ヴィブラート&憧れのホイッスルヴォイス大作戦!【集中連載】『ロック・ヴォーカリスト“THE BIBLE”』Vol.6(前編)

文:本山nackeyナオト 撮影:ヨシダホヅミ 取材協力:西川口Hearts

おはようございます! SMDボーカル教室代表、ヴォイストレーナーの本山nackeyナオトです。生徒さんからは【ナッキー先生】と呼ばれています。

ロック・ヴォーカルには欠かせないハイトーンの発声と、バンドで歌うことにフォーカスして連載しているこの講座も、今回で最終回。

前半の歌唱レッスンは必須ヴォーカルテクニックのヴィブラートと、憧れのホイッスルヴォイスの発声レクチャー。
後半のバンド活動編は、いよいよライブハウスへの取材を敢行。初めてライブハウスのステージに立つ前に、ヴォーカリストが知っておくべき情報満載でお届けするぞ!

ヴィブラート攻略法

 まずは必須ヴォーカルテクニックのヴィブラートから。

 ヴィブラートはバンド・ヴォーカリストのみならず、歌をうまく歌うには必須のヴォーカルテクニックだ。数え切れないほどのバンドヴォーカリスト、歌手が使いこなしているし、ヴィブラートをイイ感じに効かせた歌声は、聴いている人を魅了する。
 カラオケの採点でも加点されるし、バンドのヴォーカリストのみならず、「上手に」歌うにはヴィブラートを練習して、使いこなせるようになりたい人は多いことだろう。
 また、“これでいいのかな?”と悩んでいる人も多いかもしれないね。

 カッコいいヴィブラートを効かせて歌いたいみんなへ、ヴィブラートのかけ方や練習方法、うまくいかない原因と解決方法をレクチャーしよう。

ヴィブラートとは

 ヴィブラートがわからない人って少ないとは思うけど、一応説明しておこう。
 基本的にはメロディの語尾にかけていくもので、声を途切れさせず、小刻みに音声を上下に揺らす歌のテクニックがヴィブラート。これをうまくコントロールできるようになると、メロディに表情を付けやすくなり声が心地よく響く。とってもわかりやすく言うと「歌がうまく聴こえる」のだ。

 最初に書いたとおり、ヴィブラートはカラオケ採点でも重要なポイントで、高得点を取りたいのなら絶対に身に付けたいスキルだ。ピッチ(音程)は安定しているけど、なかなか90点の壁が越せない人は、ズバリこのヴィブラートが使えていないことが原因という場合も多い。

 ヴィブラートをうまく使いこなすプロ・ヴォーカリストはたくさんいる。もちろん、ヴィブラートが少ない歌い方を取り入れるプロも多いけど、ほぼ全員といっても過言ではない。かける量や回数に違いはあるけれど、しっかりとコントールできているのだ。

 そう、ヴィブラートは「うまく使いこなす」=「コントロール」がとても大切なんだ。何となく適当に震わせていない。プロはしっかりと、揺れ幅や速さや回数を「コントロール」している。実際、筆者のスクールの生徒さんはプロ志望の人も多いけど「普通よりちょっとうまい人」ほど、実はこの「コントロール」ができていない。感覚で「なんとなく」かけているという人も多い。

 カラオケの採点ではヴィブラートが多かったり、深かったりするだけで加点するのだけど、それだけでは人を感動させる歌は歌えない。みんなにはプロレベルのヴィブラートを覚えてほしい。

ヴィブラートって、どうやってかけるの?

 ヴィブラートのかけ方は、大きく分けると4パターンある。ヴィブラートを会得するには、「かけようとしてかける」、「声を揺らそうとして揺らす」といったコントロールが最も大切だ。声を揺らす感覚を掴むために、以下の練習をしていこう。

①横隔膜を揺らしてかけるヴィブラート

【特徴】
 まずは、横隔膜を上下に揺らすことで声を震わせるヴィブラート。これは腹式呼吸が甘いと難しい。横隔膜は肺の下(みぞおちのあたり)にある不随意筋で、腹式呼吸で横隔膜を上下させて呼吸をする。 横隔膜は肺に空気を送ったり、膨らませたり萎ませたりポンプのような役目をする、ヴォーカリストにとって、とっても大切な筋組織だ。だが、不随意筋といって自分の意識では横隔膜そのものを動かすことはできない。なので腹式呼吸でコントロールするのだ。
 ちなみに「しゃっくり」って自分では止められないよね。そうなんだ、これは実は横隔膜が痙攣している状態。この連載を読んでくれているみんなにはとっておきの情報を教えよう。腹式呼吸をやるとしゃっくりは止まるのだ。

 息を吸うと横隔膜は下がる。息を吐くと横隔膜は上がる。吐くときに息の量を調節しながら揺れ幅や速さを調整する方法だ。この横隔膜を揺らしてかける方法は、声量を落とさずに安定したヴィブラートをかけられる。

【トレーニング方法】
 横隔膜を上下させる感覚をつかむのは少々難しいかもしれない。そんな人にわかりやすく、とっておきの方法を教えよう。
 ヴィブラートをかけずに、男性の場合3A~4D音域、女性の場合4G~5C音域くらいの発声しやすい高さで通常のロングトーンを発声する。「うぉ〜〜〜」でやってみようか。そのときに横隔膜のあたり(肋骨の裏)を手を使って一定間隔で上下に揺らしてみよう。声が揺れているのがわかるかな。その感覚が横隔膜を揺らすヴィブラートだ。
 喉でコントロールせず、声が揺れている感覚をつかめたら、手を使わずにできるようになるまで反復練習してみよう。

