ダンサーやラガーマンも登場する“お祭りモード全開”のパフォーマンス
取材・文:兵庫慎司 写真:渡邉一生・松本いづみ・浜村春奈
2026年5月30日(土)、大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場にて、ウルフルズの毎年恒例の野外ワンマンライブ『ヤッサ!』が開催された。2000年に始まり、バンドの活動休止により2009年を最後にストップするが、再始動と共に2014年から再開、今年で21回目。昨年と今年は、チケットがソールドアウトしている。後半の最初のMCで、トータス松本は、《コロナ禍を経て動員が苦戦した時期もあったが、こうしてソールドアウトの状態が戻ってきて嬉しい》と、オーディエンスに感謝の気持ちを伝えた。なお、昨年は大雨の中での開催となったが、今年は暑いくらいの快晴に恵まれた。

トータス松本、ジョンB、サンコンJr.のメンバー3人のほかに、サポートでギターの桜井秀俊(真心ブラザーズ)、キーボードの浦 清英もしくは小杉泰斗が加わった5人が、通常のウルフルズのライブ時のデフォルトである。が、『ヤッサ!』では、キーボードがそのふたりの両方、さらにギターに菅原龍平、ヤッサホーンズ(サックス/武嶋 聡、トランペット/村上 基、トロンボーン/滝本尚史)が加わった、特別編成になる。
その10人で、前半11曲、休憩時間(15分のインターバル映像)を挟んで、後半9曲、アンコール2曲の全22曲を演奏。一部でも、二部でも、アンコールでも、ここぞというポイントで、総勢40名のヤッサダンサーズが登場し、ステージを華やかに盛り上げる。なお、ヤッサダンサーズは、毎年在阪のダンス専門学校の学生たちを中心に編成されるため、ウルフルズは1年ごとに加齢していくが彼女ら彼らは、若いままである。




第二部の最初では、メンバー全員とヤッサダンサーズが花道に出て、アコースティック編成で、1stアルバム『爆発オンパレード』収録の「いつも元気(Good Times)」と、2024年に作られ、以降、必ずここで演奏される「ヤッサ!コレカラ音頭」を、みんなで演奏し、歌い、踊った。続く「明日があるさ」、「しあわせですか」の2曲は、屈強なラガーマンたちに肩車されたトータスが、延々と客席エリア内を練り歩きながら、二丁拳銃マイクで熱唱する。その次の「おっさんのダンスが変だっていいじゃないか!」では、40名のヤッサダンサーズに、ラガーマン10名も加わった。本編ラストの「ええねん」の最後には、ステージ上部から花火が吹き上がる。






アンコールは、メンバー&サポートメンバー全員の10名で、アカペラで、ウルフルズの最新の曲である「青春」を聴かせた(この「全員でアカペラコーナー」は、昨年から始まった。昨年は「ワンダフル・ワールド」だった)。そして、《最後はね、ウルフルズらしい曲で締めくくりたいと思います。もう1曲聴いてくれるか!》という雄叫びからの「ウルフルズA・A・Pのテーマ」をトータスが歌い終えると、ダンサーズも総登場して、みんなで花道へ出て、ステージ上空に何発も打ち上がる花火を、オーディエンスと一緒に鑑賞した。


というわけで。なぜ前半をすっ飛ばして、後半のことから書いたのかというと、この日の最大のトピックは、前半だったからである。
オープニングからアルバム『バンザイ』を完全再現!
この日の、2026年の『ヤッサ!』の第一部は、アルバム『バンザイ』完全再現ライブとして行なわれたのだ。


100万枚以上のCDセールスを記録し、ウルフルズを日本のロックのトップに押し上げ、「ガッツだぜ!!」と「バンザイ〜好きでよかった〜」の2曲の大ヒット曲を生んだ、ウルフルズの3rdアルバム。今年2026年は、そのリリースから30周年にあたる、ということで、同作が初めてアナログ盤化されたり、メンバーや関係者への取材で1冊まるごと使って同作を掘り下げる書籍『ウルフルズ『バンザイ』ザ・インサイド・ストーリー』が刊行されたりしたが、ウルフルズ側からのアクションは、これまで特になかったし、この『ヤッサ!』の内容に関してのアナスンスもされなかった。つまり、彼らは、事前告知一切なしで、この日、『バンザイ』の再現ライブをやった、ということだ。
ウルフルズはこれまで、特定のアルバムの再現ライブを行なったことはない。さらに言うと、『バンザイ』収録曲のうち、「ガッツだぜ!!」と「バンザイ〜好きでよかった〜」はもちろん、「大阪ストラット(パート2)」や「SUN SUN SUN’95」も、今でもライブで聴ける機会は多いが、それ以外の曲はたまにしか披露されない。特に「暴動チャイル」と「おし愛 へし愛 どつき愛」の2曲は、『バンザイ』の二度のリリース・ツアーを最後に一回も演奏されていない。
より正確に言うと、『バンザイ』から20周年だった2016年の『ボンツビデカデカ』ツアーのファイナル=1月23日@神戸ワールド記念ホール、1月27日@日本武道館と、その年の『ヤッサ!』(8月27日)では、アンコールで、「ガッツだぜ!!」と「バンザイ〜好きでよかった〜」の間に、それ以外の8曲をメドレーで一気に歌う、ということをやっている。しかし、全曲をフルコーラスで聴かせるのは、『バンザイ』のツアー以来、今回が30年ぶり、ということだ。
『ヤッサ!』おなじみのSE(1970年の大阪万博のテーマソングである三波春夫「世界の国からこんにちは」)が鳴り響き、メンバー3人が客席エリアを通って入場。1曲目が「ガッツだぜ!!」で始まって、2曲目が「トコトンで行こう!」だった時点で、カンのいい人は“え?”と気がつき、3曲目の「バンザイ〜好きでよかった〜」で、“これは!……ってことは、次は……”と場内がザワザワし、4曲目の「暴動チャイル」で、“うわあ、きたあ!”と、沸騰状態になった。満員のもみじ川芝生広場が。




