちゃうときがあったり。だんだん減ってきてるんですけど、自分にとっての課題だなと思いますね。