 横隔膜を使ったヴィブラートは揺れ幅が深く(長く)なりやすい。ゆっくり揺らしたほうが雰囲気は出る。アクセントの幅の感覚を長めにすると、カラオケ採点では高得点が得られやすい。楽曲で使い分けしよう。

②ピッチをスライドしてかけるヴィブラート

【特徴】
 初心者にはお薦めのヴィブラート。音程を変えて揺らぎを作っていくのだ。音程は半音、例えば「ミ」と「ファ」を変えて練習していこう。最初は揺らぎの間隔をゆっくりからスタートし、段々と速くしてみてほしい。

【トレーニング方法】
 男性の場合3A~4D音域、女性の場合4G~5C音域くらいの発声しやすい高さで発声したあと、半音を上下させて発声を繰り返していこう。

 「MAーーーーーー」とロングトーンで発声しながら「A↑A↓A↑A↓A↑A↓」と音程を上下させてみよう。最初はゆっくりと、徐々に間隔を短くして揺らしていく。そのときに甲状軟骨(喉ぼとけ)を触ってみてほしい。そうすると喉が上下しているのがわかるはずだ。
 これは音感トレーニングにもなり一石二鳥なので、まずはこのヴィブラートから練習する。そして慣れてきたら、③の「喉を揺らしてかけるヴィブラート」の練習に入ろう。

③喉を揺らしてかけるヴィブラート

【特徴】
 喉を揺らして声を震わせるヴィブラートは、喉そのものを上下させてかけていく。揺れ幅・長さ・深さ・回数・アクセントが細かくコントロールできる。まさに「かけようとしてかける」には最適だ。ただ初心者だと、喉に力を入れてしまうことがある。
 そうすると、当然喉が疲れるし負担がかかる。僕たちヴォーカリストにとって喉は取り替えることができない大切な楽器だ。喉を揺らすヴィブラートはコントロールがしやすいので、一番のお薦めではあるのだけど「喉を使う」という意識だと、とても危険なんだ。

【トレーニング方法】
・「あ〜あ〜あ〜あ〜」と4回発声する
・できたら間隔を短くする。目安は0.18秒と言われている
・かけ始めの音が一番大事だ。 

④顎や口でかけるヴィブラート

【特徴】
 小刻みに顎、または口を上下させて声に揺らぎを作るヴィブラート。だが、このヴィブラートは個人的にはあまりお薦めしない。声の響きがあまり良くならないからだ。顎と口を使うので揺れ幅もゆっくりになる。速く動かそうとすると顎に力が入ってしまう。

 ただ、比較的簡単(筆者自身はむしろ意外に難しいと感じる)で、どうしてもヴィブラートをかけることができない場合などは、このヴィブラートで「揺らす」ときに「揺らす感覚」をつかむ練習にはなる。顎や口を揺らすヴィブラートは演歌の歌手がよく使っている。日本的な歌には向いている反面、ロングトーンが活きない楽曲や言葉の数が多い楽曲にはあまり向いていないだろう。

【トレーニング方法】

 特に難しいことはなくて、顎や口を動かして「あ〜あ〜あ〜あ〜」と言うだけ。「③喉を揺らしてかけるヴィブラート」ができない人は、このトレーニングから始めてみよう。コツは顎や口の揺れよりも、音声の揺れに意識を集中して発声することだ。

 この「顎や口でかけるヴィブラート」は少し古臭く(演歌っぽい)わざとらしい感じが出てしまうので、ヴィブラートをマスターするための最初のトレーニング方法と考えてほしい。

 実際のヴィブラートはこういった方法を上手に組み合わせて使っているんだ。①〜④のトレーニング方法をまとめて動画にしたので、見ておいてほしい。

ヴィブラート練習法

ヴィブラートができない原因と解決方法

 ヴィブラートのトレーニングをしていても、なかなか上達しないと悩む人も多いだろう。ヴィブラートがかかる感覚をつかめない原因には、次のようなものがあるので、もう一度トレーニング方法が正しいかを見直してみよう。

 まずは腹式呼吸ができていないことや、喉に力が入り過ぎていることが原因であるケースが多い。喉や首など、身体に力が入っているとヴィブラートはコントロールできない。まずはリラックスした状態で発声し、そのままヴィブラートをかけるよう意識してほしい。

こちらの動画もチェック!

プロのボイストレーナーが伝授!「ビブラート」【ボイトレナッキー】

腹式呼吸ができていない場合

 横隔膜を揺らすヴィブラートがうまくできない場合は、まずは腹式呼吸から見直そう。
 腹式呼吸ができているかわからないときは、寝転んだ状態で呼吸をしてみてほしい。寝ているときは自然と腹式呼吸になるはず。呼吸をするときにお腹が上下していればOKだ。腹式呼吸については、以前の記事で詳しく解説しているので参考にしてほしい。

揺れているけど、コントロールができない場合

 ヴィブラートは、ロングトーンを安定させるのが何より大切。ロングトーンが不安定な状態だとヴィブラートの細かいコントロールはできない。
 また、安定していないのでキレイには聴こえない。ヴィブラートをコントロールしてかけるには、まず声を真っ直ぐ伸ばすロングトーンのトレーニングをしよう。ロングトーンの詳細とトレーニングについては、以下の記事を参考にしてほしい。

ヴィブラートを本格的にマスターしたいなら、ヴォイストレーナーにお任せ!

 自己流でヴィブラートを練習してもうまくできない方は、自分に合ったヴォイストレナーに正しい方法をレクチャーしてもらうのがお薦めだ。
 発声のプロに習うことで上達が早くなる。ヴィブラートだけでなく、歌をうまく歌いたい方はヴォイストレーニングを検討してみてほしい。
 無料体験はこちらから。http://www.smdvocal.com/try.html

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