THE BEAT GARDEN、発声法の変化と女性目線の最新曲を語る。“10年経ってやっと、3人の個性がひとつになった”

取材・文:後藤寛子

意識しないで3人が同時に“今の発声はぴったり合ったね”って

──作曲は3人で手掛けたということですが、どのように作っていったんですか?

U 最初に、今よりBPM20くらいゆっくりにしたバラードバージョンのデモをREIが出してくれて。3人の中で、春の曲だからもう少し疾走感がある曲にしたいという気持ちがあったので、僕がBPM上げてアレンジしていって。最後に、僕が作ったものをMASATOに渡して“メロディとか気になるところがあったら変えてほしい”って仕上げてもらいました。

MASATO 最後にどこまで手を加えていいかを確認したら、Uさんが“ぶち壊しちゃってください”と言ってくれたので。じゃあドラマチックにしちゃおうと思って、繰り返しの節とかサビが単調にならないように起伏をつけていった感じですね。まあ、ちょっとですけど。     

U いや、けっこう変えてたよ(笑)。でも、それを望んで渡したので。具体的なところで言うと、それぞれ歌う人ごとにメロディがちょっと変わったりして、3ヴォーカルの個性を出しやすくしてくれたんですよね。ダンスをやっていたREIがいて、バンドをやっていた僕がいて、J-POPが好きなMASATOがいて、3人とも、歌もリズムの取り方も違うので。だから、3人でコライトするのはTHE BEAT GARDENに向いてるんだなってすごく思いました。

REI 僕としても、みんなそれぞれの良い部分が重なって、最初の曲がよりブラッシュアップされている感覚がありました。さすがです!って思いました(笑)。

──3人の個性という点を分析すると、やっぱりルーツの影響が大きいですか?

U そうですね。僕はもともとバンドをやっていて、力強く歌うアニソンが好きだったり、とにかくライブでも前に出るタイプなので、ロックな曲が合うんですよね。だから、エモーショナルに盛り上がる2回し目のサビとかを担当することが多いです。REIくんはダンスをずっとやっていて。うしろノリでリズムを取るので、普段のステージングもそうだし、歌でも僕と全然違う拍のとり方をしてる部分があって、一番のAメロとか導入部分を歌うと心地がいいんです。性格的にも、そんなに気を使わなくてもいいよっていうぐらい気遣いのできるタイプなので、優しい歌と、ひとつひとつの言葉が聴き取りやすいのはREIですね。

MASATOは、EXILEさんとかAIさんとかのJ-POP、R&Bが好きなのもあって、ちょっと濡れ感のある艶っぽい声で。熱い性格なんですけど、ただ熱いだけじゃなくて優しさも持っているので、歌声にも一方的な感情じゃなく多面的な感情で返してくれるような繊細さがあると思います。

MASATO ありがたいです! 逆にUさんの声に関して言うと、まず先天的なものだと思うんですけど、シンプルにいい声ですし、すごく声に力がありますよね。声質とか、倍音とか、天性のものを持っていると思います。曲を作るときも、Uさんはハイトーンが出るので、ここでガツンとパワーワードやパワーメロディを使いたいなというところは、Uさんのキーに設定して作ったりもします。

U

──本当に三者三様の個性なんですね。グループとしてやってきて、逆に難しさを感じたことはありますか?

U めちゃめちゃありますね。キーもルーツも違うし、発声方法も違ったんですよ。僕は鼻腔共鳴という鼻を響かせる発声方法のヴォイストレーニングをしていたんですけど、ふたりと出会った専門学校では、チェストヴォイス気味な、声帯を思いっきり震わすタイプの発声をしていて。僕はあとからその専門学校に通ったから、ふたりとは基本が違って、ユニゾンしたときに声の出どころが全然違ったんです。譜割を揃えてもブレスを揃えてもふたりと揃わないので、声量で微調節したりしていたんですけど、僕らの激しいライブでそれを気にしながら歌うのがすごく難しかったんですよね。

それで、最近僕が通っていたヴォイストレーニングの先生にふたりが行き始めて鼻腔共鳴の発声をするようになり、僕は逆にチェストヴォイスを自分で研究したりして。そうやってそれぞれの帳尻合わせをして……まさにこの前のライブだったんですけど、意識しないで3人が同時に“今の発声はぴったり合ったね”って思えた瞬間があったんですよ。

REI 「遠距離恋愛」を歌ったときですよね。

MASATO 完全に一本になってましたね。お客さんにも伝わってましたから。発声方法がどうとか専門知識からではなく、“今日の「遠距離恋愛」で、なぜかわからないけど本当に涙が出ました”みたいなメッセージが絶えなくて。伝わるんだねって話してました。

U 10年経って、やっとだったんですよ。それくらい難しかったし、リズムに関してもお互いに合わせることが必要だし、本当に仲良くないとできないことだなと思います。

MASATO ヴォーカリストって、けっこう主張が激しいじゃないですか。でも、その中で相手の良いところを尊重して、時には自分が折れないといけない。僕らもそれに気づくまでに時間がかかりましたし、やっぱり折れるまでに時間がかかりました。遠回りはしましたけど、これからもっと大きな舞台に出ていく途中で気づけたのはよかったと思います。

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