その4曲を終えたところで、トータス松本、《30周年なので、前半はこのまま曲順どおりに『バンザイ』を再現します》と宣言。そして、ヤッサダンサーズが登場した最初の曲「SUN SUN SUN’95」と、「てんてこまい my mind」、メンバー紹介を経ての「大阪ストラット(パート2)」と、順調にかっ飛ばして行く……まではいいが、問題は次だ。間奏でトータス以外の3人による長尺のセリフがある「ダメなものはダメ」。どうするんだろう、と思ったが、《俺がやるんか》などと言いながら、ウルフルケイスケのパートを見事にトータスが担い、拍手喝采を浴びた。


トータスのハープとヤッサホーンズが大活躍した30年ぶりの「おし愛 へし愛 どつき愛」と、4年ぶりの「泣きたくないのに」で、『バンザイ』再現が完遂。そして。《もう1曲、ボーナストラックを。『バンザイ』が100万枚売れて、ほんまにびっくりした、その次にこの曲を出したというのが、なんともウルフルズっぽいなと、今になっても思います》とトータスが言ってから、《にぎやかに行きましょう!》とヤッサダンサーズを呼び込んで始まった、前半最後の曲は「ツギハギブギウギ」だった。
単行本『ウルフルズ『バンザイ』ザ・インサイド・ストーリー』の取材のとき、当時の東芝EMIのウルフルズの宣伝担当に、『兵庫さん、「ツギハギブギウギ」のとき、“勝負を逃げた”って書いたじゃないですか』と言われた。確かに書いた。憶えている。でも、自分も、今になってみると、なんともウルフルズっぽいな、と思うなあ、と、生で聴きながら、実感した。
それからもうひとつ。前半と後半の間のインターバル時の映像が、今年は『夕陽のドラゴン』のダイジェストだった。『バンザイ』前後の時期に、トータス松本がユースケ・サンタマリアと共にMCを務めた、スペースシャワーTVの人気番組である。30周年だからそうしたのだろうが、来場者に対して、これ以上ないサービスだったと思う。当時この番組を観ていたファンにとっても、観たことがない世代のファンにとっても。

書籍情報
『ウルフルズ『バンザイ』ザ・インサイド・ストーリー』
著:兵庫慎司

定価:2,750円(本体2,500円+税10%)
仕様:A5/320ページ
ISBN:9784845643790
商品ページ:https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3125351005/
アルバム『バンザイ』リリースから30周年!
〜ウルフルズを売れ!〜クビ寸前からミリオンセラーへと辿り着いたバンドとスタッフの大逆転劇!
1992年6月、各レコード会社による大争奪戦の末、勇躍上京して東芝EMIよりデビューを果たしたウルフルズ。しかし、ファースト・アルバムはまったく売れず、所属レーベルは早々に消滅、わずか1年で契約解除寸前の窮地に陥る。だが、彼らの可能性を信じていた宣伝スタッフたち、新たに担当した子安次郎ディレクターと伊藤銀次プロデューサーによる大改革、竹内鉄郎が手腕を発揮した斬新なミュージックビデオの数々、驚きの販売戦略などが功を奏し、徐々にファン層を獲得していく。
その裏でスタッフとの軋轢、メンバー脱退の危機などもありながら、それを乗り越えた末、1996年1月に発売された3枚目のアルバム『バンザイ』は、100万枚を大きく超えるビッグセールスを叩き出した。本書は当時『ロッキング・オン・ジャパン』の編集者として取材を続けていた兵庫慎司が、ウルフルズのメンバーをはじめ、伊藤銀次、子安次郎ら10人以上の関係者の証言を集め、貴重な資料や未公開写真とともに、30年の時を越えて大逆転劇の裏側へと迫るストーリーである。
CONTENTS
第1章:1988年、大阪、カンテグランデ
第2章:各社争奪戦、上京、デビュー。そして、いきなりどん詰まり
第3章:“ブレイクへの体制”が整うまでの、苦難の1年
第4章:“伊藤銀次&子安次郎”体制が始動
第5章:セカンド・アルバム『すっとばす』完成
第6章:マキシ・シングル三連発作戦に至るまで
第7章:3枚のマキシ・シングルと大瀧詠一
第8章:ブレイクへ押し上げたミュージック・ビデオの仕掛け人
第9章:“バンド史上最悪の危機”と「ガッツだぜ!!」と「バンザイ〜好きでよかった〜」
第10章:『バンザイ』、100万枚超えの大ブレイク
第11章:『バンザイ』全曲解説と、“あなたにとって『バンザイ』とは?”
著者プロフィール
兵庫慎司(ひょうご しんじ)

1968年広島生まれ、東京在住、音楽などのフリーライター。1991年春から2015年春まで、株式会社ロッキング・オンにて、雑誌や書籍のライティングや編集などに携わり、2015年春からフリーになる。1992年から、デビュー直後のウルフルズを音楽雑誌『ロッキング・オン・ジャパン』の誌面にてプッシュし続け、アルバム『バンザイ』ブレイク直後にトータス松本初表紙号の取材を行なった。著書(共著)『消えぞこない~メンバーチェンジなし!活動休止なし!ヒット曲なし!のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンライブにたどりつく話~』、『ユニコーン「服部」ザ・インサイド・ストーリー』(共にリットーミュージック)。









