【インタビュー】セツコ(空白ごっこ)、進化し続ける歌表現の魅力に迫る

インタビュー:鈴木 瑞穂(Vocal Magazine Web)
ライブ写真:SEINA

初めてのライブ『全下北沢ツアー』を完遂しての圧倒的な成長         

──先日、空白ごっこ初のツアー『全下北沢ツアー』を終えられたばかりですが、毎回違うバンドとの対バン形式で、出番は空白ごっこがあとでしたよね。気持ちやパフォーマンスに影響はありましたか?

セツコ そもそもあまり個人でライブに行ったことがなくて。なので、ライブやバンドの様子を新鮮な気持ちで見てたんですけど、ゲストバンドの方がパフォーマンスで堂々としてる感じとか、お客さんが感極まって泣いたり笑顔で飛び跳ねてたりっていうのを見ると、やっぱりとても不安になっちゃって。熱量のあるバンドの方々に呑まれちゃいけない、自分たちが主催だから負けたら元も子もない、でも不安……。という感じで、特に前半は影響を受けちゃう部分もありました。

──セツコさんのそれまでのライブ経験は?

セツコ ハリーさん主催のライブなどで、ちらっとゲスト出演した程度で、ほとんどなかったです。

──どんな練習をしてツアーに備えましたか?

セツコ ヴォーカルの先生も交えてアドバイスいただいたり、個人練をしたり、家で筋トレとか走ったり。とにかく聴きに来てくれる方々に絶望されたくないという一心で(笑)。音源と違いすぎると思われてしまったらどうしようって怖かったです。今までけっこうぶっつけ本番でやっちゃうタイプだったのですが、今回ははちゃんとしっかり備えました。ちゃんと私、頑張ってましたよね……?(ハリーさんをチラ見)

針原翼 頑張ってた、頑張ってた(笑)。

セツコ   「運命開花」の最後のフェイクとかもやっぱり難しいので、レコーディングではできてたけど、いざ一発で出せるのか?といった“安定さ”は気にしていました。音源だと良く聴こえる部分も生だと少しふわふわしてるなという課題感も自分の中ではあったので、安定感を重視して練習しました。

──第1回目の下北沢ERA公演ではその成果が?

セツコ 出なかったですね……。お客さんと初めて対面する緊張もあるし、レコーディングでは録り直しできたけどライブは一発で、しかも、期待してくれているお客さんの前でっていうプレッシャーがやっぱり強くて。いざ立ったら棒立ちで歌うわけにもいかないし、ここは(音を)はずしちゃいけないとか、いろいろ考えなきゃいけないことがあって、たくさん練習してきたけど力任せで歌っちゃってたと思います。ヴォーカルの先生から“下半身に重心を置く意識で歌うように”って教わってたんですけど、肩に力が入っちゃって胸の辺りでずっと歌っている感じでした。ただ、やってる本人は人前で歌えたことの安心感というか満足感みたいなのもあって、力任せで歌っちゃってることすら気づかなくて。“何かちょっと違うな……”という感覚が前半は続いていましたね。

──第6回目の下北沢CLUB Que公演あたりから、喉が痛くなくなってきたそうで……。

セツコ はい。実はツアー前半ではイヤモニ(イン・イヤー・モニター)を付けてなかったんですけど、後半から試してみようと。それまで音をどこで拾えば良いかわからなかったんですが、イヤモニをつけたら劇的に変わってすごく歌いやすくなりました。ちゃんとクリック音も聴こえて、普段のレコーディングに近い状態に持っていけたというか。それで、良くなってきたという安心感から緊張しなくなってきて、ちゃんと歌う時の要点を意識しながら歌えるようになっていきましたね。

──第8回目の下北沢MOSAiCの時には、ヴォーカルの先生が観にいらしたそうですが、どんなアドバイスがありましたか?

