【インタビュー】セツコ(空白ごっこ)、進化し続ける歌表現の魅力に迫る

2021.11.8

インタビュー:鈴木 瑞穂(Vocal Magazine Web)
ライブ写真:SEINA

10月20日、空白ごっこが2nd EP『開花』をリリースした。“ネット発アーティスト”として2019年から精力的に活動を続けてきた彼らは、今年、初のライブ・ツアーである『全下北沢ツアー』を完遂し、ライブ・アーティストとしての成長を遂げた。

『開花』は、今までの“空白ごっこらしさ”を昇華させつつも、ヴォーカリスト、セツコの進化とバンドの新たな可能性を感じさせる作品集となっている。今回、メンバーでコンポーザーの針原翼も同席のもと、セツコにインタビューを実施。エモーショナルな歌声で人々を魅了し続ける彼女の歌声、そして進化について紐解いていく。

きっかけは“歌ってみた”

──最初に、セツコさんの歌唱スタイルを形づくったルーツから聞かせてください。

セツコ 小さい頃はピアノを習っていて、音を取るために声を出してみたりといった程度で、どちらかと言えば歌との触れ合いは少ないほうだったと思います。中学生くらいの時に“歌い手”とか“歌ってみた”という文化を知って、もともと小学生の頃にVOCALOIDにハマってた時期もあったので、ちょっとやってみようかなと。マイクとインターフェースを買って、“歌ってみた”を初めて投稿したのが中学3年生の終わりぐらい。そこから趣味で歌っていくようになりました。

──当時宅録で使っていたマイク、オーディオ・インターフェースは?

セツコ マイクがMXLのV67Gで、インターフェースがTASCAMのUS-366です。機材好きな友達に教えてもらったりして、少ない予算内で頑張って最低限を揃えた感じですね。

──セツコさんの家は、大声で歌える環境でしたか?

セツコ 家族がいない間にチラッと歌って、帰ってきたらすぐやめる、みたいな感じでしたね。うるさいって言われてクローゼットで歌ったこともあります(笑)。でも、クローゼットの位置とパソコンを置ける位置が遠くて、あまりうまく歌えなかったので普通に戻しました。

──その頃に聴いていたアーティストやボカロ曲は?

セツコ クリープハイプ、My Hair is Bad、Mr. ふぉるて、相対性理論とか、邦ロック系を友達の影響で聴いてました。ボカロでは特定の方はいないかなぁ。私は“このアーティストが特別好き!”っていうのはあんまりなくて。どちらかと言うと“この曲が好き”っていう音楽の聴き方をずっとしてきました。

針原翼と出会い、空白ごっこを結成するまで  

──ハリーさんこと針原翼さんとの出会いは、ハリーさんの楽曲をカバーしたことがきっかけだそうですが、どんな部分に惹かれましたか?

セツコ 実は当時、「声」と「HEAVEN」っていう楽曲しか知らなくて(笑)。「声」はバラードなんですけど、なんかバラードって間違えると少しもったりとしちゃうというか、引き伸ばしたような感じにもなる難しいものだと思うんです。そこにおけるもったり感の切り取り方……具体的には“1コーラスはここまでで、どうラスサビに持ってくか?”みたいな、長さの切り方がすごく上手で。それまであまりバラードは聴かなかったんですけど、「声」は聴きやすいなと思いました。あと、感情の高ぶらせ方というか、一気に切ないところに持っていくより、ちゃんとステップを踏んで徐々に気持ちを高ぶらせるのがすごく上手な曲だなと。それでワンコーラスだけカバーをしてTwitterにあげたら、ハリーさんご本人が見つけてくださって。

──えっ、ワンコーラスだけですか?

セツコ はい。「声」のインストに自分の声とコーラス1トラックを乗っけて、音量調節しただけ……本当にミックスも何もしてないような素音源のまんま出しちゃって。MVもつけてない真っ黒な画面でした(笑)。雑にアップしちゃったんで、そこは後悔してます。

──それをご本人が発見したと。ハリーさん、ずばり彼女の魅力はどこだったんですか?

