THE BEAT GARDEN、発声法の変化と女性目線の最新曲を語る。“10年経ってやっと、3人の個性がひとつになった”

取材・文:後藤寛子

U、REI、MASATOという3ヴォーカルを擁し、2012年に大阪で結成されたTHE BEAT GARDEN。EDR(エレクトロニック・ダンスロック)を掲げて2016年にメジャーデビューを果たし、どんどん音楽性の幅を拡げながら独自の活動を展開してきた。バンドでもダンスグループでもないTHE BEAT GARDENの軸となるのは、それぞれ違う個性を持つ3人の歌声。自他共に認める三者三様の声を時にぶつけ合って磨き上げ、時に共鳴させて美しいハーモニーを生み出す、そのバランスは唯一無二だ。

4月25日に配信リリースされたポップで切ない春のラブソング「それなのにねぇなんで?」は、お互いを知り尽くした3人でコライトして作り上げた1曲。この曲が生まれた経緯、さらに3ヴォーカルならではの悩みや変遷を振り返ってじっくり語ってもらった。

MASATOが頭のサビを歌う歌割りはメジャーデビューしてから初めて

──「それなのにねぇなんで?」というタイトルと女性目線の歌詞が印象的ですが、作詞をしたUさんはどんなイメージで書いていったんですか?

U 先にメロディがあって、「なんで」という言葉がハマるなあと思ったんです。そこから、春の別れのラブソングを書くことは決めていたので、この主人公がどうして「なんで」と思ったのか、みたいな流れで考えていきました。本当に好きな人を忘れたいとき、いい思い出を思い出すと余計苦しくなるから、嫌なところを思い出そうとするかなと思って、そういう世界観になっています。

──情景が思い浮かぶ描写がリアルですよね。

REI 僕は2番のAメロを歌わせてもらっているんですけど、《切り過ぎた髪も変わる爪も褒めてくれていた/あれも無理して言ったの?/それすらもうわからない》とか、すごく気持ちが伝わってきますよね。

U たぶん、相手の男の人は素直に褒めていたんだと思うんですよね。でも、別れを告げられると、全部嘘に聞こえちゃうし、そう思わないと苦しいっていう気持ちになるのかなと思って書きました。

──Uさんから、歌詞の意味や背景をふたりに伝えたりされるんですか?

U MASATOもREIも、自分なりの解釈でレコーディングの前に落とし込んでくるタイプですね。疑問があったらふたりから確認してくれるので、それに答えることはありますけど、結果的に歌い方に対して違うなって思ったことはほとんどないです。     

MASATO 僕、今回は試したんですよ。あえてUさんに確認せずに自分の解釈で歌ってみたんですけど、何も言われなかったので、そういう解釈もありだと捉えてくれたのかなと思います。特に、《それなのにねぇなんで?》の部分では、歌詞のストーリーの中での感情の変化に合わせた歌い分けを意識しました。この言葉って、セリフとしても読めるし、胸の内のモノローグでもあるじゃないですか。なので、隣にいるのに言えなかった言葉、心の中で思った言葉、隣にいて口に出してしまった言葉とか、いろいろ自分の中で変化を付けて歌いました。

──なるほど。繊細な女心を汲みましたね。

MASATO いやあ、女心はわからないんですよ。僕は失恋するときっぱり諦めるタイプですし(笑)。

U 最初に僕が歌ったものをREIとMASATOに送ったんですけど、僕の《それなのにねぇなんで?》は、諦めが入るというか、もう嫌で仕方ないような感じだったんです。でもMASATOの場合は、別れた彼のことも自分の気持ちもちゃんと尊重できていて、前を向き始めている状態な感じがして。きっとそっちの解釈のほうが主人公の子は幸せだと思うし、本当に人によって違うんだなあと思いました。同じグループ内でそういう発見があったのは嬉しいですね。日頃からいろんなものに対する捉え方も違って、MASATOはさっぱりしたタイプだけど、僕はちょっと湿度高めなので。

REI 僕も、まさにふたりの性格が反映されてるなあと思いました。

U 今回は、一旦それぞれフルで歌って、そこから歌割りを考えたんですよ。というのも、コロナ禍の間に僕が喉を壊してしまったんですけど、そのときにREIとMASATOがYouTubeにカバー曲をあげたりしていた中で、いい意味で3人の個性がわかってきたので。改めて歌割りについて考えたかったんですよね。いろんなパターンを考えて、結果的にMASATOが頭のサビを歌うという歌割りはメジャーデビューしてから初めてです。

MASATO

──そのやり方でやってみていかがでしたか?

REI シンプルに楽しかったという感想がひとつと、やっぱり1曲歌う中で自分の表現を考えるので勉強にもなりました。自分のいいところと、悪いところも含めて見直せた感覚はありますね。

MASATO いつもは歌割りを決めてから録るので、バトンみたいに感情を引き継ぐんですけど。今回は自分で1曲通してストーリーを立てていったので、ちょっと熱くなりすぎるところもありましたね。めちゃくちゃ気持ち入れて歌ったと思っていたら“いや、そんなに熱くなくて大丈夫かも”って言われたりしたぐらい(笑)。でも、そうやって組み立ててみて発見もありました。

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