セツコ もう、一曲一曲全部にありました。B5くらいの紙3〜4枚にびっしり書き込んでくださって。“重心が身体の作り的に上になっちゃうから、体幹と下腹部やお尻、腰の筋トレが必要だね”とか、私緊張すると髪の毛を触る癖があって、“お客さんに伝わるから髪の毛は触らないこと!”とか。あとは、自分はお客さんにとってはフロントマンであり教祖のような存在なわけだから、前に出る人の心得みたいなものを詰め込んでくれました。歌い方だけでなく手の使い方などの動作ひとつひとつも細かく指示をくださって、わかりやすかったです。なのでそれをこなせるようにまた個人練に入りました。要点をたくさん入れ込んでもらえたことで、自分に合った型にはめながら9回目以降ができたので、そこで新たに自信がつきました。“パフォーマンスもちょっと変わったね”ってファンの方からメッセージをいただいたりしましたね。

──体調の管理や睡眠など、ツアー中に気をつけていたことは?

セツコ コロナや風邪の心配もあったので、きちんと湯船に浸かってました。ハリーさんが“絶対に浸かれ”って言ってたんですよ(笑)。あとは歌ったあと、炎症を抑えるためにマヌカハニーを舐めたり、よく耳鼻科とかでやる吸入器をライブ前後で1日3〜4回やったりストレッチしたり。コロナもあるし私が一番倒れちゃいけない人だから、とにかく喉と身体のケアには気を使ってました。

──11月、12月と、下北沢を飛び越え新たな場所でのライブも予定されていますよね。楽しみにされているファンの方々に向けて、メッセージをお願いします。

セツコ 私にとっても“初めてのサーキット・イベント、初めての大阪”といった、引き続き初めてづくしなライブになってます(笑)。サーキット・イベントは特に空白ごっこのことを知らない人も大勢いると思うので、そういう人たちにどう振り向いてもらえるかとか、初めて会う人たちにどう高揚感をお届けできるかとか、心を掴むには大事になってくるかなと思います。『全下北沢ツアー』で積んだ経験から、さらに頑張れればいいなって思ってるので、ぜひ、遊びに行く感覚で来てくれたら嬉しいです。

教えて!ヴォーカリストの“こだわり”

インタビューはお楽しみいただけましたでしょうか? ここでは、さらなるヴォーカリストの気になる“こだわり”を深堀り! 今回はハリーさんにも参加いただきました。

●ノドのケア
セツコ 若干違和感を感じたら、とりあえず龍角散の飴を舐めますね。普通に青と白のパッケージのやつです(龍角散ののどすっきり飴)。スタジオにもあるし家にもあるし、コンビニですぐ買えるので。“今日ちょっとノド使いすぎちゃったな”って時は、マヌカハニーのボトルあるじゃないですか、ペースト状になってるやつ。あれをスプーン一杯舐めるようしたりします。あとは、うがいをちゃんとしたり、お湯に浸かって蒸気当てるようにしたり、マスクつけたりとかですかね。 “なんか今日は(声が)ガサガサしてんな”って時は、揚げ物とか、お菓子を食べて油分を摂るようにはしてます。あとはハリーさんにいただいた漢方。ノドだけじゃなくて体調全般に気をつけないといけないんで……。でも、めちゃくちゃ苦いんですよ(笑)。

針原翼 漢方の中では、ササクールAが一番ですね。処方箋がいるわけではないですが、漢方の薬剤師がいるところじゃないと買えないです。

●ステージドリンク
セツコ 炭酸水とか三ツ矢サイダーとかデカビタCとか、いろいろ用意してもらったんですけど、普段からあまりジュースは飲まないしステージで開けるのも面倒くさいし(笑)。結局、ツアーでは普通に水しか飲まなかったです。水は“南アルプスの天然水”が好きですが、他のも美味しいんで、あまりこだわりはないですね。

●マイク
針原翼 レコーディングでは、まだいろいろ試している最中で、いろいろ使っています。昨年リリースした1st EP『A little bit』は大体ノイマンU87Aiで録りました。今回は「カレーフェスティバル〜パパティア賛歌〜」がヴィンテージのノイマンU67で、他はTELEFUNKEN U47かな。もちろんレンタルですよ。高価なマイクですからね(笑)。「リルビィ」とか最初の頃はU87Aiを使って“パリッと明るめで!”みたいな感じはありましたけど、奥行きとか彼女の声の立体感を試してみたいなってことで、最近はU47が多いですかね。ライブでは、最初はゼンハイザーのe935を使ってました。ローにパンチが効いていてパワフルな感じなんです。ただ、ツアーの途中から姉妹機種のe945も試したら、“そっちのほうが歌いやすい、声が抜ける感じがする”ということだったので、後半からe945に変えました。まあ、多少個体差もあるのかなという気がしますけどね。

