文:本山nackeyナオト 撮影:ヨシダホヅミ 取材協力:西川口Hearts
憧れのホイッスルヴォイスを身に付けろ!
「憧れのヴォーカリストのように、カッコいいホイッスルヴォイスを発声したい!」、「ホイッスルヴォイスを習得して、ヴォーカリストとしてスキルアップしたい!」というヴォーカリストは多いだろう。
ホイッスルヴォイスは特殊な発声方法なので、マスターするにはまず、ヴォイストレーニングの基礎や声帯のメカニズムや知識を身に付けている必要がある。最終回は、ホイッスルヴォイスの特徴や種類、基本的な発声方法、練習時の注意点についてレクチャーしよう。
ホイッスルヴォイスとは
ホイッスルヴォイスは、ウルトラハイトーンや超高音発声とも呼ばれ、人間が発声できる最も高い声と言えるだろう。歌声よりもフェイクのように使うヴォーカリストが多いイメージだ。高音がホイッスルの音に聴こえることから、ホイッスルヴォイスと呼ばれる。
通常、発声とは声帯が震え、擦り合わさって音声になる。高音になるほど声帯の振動回数は増える。「音」は空気の振動であり、1秒あたりの振動の回数が周波数。例えば「3A」の音の周波数が442Hzだ。つまり1秒間に442回声帯を振動していることになる。Hi-Aは振動数が2倍なので、884Hzということになるため、884回震わすことになる。
しかし、ホイッスルヴォイスは上記のような通常の発声ではなく、声帯を閉鎖して発声する。基本的なボイストレーニングのスキルを身に付け、さらに声帯のメカニズムを理解している上級者向けのテクニックだ。
ホイッスルヴォイスのタイプ
ホイッスルヴォイスには、大きく分けて、構音(そくおん)タイプと、気流タイプの2種類の発声方法がある。それぞれの特徴やそれらを使用する代表的なヴォーカリストを見ていこう。
◎構音タイプのホイッスルヴォイス
構音型ホイッスルヴォイスは、クリーンな音のイメージのホイッスルヴォイス。このテクニックを使う歌手としてはMISIAが有名だ。デビュー曲にも関わらず、楽曲の出だしから聴かせる見本のようなホイッスルヴォイスは圧巻だ。
また、女王蜂のヴォーカリスト、アヴちゃんもこのタイプだろう。
海外ではアリアナ・グランデやマライア・キャリーなどが使っている。超一流ヴォーカリストのスキルは必聴だ。
アリアナ・グランデ「Imagine」
https://youtu.be/7_rftpd0u0U?si=-oOSRODZZ40rlfnE
マライア・キャリー「Emotions」
https://youtu.be/0IA3ZvCkRkQ?si=MSAnHUbE92i-ohtl
また、筆者がプロデュースしたベビーバイツ(BabyBaits)もホイッスルヴォイスでメロディラインを歌唱している。ぜひ一度聴いてみてほしい。
このヴォーカルスキルを習得するのはかなり難しいけど、習得すればホイッスルヴォイスでメロディラインを歌うことができたり、安定した迫力のあるロングトーンが発声できるようになったりして、より楽曲に凄みが出るようになるだろう。
◎気流タイプのホイッスルヴォイス
一方、気流タイプのホイッスルヴォイスは、スクリームと呼ばれる高音のデスヴォイスタイプのホイッスルヴォイスだ。声帯を完全に閉じた状態で発声をするため、構音タイプのホイッスルヴォイスと比べると、より笛に近いイメージになる。
気流型ホイッスルヴォイスを使用するメジャーなヴォーカリストは、DIR EN GRAYの京だ。下記動画のエンディングあたり、3:25〜の圧巻のホイッスルを聴いてもらいたい。
気流タイプのホイッスルヴォイスは、おもにヘヴィメタルで使われることが多く、メロディアスな楽曲には合わないだろう。
筆者は多くのヴォーカリストのトレーナーをしてきたけれど、気流タイプのホイッスルヴォイスのほうが、発声のコツを比較的つかみやすい印象がある。
ただし、コツはつかみやすいが、ステージやレコーディングなどでしっかりとした発声を身に付けるまでが、また難しいだろう。
ホイッスルヴォイスのベーシックな出し方
