半﨑美子

【インタビュー】半﨑美子、『うた弁4 you』のこだわりと歌に向き合う独自のスタイルを語る。“誰かの悲しみは、ほかの誰かの悲しみを治癒する力を持っている”

2023.09.1

取材・文:後藤寛子

今も家でエアコンはつけていない

──日常的な喉のケアはされていますか?

半﨑 特にしていないですけど、乾燥は避けたいので、今も家でエアコンはつけていないです。

──え、この真夏日が続く季節でも?

半﨑 はい。大丈夫?ってみんなに心配されるんですけど(笑)。移動で新幹線や飛行機に乗ることも多いので、エアコンの影響を受けないように、必ずパーカーと首に巻くタオルは装備していきます。ほかにも、ホットの飲み物を持っていったり、厚い靴下を持っていったり。やっぱり身体が冷えると良くないと思うので、冷やさないように気をつけています。

──喉ケアのオススメアイテムはありますか?

半﨑 いつも「たたかうマヌカハニー」というのど飴を持ち歩いてますね。いろいろ試してみて、これが一番自分には合っていて。たまに、口の奥に入れたままライブをしたりすることもあります。あと、スティック状の蜂蜜も持ち歩いてますね。普通の蜂蜜がスティックに入っているんですけど、そのまま食べたり、ライブ前にお湯に溶かして飲んだり、便利なんですよ。家に大量にストックしてあります。

──ライブ前のルーティーンは決まっていますか?

半﨑 うーん……喉は関係ないですけど、会場を覗きに行くとか(笑)。ショッピングモールの場合、会場がどういう状況なのかは必ず見に行きます。

──半﨑さんと言えばショッピングモールですよね。コンサートホールではないので、やっぱりいろいろ条件が違いますか。

半﨑 最初はずっと自分ひとりで活動していたので。椅子の位置から、ステージにポスターを貼る位置、BGMが流れているかどうかなど確認しながら準備していました。だから、ライブ前はけっこう直前までバタバタしていて、ステージに上がってからやっと集中できるような状況でしたね。影ナレも自分でやっていたので、“(アナウンサーっぽい声で)それでは、半﨑美子さんのご登場です、拍手でお迎えください”と自分で自分を紹介してからステージに上がるという(笑)。だから、気持ちを整えるとか、精神統一をするとか、そんな余裕はなかったかもしれません。

──そこまでやっていたんですね!

半﨑 そうなんです。今はそれが芸風みたいになっていて、今は司会の方もいらっしゃるのにオーダーをいただきアナウンスしたりします(笑)。当時はとにかくいろんな工夫やチャンレジをしていたので、何事にも動じない精神力が養われました。

──ショッピングモールは、土地によって、環境も客層も違いますよね。

半﨑 そうですね。モールが都心にあるのか、郊外にあるのかで、人の流れが違ってくるので。郊外だと一日中滞在される方も多いけれど、都心だと2、3時間だけ滞在する方のほうが多かったり。そうすると、30分のライブに立ち止まっていただく機会が限られるんですよね。ステージが設置してある場所によっても全然変わりますし、近くにどのようなお店があるのかなど、導線含めて毎回下見してどのように聴いてもらえるのがベストな状態かを考えていました。

──セットリストも会場ごとに変えるんですか?

半﨑 毎回考えますね。やっぱり楽曲によって立ち止まり方も違いますし、ささやき系の歌はどうしても雑踏にかき消されるので、ホールコンサートでは届きやすいですが、ショッピングモールだと、ロングトーンで伸ばす曲とか、オケがしっかりしている曲を選んで2階や3階まで届けられるよう意識していました。

──そもそも、ショッピングモールで歌うようになったきっかけはなんだったんですか?

半﨑 自分でチラシと名刺を持ってお願いしに行きました。当時はショッピングモールで歌ってる人はそんなにいなかったので、少しずつ歌わせていただける場所を増やしていきました。

──お客さんが集まるかどうかわからない中で、歌うときのモチベーションになるのはどういうところだったんですか。

半﨑 当然、最初は用意した椅子が全然埋まらなかったですし、ほとんどの方が通りすぎていくパターンが多かったです。でも、そんな中にたったひとりでも、泣きながらCDを買いに来てくれる人がいたんですよ。ほとんどの人が通りすぎる中で何か共鳴してくれたということは、私はその方と絶対にどこか深いところで繋がっているんだって感じられて。そこにすごく特別な光が見えたんです。

もしかしたら、“(ショッピングモールは)音楽を届ける場所じゃない”と思う方もいらっしゃるかもしれないですけど、私は“ここでもっとやりたい”、“また出会いたい”という気持ちになりました。照明があったり音響が整っているようなコンサート会場とは違いますが、あの場所ならではの出会いがあるんです。例えば、80年生きていて人生で初めてCDを買いましたとか、そういう方に出会えるのも、あの日常の空間ならではですね。その出会いも、受け身じゃなくて能動的に立ち止まってくれるわけじゃないですか。お互いの思いが共鳴し合わないと出会えないんだなと思うと、本当にショッピングモールのライブは、自分のかけがえのない活動であり生きがいですね。

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