●プリアンプ、コンプレッサー、エフェクト
針原翼 ちょっとガッツがあってロックっぽい感じの曲だと、プリアンプはAPI  512Cが多いです。コンプレッサーはUnivarsal Audioの現行1176と、ヴィンテージでステレオ仕様のUREI 1178。フォーカスライトの1チャンネルのISA 110もきれいに録れるので、このあたりを組み合わせました。イコライザーやディレイのかけ録りはしないですね。リバーブをうっすらかけておくぐらいかな。

●歌詞カード
セツコ レコーディングする時は、歌詞カードにいろいろ書き込みますね。絵とか、歌で注意するところとか……。こんなん書いてます(写真)。最後に大きく「子音をたたせよう!」って書いてあります(笑)。


リリース情報

2nd EP『開花』
2021年10月20日(水)発売

【初回限定版(CD+DVD)】
2,750円(税込)/PCCA-06060

【通常盤(CD ONLY)】
2,200円(税込)/PCCA-06061

【PSCS限定盤 (CD+DVD+Goods)】3,850円(税込)/SCCA-00117

<収録曲>
01.運命開花
02.ストロボ
03.ハウる
04.プレイボタン
05.カレーフェスティバル〜パパティア賛歌〜
06.シャウりータイム
07.天

<DVD収録内容>
オリジナル映像コンテンツ特典収録

<店舗別特典>
■Amazon.co.jp限定オリジナル特典
全下北沢ツアートーク編DVD
初回限定盤
通常盤
■TOWER RECORDS限定オリジナル特典
全下北沢ツアーLIVE編CD
初回限定盤
通常盤
■ローソンHMV限定オリジナル特典
セツコの複製サイン入りオリジナルステッカー
初回限定盤
通常盤
■TSUTAYA RECORDS限定オリジナル特典
複製コメント入りオリジナルポストカード
初回限定盤
通常盤
■アニメイト限定特典
「ハウる」特製缶バッジ
初回限定盤
通常盤
■楽天Books限定オリジナル特典
クリアファイル
初回限定盤
通常盤
■応援店
オリジナルステッカー
■PCSC
初回限定盤
通常盤
PCSC盤

ライブ情報

『KNOCKOUT FES 2021 autumn 』
日時:2021年11月6日(土)
会場:SHELTER / MOSAiC / 近松 / 251 / ReG / WAVER / ろくでもない夜 / LIVEHOLIC / Flowers Loft / ERA / mona records / DY CUBE
・下北沢のライブハウス複数会場による往来自由イベントになります。
・空白ごっこはSHELTER30周年記念ステージに出演します。
出演:<SHELTER30周年記念ステージ> kalmia / CASPA / 空白ごっこ / Halujio / 桃色ドロシー / YUTORI-SEDAI / ラクルイノヨルニ

『夜韻-Yoin- Presents 東名阪クアトロTOUR』
日程:2021年11月16日(火)
会場:渋谷クラブクアトロ
出演:夜韻-Yoin- / MAKE OWN LIFE / あたらよ / 空白ごっこ

『ざわめきプレイリスト -MINAMI WHEEL EDITION-』
日程:2021年12月4日(土)
会場:心斎橋JANUS
出演:anewhite、空白ごっこ and more


プロフィール

セツコ(空白ごっこ)
下北沢を拠点とし、インターネットシーンを中心に活動中の「空白ごっこ」のヴォーカル。
楽曲のエネルギーに負けない胸に刺さるパワフルでエモーショナルなヴォーカルを「セツコ」が担当し、 メインコンポーザーとして「koyori」「針原翼」がそれぞれの特徴を活かした楽曲を制作。
何もないけど何かある「空(くう)」の世界観を「心」に例えて、 その精神世界で遊ぶ(ごっこする)ことをコンセプトにした音楽プロジェクト。
2021年元日にリリースした2nd EP『開花』収録曲の「運命開花」のMVが動画配信サイトで120万回再生されるなど注目を集めている。
2021年は下北沢の老舗ライブハウス10箇所を回る初のライブツアー『全下北沢ツアー』を完遂し、ライブアーティストとしても活動の幅を広げている。

オフィシャルサイト

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