【インタビュー】よよよちゃんが伝える、歌まねへのこだわりと心の持ち方。「やりたい気持ちを大事に、自分から見つかりにいく」

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)
写真:豊田 和志

令和の歌まねヒロインこと、よよよちゃんが巷で話題だ。

よよよちゃんは大学在学中の2021年2月に突如TikTokを開設、1発目に投稿したものまね動画がその日のうちに数万再生以上を突破するというバズを記録。その後のSNSを中心とした躍進的な活躍が各界関係者の目に留まり、多数のテレビ番組への出演を果たすという、ものまね界屈指の期待の新星である。

何より注目すべきは、よよよちゃんの歌まね力の高さだ。LiSA、Adoといった今をときめくアーティストから、時代を代表するレジェンドまで、ものまねレパートリーは日々着々と増え続けている。
今回、Vocal Magazine Webは、よよよちゃんに初インタビューを実施。果たして彼女はどのように日々歌まねを追求しているのか。インタビューを進めるにつれ、歌まねへの深いこだわりと、各アーティストへのリスペクト、そしてブレない1本の芯が見えてきた。【インタビューの最後にプレゼント情報あり】

歌まねは5つの要素のかけ算で生み出す

──RolandさんのGO:LIVECAST企画で「グッバイ宣言」をLiSAさん、ikuraさん(YOASOBI)、Adoさんのものまねで歌っていただきましたが、いかがでしたか?

よよよちゃん 実は「グッバイ宣言」を歌うの自体がめちゃめちゃ久しぶりで、松浦航大さんとコラボした以来かな?というぐらい。そもそも生でやる曲じゃないというか、“こんな曲歌えるなんてすごい”レベルの難しい曲だと思うので、うまくできるか不安でした。でも1年ぶりに歌って、今の自分の実力みたいなものも知れましたし、“もっと頑張らなアカンな!”って身が引き締まりました。

キーは2個下げていただいたんですが、それでも全然高くて、最初は(サビを)オクターブ下で歌おうと考えてたんです。でも、やっぱり曲のテンションを大切にしようと高いほうで挑戦しました。“いや、全部裏声になっちゃうでしょ!! ”って思うくらいでしたけど、気合いで地声多めでやりました。

GO:LIVECASTを使用したよよよちゃんの歌まね動画は↑こちらから

──一番苦戦したパートはどこでしたか?

よよよちゃん やっぱりAdoさんの歌まねをさせていただいたサビパートがあまりにも高いのと、あとテンポが速いのも難しくて。Adoさんはすべての声が魅力的な特徴をお持ちなので、それを出そうとするとそれなりの時間がかかるんですよ。

──事前の発声練習に時間がかかるということですか?

よよよちゃん いや、なんて言うんでしょう、曲がゆっくりであればあるほど準備はしやすいです。裏声の切り替えは一瞬だったら難しい、そういう感覚がいっぱいあって。ここは鼻のほうに抜いて、ここは喉に響かせて、次は上顎、みたいな切り替えを爆速でやったので、その対応が難しかったです。しかも当初はオクターブ下で歌う予定でしたが、歌ってみたら「ちょっとちゃうなぁ」と思ったのでその場で高音バージョンを考え直したことも苦労した点でした。

──Adoさんを歌まねをするとき、特にどんなところをポイントに置いてますか?

よよよちゃん Adoさんの歌い方で特にみなさんも印象にあるのが“がなり”かなと思うんです。でも、それとは別に、言うなれば“しゃがれ声”のような歌い方も持ち合わせていらっしゃって。しゃがれ声とがなり声、そして綺麗な裏声と、さらに地声。素晴らしい声質で、細かく言ったらもっとたくさんの表現をお持ちなんですけど、今あげた4つは特に大事に、どこでどうやって使うかっていうのは一番考えますね。

──本人の曲ではない場合は、歌い方の切り替えをどうやって判断するのですか?

よよよちゃん 実は、そもそも歌まねができるかできないかは“歌ってるところを想像できるかどうか?”みたいなところがあるんですよ。表現が難しいのですが、“実際に頭の中でアーティストさんがその曲をカバーしているところが想像できたら、自分にもできる可能性が高い”という感じです。

自分ができるできないに関係なく、頭に描かれるイメージをそのままやってる感覚なので。実際に歌ってみて気づく部分ももちろんありますけど、基本的にはわかるというか。“ここはこうするやろな”というのが頭の中に出てくるんですよね。

──たくさんのものまねレパートリーをお持ちですが、すべて“歌唱像”が浮かんでいる?

よよよちゃん そうです。逆に“その人が歌ったらこうやってるだろうな”って浮かぶ方が、ものまねレパートリーになるというか。だから極論「この人できますか?」って急に振られたときにある程度特徴を掴めていたらレパートリーに入る可能性が高い。“想像できるかどうか”というのが自分の中での鍵ですね。

──生配信では歌まねリクエストに即興で応えていってますね。ときどき何度か歌い直すのは、頭に浮かぶ歌唱像とすり合わせをしているからですか?