ホイッスルヴォイスはどんなものか、そのタイプについて理解できたところで、ホイッスルヴォイスの基本的な発声方法について解説していこう。
レッスン1:声帯を閉める感じをつかむ
ホイッスルヴォイスは通常のミックスヴォイスやファルセットや裏声とは発声方法が違い、声帯閉鎖して発声する。喉ぼとけを動かす、輪状甲状筋という声帯の筋肉を使って発声するんだ。
ホイッスルヴォイスを習得するために、まずは声帯閉鎖の感覚を覚えよう。声帯閉鎖とは声帯を閉めることだ。
「声帯が閉まっている状態がどんな感覚なのかわからない」という人もいるだろう。そんなみんな、ちょっと考えてほしい。人間が発声できない瞬間ってどんな時だろう。そう、嚥下(飲み込む)する瞬間だ。嚥下するときは声帯に入らないよう究極に声帯が閉まっているのだ。
声帯閉鎖する感覚がわかったところで、今度は反対に開ける感覚をつかもう。一番簡単な方法は、「はーっ」と息を吐くことだ。
身体の力を抜いて、息を吐いてごらん。喉の奥が開いている感覚がわかったかな? 舌は軽い「U」の字にしよう。
息が吐けたら、次は声帯が閉じていく感覚を自分でコントロールするために、丹田を意識して息を止めてみよう。その状態(吐いている途中で息を止めたときの感覚)が、声帯が閉まっている状態だ。
息を途中で止めるのが難しい場合は、息の途中で声を出してもOKだ。声を出した状態で感覚がつかめたら、次第に声を出さなくても声帯閉鎖できるようにしていこう。
レッスン2:声帯をゆるやかに閉める感じをつかむ
息を吐いている途中で、吐く息を止めることができたら、次は声帯をゆるやかに閉める感覚をつかめるようにしよう。
吐いている息を、急に止めるのではなく、ゆっくりと吐く息の量を減らしていく感覚でやってほしい。当然、身体全体、声帯や喉まわりに力みが入っていると、声帯をゆるやかに閉めることが難しくなる。力が入ってしまう場合はリラックスするトレーニングから始めよう。
レッスン3:呼気発声(息を吸いながら声を出す)の練習をしよう
声帯閉鎖の感じがつかめたら、いよいよホイッスルヴォイスの発声を練習していこう。ホイッスルヴォイスをマスターするには、呼気発声という、息を吸いながら声を出す発声スキルを習得するのがかなり有効だ。
みんなもしゃっくりと同時に声が出てしまった……なんてことがあるよね。そのときの感覚をイメージするとやりやすい。息を吸う瞬間に声を出すトレーニングをしてね。
レッスン4:息を吸いながら高いKEYを発声
呼気発声の感覚がつかめたら、息を吸いながら、発声するKEYを徐々に高くしてみよう。もちろん喉に痛みや違和感がある場合は無理をしてはダメだからね。
このとき、声帯の隙間(声門)が閉まっているかを確認しよう。詳しくは後ほど紹介する動画で確認してほしい。
呼気発声で高音が出せるようになれば、ホイッスルヴォイス発声の基礎ができたと言っていいだろう。
レッスン5:呼気発声の声門で高いKEYを発声
レッスン4の「ホイッスルヴォイスの基礎」ができるようになったら、声帯の隙間(声門)が閉まっている状態をKEEPしながら、息を吐き、高い音を発声しよう。息を吐いている状態でも、声門の閉まり方や、声帯の振動の仕方が、レッスン4と同じであるかを意識してね。
このとき、声門が開いてしまう場合は、「ホイッスルヴォイスの基礎」が身に付くまで、繰り返し練習あるのみだ。
レッスン6:イルカヴォイスの発声で高音域の高さをUPしよう
前述したとおり、ホイッスルヴォイスは、通常のミックスヴォイスやファルセットや裏声とは発声方法が違い、声帯閉鎖して発声する。
甲状軟骨(喉ぼとけ)を輪状甲状筋という声帯の筋肉を使って発声する。甲状軟骨を触って高めの声を発声しよう。喉ぼとけが上に移動したのがわかるかな。
高い声を出すと声帯は長くなる(伸びる)から、甲状軟骨(喉ぼとけ)が上に押し上げるのだ。
声帯周りの骨はいくつもあるが、ハイトーン時に声帯を引っ張る筋肉が輪状甲状筋だ。