針原翼 まず「声」を見つけて聴いて“おおっ!”と思い、他の人の曲も聴いたら“おおっ!”が“おおおお!!”となって。間違いなくそのきれいな声で常人じゃないっていう片鱗を見せていました。本人はミックスもしてないと言ってましたけど、その雑さも良かった。自分はスタジオワークをしてるんで、簡単にあげたんだろうなというのは、すぐわかりました。でも、それでこのクオリティ?みたいな。じゃあちゃんと録ってミックスしたらヤバいんじゃないのっていうゾワゾワ感というか……すごいものを感じましたね。それですぐkoyoriくんたちに聴かせました。“この声ヤバい!! すごい子がいた! でもどこの誰か全然わかんない。どうしよう、声かける?”って会議が始まりました。

──実際にハリーさんご本人から連絡が来た時、どう思いました?

セツコ ニセモノかと思いました(笑)。

──たしかに(笑)。そこから空白ごっことしてスタートするまでに、どんなやり取りがあったんですか?

セツコ まず私がやりたいことをヒアリングしてくださいました。ただ、自分自身ふんわりしていて、いろいろやってみたいという状態だったんですよね。そうしたら、“じゃあ全部やろう!”と言ってくださって、コンポーザーにkoyoriさんを招いてくださったり、曲の作り方を教えてもらったり。好きなことをやって、それがちゃんと軸になればいいという考えがベースにあって、こういう曲やろうみたいなのは、あんまりなかったですね。

針原翼 そうそう。空白ごっことしてスタートする前から、彼女に打ち込みとかを教えましたね。でも、過去にピアノをやっていたのもあって、覚えが早かったです。

──“空白ごっこのヴォーカリスト像”のイメージは、最初からあったんですか?

セツコ そもそも、まだ自分の歌い方があまり定まってなかったんですよね。なので、まず“歌ってみた”のサポートをしてもらうところから始まりました。既存曲のインストを作ってくれた時もあったし、レコーディングの環境を整えてくれたり……。そうしているうちに自分の中でこういう風に歌いたいとか、この曲はたぶんこのアーティスト風が似合うから、ちょっと寄せて歌ってみようとかが芽生えてきて。自然に確立していった感じです。

──1st EP収録の「リルビィ」や「ピカロ」といった16ビート・ナンバーではリズム感の良さや大人びた雰囲気も感じたのですが、R&Bのルーツもあるんですか?

セツコ 特に詳しいわけでもないですが、若干は聴きますね。「Just the Two of Us」とかの有名どころとか。あと、椎名林檎さんが好きなアーティストの一人で、R&Bからポップまで幅広くやられているので、曲を聴く中でそういうところも意識に入ってるかもしれないです。

──「リルビィ」のグルーヴを出す歌いまわしは、他のパワー・チューンとは違うところにポイントを置かれていると思いますが、どういう点に注意して歌ってますか?

セツコ R&Bの方って声のエッジが効いてる人が多い印象があるので、語尾のエッジ感だったり、若干ためた感じは意識しました。「リルビィ」では語尾がすごく大事だと思ったので、スンッて終わるよりは、ちょっと余韻を残す感じで。ハリーさんのディレクションのもと、“喉の色気”をちゃんと出せるように意識して歌いました。

──ハリーさんの歌唱のディレクションは細かいんですか?

セツコ けっこう細かい……(笑)。他の方のディレクションはあまり経験してないので、あんまりわかんないんですけど。

針原翼 もう、ピカイチに細かいです(笑)。 “自分より細かい人はいない”って思うぐらい。

セツコ ひと言ひと言に指示がある感じです。1フレーズの中で、“ここの《が》と、ここの《こ》はこうして!”みたいなディレクションが、ちゃんとAメロ、Bメロ、サビに全部あって。一単語じゃなくて、一文字一文字で選ぶ感じですね。“《が》はこれがいい。《す》はここがいい”みたいな。無声音や有声音の違いに関しても細かく指示をくれます。ただ、こういった的確な感じもあれば、ここの部分はなんかもうちょっと妖艶に、みたいなふんわりとしたディレクションもあったりするんですよ。

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