【インタビュー&撮り下ろし写真】鞘師里保、もう一度歌い踊ることを選んだ先に見えてきたもの。“歌いたい気持ちに正直になってもいいのかなって”

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:西槇太一

私が歌いやすいと思ってた歌い方は、こういう原理だったんだって

──最近、歌う感覚が変化したのはどんな部分ですか?

鞘師 私の声質は金属的というか、キーンとしがちだと思っているんですけど、それゆえに喉が閉まってると言われたり、自分でもそう思うことがあって。それなら喉を開こうと意識して歌ってきたんですけど、最近それが逆効果だということに気づいたんです。

もちろん喉は開かないといけないんですけど、同時に声帯も開いて隙間ができてしまうと、余計に力を入れて声を出さないと綺麗な音にならない。そうすると、どんどん喉に力が入ってしまうんです。声帯は開いていて喉には力が入るという一番良くないパターンになってしまっていたんですよね。

──喉の開き方に気づいてから、変化したんですね。

鞘師 “喉を開いて歌う”ってどういうことかと言うと、声帯はピチッと閉まっているけど、その周りに空間があるということなんだと、最近になって感覚的に理解できたんです。

──マイクに対する声の当て方も変わりましたか?

鞘師 前は口元やマイクに(声を)乗せる前提でした。マイクに乗せないと歌えないぐらい、口元に執着していたんですよね。そうじゃなくて眉間のほうに当てるとか、そういうプロセスが掴めてきました。

──それはいろんなトレーナーさんに出会う中でヒントがあったのでしょうか?

鞘師 休業中に、“あ、なんかすごくラクに歌える! スコーンと行く!”と感じることがあって、どういうことなのか分析していました。

その後ヴォーカルトレーナーに出会って、またレッスンを受けているうちに、“あぁ、私が歌いやすいと思ってた歌い方は、こういう原理だったんだ!”って結びついたんです。今はプロセスがわかったから、そうなるように練習しようと思えるようになりました。

──休業中はカラオケに行って歌うこともあったんですよね。

鞘師 練習というほどではないのですが、留学を終えてから復帰するまでの間、実家にいた時期があったんですけど、そのときはカラオケに毎日行ってました。一日2〜3時間ぐらい。

──声帯まわりの感覚を掴むために分析しながら歌うときは、身体を動かしながら歌ってみたりもしましたか?

鞘師 身体を動かしながら歌ったりもしましたね。声帯がどうなっているのか意識しながら歌うと、声帯だけに集中できるようになるというか、悪い癖が出なくなる。声の通り道や身体の仕組みを、手で表わしながら歌うというトレーニングもやっていましたね。

──これまでにいろんなヴォイストレーナーに出会ってきたと思うのですが、やはりそれぞれアプローチの仕方は違いましたか?

鞘師 違いました。相性が大事だと思いました。今思うと自分なりに解釈していっぱい練習してきたんですけど、自分にとって感覚が掴みづらいと思うことが多かったのかなと。いろんな方と出会ったり、いろんなトレーニングをしてみて、今が一番自分に合っていると感じます。

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