理解できたら、いよいよ実践だ。自分の発声できる一番高いKEYのひとつ上の音階のKEYを発声しよう。
このときに気を付けてほしいのが、なるべく「小さな声」から行なうことだ。「キュッ」というイルカの鳴き声をイメージしよう。そのときのポイントはなるべく小さな声量と、喉ぼとけを上に上げる、輪状甲状筋の筋トレのイメージだ。そうすると自然に丹田に力が入ってくる。
この発声練習を、最初に言ったように繰り返し焦らずやってごらん。できるようになったら母音を変えて練習しよう。
そしてレッスン1~6の工程を繰り返し練習しよう。練習を続けるうちに、気持ちいいホイッスルヴォイスが出せるようになるはずだ。
ホイッスルヴォイスのトレーニングをする際の注意
ホイッスルヴォイスのスキルを早く身に付けたいからといって、無理して発声をしたり、毎日長時間練習をし続けたりすると、喉を痛める危険もある。ホイッスルヴォイスのトレーニングをする際の注意点を伝えておきたい。
トレーニングは体調の良いときに行なう
ホイッスルヴォイスのトレーニングは、喉の調子だけではなく体調が万全のときに行なうようにしてほしい。超難関な高等テクニックであるし、間違った方法でやると喉を壊す危険もある。くれぐれも体調が悪く、身体がリラックスできない状態でのトレーニングはやめてほしい。
喉の痛みを感じたら無理をしない
ホイッスルヴォイスは本当に特殊な発声方法なので、通常の発声より声帯に負担がかかる。そのため慣れないうちは練習中に喉を痛めてしまうこともある。
ヴォイストレーニングの基礎がしっかりできていれば、喉を痛める危険も少なくなるが、それでも慣れない発声をし続けるのは危険であると言えるだろう。トレーニング中に喉の痛みや違和感があった場合は、ただちに練習を中止し、喉が回復するまで練習はやめよう。
長時間トレーニングをしない
ホイッスルヴォイスで必要になる声帯の使い方は、喉に負担がかかるため、長時間の練習は禁物だ。早くホイッスルヴォイスをマスターしたくて、たくさんトレーニングをしたい気持ちもわかるけど、喉の調子次第でトレーニングを休むことも大切だ。
ホイッスルヴォイスをマスターしたいなら、プロの指導を受けるのも考えて
ホイッスルヴォイスはかなり特殊なヴォーカルスキルなので、マスターするには、ヴォイストレーニングの基礎をしっかりと習得しておく必要がある。
発声の基礎ができていなければ、習得できないと言っても過言ではない。ぜひ無料体験レッスンをご受講いただきたい。
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無料体験レッスン専用ダイヤル 0120-9482-88 (受付時間10:00~23:00)
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プロフィール
本山nackeyナオト
埼玉県出身。
これまで500ステージ以上のライブ、100曲以上のレコーディング、ロックから演歌まで幅広いレコーディングやステージングをディレクション。誰もが知っているビッグバンドやメガヒットアーティストなども含め、200以上のバンドをメジャーへとサポートした。
1989年からSTUDIO monkeydance(スタジオモンキーダンス)を主宰し、自身のスクールでは常に100人以上在籍中。
ヴォイストレーナーのほか、ヴォーカル講師、音楽ディレクター、音楽プロデューサー、セミナー講師、ラジオパーソナリティとして多方面に活躍中。テレビ埼玉(『ミュージックシティスペシャル』)定期的に出演。フジテレビ系(『スーパーミュージックジャム』) ほかにも日テレ、TBSテレビ、テレビ東京など出演。
ヴォイストレーニングの指導には定評があり、これまで30年のボイストレーニング指導で延べ30,000人以上にかかわり、多くのプロ歌手やプロ音楽家、プロヴォイストレーナーを誕生させている。
SMDボーカル教室
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