よよよちゃん そうです。頭でイメージして、ここだろうなって思う場所に声を当ててみて。でもそのアーティストさん自身もひとつの場所から声を出してるわけじゃない。例えばあいみょんさんだったら、喉強めの声がインパクトに残るけど、実際は鼻のほうから抜けるように歌っていることも多いな、みたいな。そういう感覚を思い起こさせるために、即興のときも“頭でイメージしてた感じこうでしたけど、思ったほどあいみょんさんじゃないや”って思ったらそこから調整していってます。

──“鼻から抜ける感じ”とか“ここが響いてる”とか、アーティストの声の出し方や歌い方みたいなところを重点的に見ているんですか?

よよよちゃん もう正直、そっちのほうが声質よりも大事だと思っていて。声質を変えるってなったら、喉の開きというか、喉仏の高さ的なところを変化させると思うんです。 高い声を出すときは、もともと自分の声は低めなので(喉を)閉めてるんですけど、それをやり続けると喉がカスカスになることもあるんですよ。でも、歌い方を本当に似てる出し方に設定できたら、喉って壊れないんですね。

──どういうことですか?

よよよちゃん JUDY AND MARYの YUKI さんを鬼のように練習していた時期があって、「そばかす」をずっと歌ってたんです。ラスサビの《ラララ〜♪》の超ハイトーンも地声で出してたんですけど、それ以降の2週間は声がカスカスになってしまって(笑)。しかもそのとき、客観的に聴いていた方から「声は可愛いけどなんか無理してそう」とか「YUKIっぽいけどYUKIじゃない」と言われてしまって。“クソー!” と思いながらも練習してたら、“今のや!”と辿り着いた瞬間があったんです。そのときは全然喉も閉まってなくて、なおかつ一番似ていて。声質を変えるのはけっこう限界がありますけど、歌い方を変えるのだったら無限に可能性があるんですよ。喉の高さだけを変えるか、それとも歌い方を変えるか。

歌い方っていうのは、どこから声を出してるかもそうですし、曲のノリ方も大事です。これはまさに私が最近一番大事だと思ってることなんですけどね。そして響かせ方。よく「喉どうなってるんですか?!」って聞かれるんですけど、基本的に胸から上、アーティストさんは全身ですけど、それらは“全部喉!”みたいなイメージで考えてもらうほうがわかりやすくて、どこまででも響かせられると思うんです。“歌い方を変える”というのはそれらのかけ算みたいなものです。

──かけ算の要素は具体的にどんなものがあるんですか?

よよよちゃん ものまねには5要素ぐらいあって。まず、喉で変えられる範囲の「声質」、「空気の響かせ方」、「リズムの取り方」、あと「口の開け方」も大事ですね。そして「マイム」。マイムはこの人ってこういうのやるよねっていうのが目で見てわかる動きの部分です。この5要素ぐらいでレパートリーを分けていってるんじゃないかな。まあ、みなさんがそうかはわからないですけど、私はそうしてる。かけ算だからレパートリーが増えていってるわけであって、逆に“声質だけで誰かに寄せる”っていうのは私一番苦手だと思うんですね。

「特徴は掴んでるけど似てない」ってアンチコメントをいう人もいて、それはたぶん声質のことを言ってるんだろうなと。歌い方の特徴や響かせる場所はこれだろうとドンズバで出せた自信があっても、声質の部分は喉の限界があるから寄せるのが難しいです。

──5要素それぞれを分けて練習しますか? それとも最初から感覚的に混ぜられる?

よよよちゃん 私は完全感覚ですね。一度感覚でやってみて60%ぐらいできたものは、詰めていけば80%になるかなという感じ。逆に最初に10%ぐらいしか似てない場合は、どれだけ練習しても40%ぐらい。少しは似るかもしれませんが、最終的に60%とかにはならないですね。

──詰めていく段階で肝となるのはどんなことですか?

よよよちゃん アーティストさんの特徴のどこを強く拾うかによるんですけど、それは目標をどこに設定するかでも変わってきます。例えばアーティストさん自身も歳を重ねるごとに歌声って変わると思うんですね。「最近の●●さんに聴こえるから、もっと当時の歌い方に寄せられますか」というリクエストもあったりするので、どの時代の歌声に寄せるか、パブリックイメージに合わせたほうがいいのか、それとも音源寄せにするのかとか。ライブに合わせる場合もありますし。

緑黄色社会さんを(番組で)歌まねさせていただいた際も、ライブとストリーミングで聴こえ方が違う印象があったので「どっちにしますか?」というのがありました。どっちが正解とかじゃないけど、リクエストをいただく場合はそれに寄せていきます。そうじゃない場合は個人的に好きなライブの感じを重視してるかもしれないです。

──歌い方をブラッシュアップしていくときは録音したりしていますか?

よよよちゃん 全部録音していた時代もありましたが、ボイスメモがめちゃくちゃになって結局聴かなくて(笑)。ただ、録音を聴いて“修正点を見つける”っていうのは超大事ですね。例えばレコーディングのミックス作業のときに、「もうちょっとロー感足せますか」ってリクエストしたい場合もあるじゃないですか。でも、「(自分が歌った)素材自体にそもそもローが入ってないから足せないわ」と言われて「なるほどな。やっぱりウチは鼻から抜き過ぎてたんや!」と自分のクセや課題に気づくきっかけにもなるので。

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