取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:西槇太一
ライブで一緒の場所にいられて、何か言葉を伝えられたことはすごく大きかった
──ライブは、制作してきた楽曲がパフォーマンスする際に心からワクワクするものかを確認できる場でもあったのでしょうか?
鞘師 自分の感覚は間違ってなかったなと思いました。良くも悪くもライブがないといけない人間なので、自分が生きていることをすごく感じられた時間でしたね。“歌ってるけど、しゃべってる”という感覚でパフォーマンスできました。
──「あの日約束したから」はファンの方に手紙を書くような気持ちで歌詞を書いたということですが、ライブではどんなイメージが浮かんでいましたか?
鞘師 「あの日約束したから」は最初に作詞した曲なんですけど、歌うことによって“あぁ、あのときはそんなふうに思ってたんだ”と考えることができるんです。この曲に限らず歌っているときは、“人としてあの頃からは一皮むけたかな”と感じることがあるんですが、この曲は特に、歌っていて変わったなぁと思いました。
──歌いながらイメージしている風景が、少しずつ変化しているんですね。
鞘師 作詞した当時、考えていたシチュエーションやモチーフがあったんですけど、それがだんだん変わっています。時期によっても連想するモチーフが変わっていくんだろうなぁと感じる曲でした。
──『1st Live&Documentary DAYBREAK』にはMCもたっぷり収録されていますが、鞘師さんがずっとファンの方に会いたかったこと、話したかったことがすごく伝わってきます。
鞘師 私は誰に対しても発言に慎重で、仕事でも、友達といても、“こういうこと言って大丈夫かな?”と思いながらしゃべるので、人とあんまり関わらないようにしようと考える時期もあったんです。
でも、最近はやっぱり人と生きているんだなって感じます。人と言葉で会話する状況が、自分を作ってくれてるんだと思うんです。だからライブで一緒の場所にいられて、何か言葉を伝えられたことはすごく大きかったですね。
──「Puzzle」は友達に対して書いた歌詞ということですが、ステージではしなやかな女性らしさも感じました。楽曲ごとに、表情などの魅せ方を考える過程はありますか?
鞘師 表情はそのときの感覚に任せていますね。振り付けなど基本的な骨組みはあるんですけど、歌に関して生まれる感情や表情はもう、そのときに任せています。
──「LAZER」は制作段階ではずっと避けていた苦手なキーだったと。その課題をクリアしていくレコーディングの様子もドキュメンタリーに収められていますが、ライブを重ねる中で、このキーに対する向き合い方は変わってきていますか?
鞘師 もう、“うわぁー”って思わなくなりました。昔の私だったら、気持ちも喉もギュッとなっていたんですけど、今はすごく減りましたね。もちろんまだ訓練しなきゃいけないと思うんですけど、そのキーに関しては全然変わりました。それだけで声が出やすくなったので、それこそ本当にメンタルとの関わりだなと思います。
──メンタルトレーニングもヴォーカルに重要な部分だと思うのですが、普段からメンタルトレーニングのためにやっていることはありますか?
鞘師 マネージャーさんと話すことですね。私の悪い癖を紐解いて、その癖が出てしまったときに、“そうやって考えるからだよ”と言ってくれたりします。
──人と会話しながら解けていったり、気づいていくこともあるんですね。
鞘師 そうですね。やっぱり自分ひとりで考えたらわからないことがいっぱいあります。
──今年1月のツアー『RIHO SAYASHI 1st LIVE TOUR 2022 Reflection』ではバンドなしでダンサーを増やすスタイルでしたが、『RIHO SAYASHI 1st LIVE 2021 DAYBREAK』のバンド形態とはどんな違いを感じますか?
鞘師 ライブを観てもらううえでは、どこに視点を置いてもらうかもすごく大事だと思っています。バンドもダンサーもいたらすごく豪華だとは思うんですけど、私の場合はダンスが激しいので、今回はダンスパフォーマンスを見てほしいと思ってこの形にしました。
私としては、『RIHO SAYASHI 1st LIVE 2021 DAYBREAK』は音楽を作っている仲間がいてくれたこと、ツアー『RIHO SAYASHI 1st LIVE TOUR 2022 Reflection』では一緒にパフォーマンスを作ってくれた仲間がいてくれたことが、すごく大きかったです。頼れる場所が違うので勉強になることがあったし、そばにいてくれる人がいてよかったなと思いました。
あとは、楽曲制作のときに作曲家の方々がこだわって音を選んでくれていることを感じたので、ツアー『RIHO SAYASHI 1st LIVE TOUR 2022 Reflection』ではそれを1回そのまま届けたいという思いもありました。