【インタビュー】遥海、1stアルバム『My Heartbeat』に込めた願いと“歌う前のルーティン”を語る

2022.02.10

取材・文:田代 智衣里(Vocal Magazine Web)

私は自分で考えるのが好きだったりするので、そこをすごく大事にしてくれて。本当に松浦さん、私の声をわかってくれてるなと思います。

──アルバイトをしていたマクドナルドで、クルーが参加できる歌唱コンテストに出場したことをきっかけに、オーディションに応募するなどの音楽活動を始めたというエピソードも印象的です。

遥海 マクドナルドで歌った曲がホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」って曲なんですけど、そのとき(アップテンポの)ポップスを歌うのがあんまり好きじゃなかったんですよ。どっちかって言ったら、ディーヴァの壮大な曲が好きで。歌ってるときに自分の中での満足感があるので、それしか歌ってこなかったんですね。ちっちゃいときからずっと。ゴスペルを歌ってきた人間だから、やっぱりその満たされてる感じ(を求めて)。

でも、“ポップスを歌えなくて大丈夫?”みたいな気持ちが出てきて、初めてポップスのLittle Mixの「Wings」っていう曲で沖縄にお母さんと(オーディションを)受けに行ったりしました。ずっとバラードしかできなかったので、今の自分に至るまでけっこういろんなものを取り入れたなって。もともと聴いてたものだったのかもしれないけど、できることだけに手を出したいとか、自分のコンフォートゾーン(快適な空間)にいたから、手が出なかったんですよ。だから一歩ずつ出て行って、ポップスだったり、ダンスだったり、演技だったり、声優だったり。いろんなことをして取り入れて、だから今があるかなって。

──テレビアニメ『BABY-HAMITANG』では、主人公・ベイビーハミタン役で声優デビューもされましたね。

遥海 もう不安で仕方がなくて、眠れない日々。大変でした。自分のしゃべってる声と歌声が全然違うっていうコンプレックスを持ってたので、“私が声優で大丈夫?”みたいな。でも、自分がレコーディングする前日に他の声優さんたちのレコーディングに立ち会ってみたりと、想像を膨らませて行きました。前から日本のアニメを観るのも好きで、そのおかげで日本語を覚えられた自分もいるから、また何か観たりして“こういうとき、気持ちってこうやって伝えるんだ”って。頑張って自分なりに研究して勉強して俳優・声優さんの声を聴いて。不安がずっとあったんですけど、すごく楽しかったです。

自分の普段の声、しゃべり声の居場所を見つけられてよかったなって感じます。別にコンプレックスって思わなきゃいいじゃん!って気持ちになったので、もっと自分を好きでいようって。本当にいろんな方が支えてくれて、できあがった作品なので、ぜひ観てほしいです。頑張って赤ちゃんの声をやってます。

──コーラスワークは松浦晃久さんと話し合いながら、遥海さんの意見を取り入れている様子がYouTubeのドキュメンタリーにも収められていますね。

遥海 はい。松浦さんが、“こうしてほしい”じゃなくて、“どう歌いたい?”と声をかけてくれる人なので、こうやって歌いたいって(伝えます)。“じゃあ今歌った感じって、そういうふうになってる?”みたいな。答えを出してくれるっていうより、答えが出るために声をかけてくれるので、そのアドバイスが一番わかりやすいというか。私は自分で考えるのが好きだったりするので、そこをすごく大事にしてくれて。本当に松浦さん、私の声をわかってくれてるなと思います。

昔はすごくハモりがヘタだったんです。ゴスペルにいたけど、いつもソロの曲ばっかり歌ってたから。でも、今回のレコーディングのおかげで身に付いたというか、ハモれるようになりました。けっこう日にちをかけてやった中で、コーラスが一番大変でしたね。

──「Be Alright」、「Pride」、「Don’t want your love」、「WEAK」など多くの楽曲で関わっているYui Muginoさんとは、どんなやり取りをしましたか? 特に「Be Alright」は明るく幕開けするようなエネルギーを感じました。

遥海 「Be Alright」は、すごく楽しい曲じゃないですか。元気づけてくれるというか。それでエネルギーをすごく使ったんですよ。録っていた頃はコロナ禍でデビューもうまくいかない、どこにも行けないみたいな感じだったので、“もう無理……1年分のHAPPY使っちゃった、もう歌えない”って諦めちゃいそうだったんです。でも、Yuiさんはお姉ちゃんみたいな存在なので、“コロナ渦が明けたら何したい?”って言葉をかけてくれたり、気持ちを上げてくれました。いつもヴォーカル・ディレクションするときは、お姉ちゃんとしゃべってる感覚ですね。

──具体的に“こんなふうに歌って”とディレクションされることはありますか?

遥海 たまにしかないんですよね。やっぱり自分を出すので、それはちゃんとわかってくれます。松浦さんも一緒なんですけど、パワーが必要な部分はパワー、そうじゃない部分は1番と2番の差別化、みたいな。“1番は抑えて、何%で歌って”と言ってくれる人たちなので。だから“こうやって歌って”と言われることはあんまりないですね。

──「Don’t want your love」はどうでしたか?

遥海 この曲は21歳〜22歳の頃からライブで歌ってきた曲で、当時のライブでもYuiさんがバックコーラスをやってくれていたんですね。そういう繋がりがあって今回のディレクションもしてくれました。私の中ではレコーディング前に自分の中で25歳の遥海が歌う「Don’t want your love」もできあがってたから、それをサポートしてもらった感じです。“ここのアドリブはこうしたらいいんじゃない?”、“ここにピークの部分を入れたいと思うんだけど、どう?”って。みんな、ちゃんと遥海の気持ちを大事にしてくれますね。

──「スナビキソウ」は、遥海さんと磯貝一樹さんのアコースティックギターだけで構成された曲。こちらは一発録りだったそうですね。

遥海 はい、ライブ感が欲しいなと思って。ドアはあったんですけど、磯貝さんは目の前にいて向かい合って歌いました。この曲は自分の生い立ちを歌ってるんですが、そのときに出てくる感情だったり、“いや、違う”と思うことがあっても、それが意外といい味だったりするのを、ちゃんと大事にしていきたいという思いを込めた曲です。初めての体験でしたが、ああいう録り方もいいなと思いました。またできたらいいなって思いますね。

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