【インタビュー&撮り下ろし写真】鞘師里保、もう一度歌い踊ることを選んだ先に見えてきたもの。“歌いたい気持ちに正直になってもいいのかなって”

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:西槇太一

過去がないと今がないからこそ、形として残して向き合うことが大事

──ライブ『RIHO SAYASHI 1st LIVE 2021 DAYBREAK』は一度延期となり、本来はリリースよりライブが先だったところ、オリジナル作品を先に制作することになりましたが、ここで楽曲制作に携わることは最初からイメージしていましたか?

鞘師 心の底にはありました。そんなこと言っていいのかな?と思ってたんですけど、一緒に制作してくださるスタッフさんたちが私が思っていたことを同じように提案してくださって。あぁ、よかった!という気持ちでした(笑)。そこから始まりましたね。

──ライブの幕開けは、もう一度ステージに立つことを思い描きながら作ったという「BUTAI」ですが、実際にステージに立って披露した瞬間はどんな心境でしたか?

鞘師 あ、みんないる!という感覚でした。それまではファンの方のメッセージが文字で届いていたんですけど、鞘師里保として会うのは本当に何年ぶり……?という感じでしたし、会ったことがない方もたくさんいらしたので。

存在したんだ、実在したんだ、という感覚が強かったですね。「BUTAI」は舞台に立つ前の緊張感を歌詞に書いているんですけど、ライブ前はソワソワしていて、まさにその通りの気持ちでステージに立ちました。

──文字で届いていたファンの方の言葉は、どんなところで見ていましたか?

鞘師 私はネットに書かれることが怖いから、ツイッターとかは見ないようにしてるんです。だけど地元の友達に、友達なのに私のファンの子がいるんですよ(笑)。その子が“ツイッターでこんなことやってくれてるよ”とか、“こういう話があったよ”とか、良いことをいっぱい報告してくれました。

あとは事務所に届いた手紙を送っていただいたり、ブログが残っていたので、ブログのコメント欄に書いてくれる方がいたり。手段はいろいろありました。

──続く「Find Me Out」はバンドが入っていたことで、特にライブ映えする楽曲だと感じました。ライブではどんなふうに届けたいと考えていましたか?

鞘師 曲によってどう感じてほしいか、自分がどう感じたいかは違うんですけど、「Find Me Out」は巻き込む曲というよりも一方的に投げかける曲だと思っているんです。だから、ダンスパフォーマンスのフォーメーションもきっちりと決めていました。届け!という気持ちで踊って歌っていましたね。

──実際にライブで披露して、歌詞の感じ方が変化することはありますか?

鞘師 「Find Me Out」は最後のサビに向かって“まぁ、いっか”と気持ちが軽くなっていくような、感情の段階がある歌詞の書き方をしているんです。それが生演奏で届けられたことによって、歌詞に込めた気持ちがふわっと昇華されたような感覚に変わりました。

──ライブでは歌がさらにグルーヴィになっているように感じたのですが、踊りながら歌うことで、歌唱もまた違ったアプローチになるのでしょうか?

鞘師 そうだと思います。歌うだけだと近くでグルグルさせているのが、ダンスだと全身になって。ライブだと人がいるから、もっと空間に混ぜて歌うことができたんじゃないかなと思います。

──鞘師さんの場合、レコーディングとライブで歌う体勢にも違いがあると思うのですが、歌っているときの心境も違いますか?

鞘師 違うと思います。自分に対して思ってることを書くことが多いので、けっこう思い悩んでる歌詞が多いんですよ。言い方はあれなんですけど(笑)。ライブで歌うと、それを前向きに変換できる感覚があるので、歌い方でやっぱり変わるんだなと思いますね。

──「Simply Me」は《まだ不完全/単純に/待って得るものに感動できるのか》という歌詞と、鞘師さんの生き方と、パフォーマンスの目力などが重なって、より歌詞が伝わる曲だと感じました。ライブによって、さらに曲が育っていく感覚はありますか?

鞘師 今回『1st Live&Documentary DAYBREAK』を出させていただいて、この前はツアーもやっていたんですけど、そこですごく感じました。あぁ、こうやって育っていくんだなって、まさに思いました。

──今年初めのライブツアー『RIHO SAYASHI 1st LIVE TOUR 2022 Reflection』ですね。

鞘師 そうです。歌詞を書いたり楽曲制作をして、自分の思考に対しての意識を強く持つようになってから思ったんですけど、成長できた、進化できたと思ったときって、過去のものを観てほしくないって思うんですよ。

“このときより今、いいんですよ”って思うところがあるんですけど、やっぱり過去がないと今がないからこそ、それを形として残して向き合うことがすごく大事だなって。そう思うからこそ、『1st Live&Documentary DAYBREAK』も観てほしいです。1月のファーストツアーを終えた今、思うことですね。

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